ケニアで地方分権が始まる。日本が支援する、分権実施に向けた人材育成もスタート

2013年1月24日

民主化を強化するケニアでは、今年2013年3月の総選挙後に中央から地方政府への大規模な行政権の移行が行われます。これに先立ち、JICAでは、地方行政官を対象に地方分権制度について学ぶ研修を開始しました。皮切りとして1月24日には、ナイロビのケニアッタインターナショナルカンファレンスセンター(KICC)にて、研修講師役となる高等行政官を対象としたTOT(講師研修)を開催しました。

当日は、ケニア政府から地方分権化を司る公共サービス省の次官や分権プロセスを監督する行政移行庁(Transitional Authority:TA)の長、日本からは高田大使、江口JICAケニア事務所長が臨席する中、全7州14箇所にて実施される研修の講師60名ほどが各地方から集まり、公共サービス省、法務省、TAより、新憲法と地方行政制度の説明、公共サービスや予算等の課題をどのように地方行政官に伝えていくか、についての講義を受けました。日本での研修に参加した経験のある行政官からは、日本の地方行政の仕組みや歴史について講義が行われ、1)地方分権は長い時間を要する継続的なプロセスであること、2)行政官を含む市民が自らの発展に責任を持つこと、3)行政は、必要な環境を整え、促進していく立場にあること、4)分権後の中央政府との協働関係が大事であること、などについて紹介がなされました。日本の紹介の中では、地方議会の会場の様子や産業振興における行政の取組みや行政の真摯な取組みの背景に日本人の国民性(勤勉さや犯罪が少ない)が存在することも説明されました。

本研修の目的は、地方分権後の行政サービス体制を円滑に構築するために、地方行政官が新体制を理解し、心構えを実践することにあります。本研修の特徴としては、行政官への研修機能を担う公共サービス省と、分権前後の円滑な移行を監督する立場にあるTAが中心となり、これまで必ずしも一体的に機能していなかった地方自治省や法務省等の関係行政機関が一致協力しての実施であること、講師にカウンセラーを加えることで、知識のみならず、新しい体制への不安を和らげるための精神的サポートを提供すること、短い研修期間でより多くの地方行政官の疑問に答えるためにTAと協力して「よくある質問(FAQ)」を作成したこと、が挙げられます。ケニア各地から参加した研修受講者からは「日本の地方行政の経験のように、我々も時間をかけて腰を据えて取り組みたい(西部国境に近いカカメガから参加)」という声も聞かれました。

TOT実施後の2月には全国各地で地方行政官1400人を対象として研修を実施します。ケニアの国情に合った住民のためにより良い行政サービスが提供できる地方行政システムを完成させるためには、ケニアの行政官が分権の意味を正しく理解し、じっくり時間をかけて努力していく必要があります。今回の、時宜に適った包括的な導入研修により、地方行政官の不安感が払拭され、スムーズなスタートが切られることが望まれます。

ケニアの地方分権化について

数多くの民族集団によって形成されるケニアは、独立時の国の分裂や混乱を避けるため、地方が自立する連邦制ではなく、中央政府主導の国家体制が形成されました。しかし、その後の民主化進展の中、より住民に近い行政制度が求められた結果、2010年に制定された新憲法によって、地方分権が2013年より導入されます。これにより、今まで中央政府の影響の大きかった地方行政が新たな47の分権化された地方行政区(County)に再編され、新行政区の長である知事(Governor)は、中央の指名ではなく行政区の住民の直接選挙によって選ばれることになります。

新行政区のCounty行政府には中央から多くの権限が委譲され、必要な予算・職員も従来の地方行政区や中央から配置・配転されます。しかし、2013年から、わずか数年の間に地方分権制度を発足から定着まで行うという短期間のスケジュールに対し、不安を感じる声もあります。

日本も含めアジア諸国では、地方分権制度を定着させるために長い時間をかけて改革が行われてきました。分権過程では、行政の人材育成や予算の確保、上部行政との調整や地方政治との関係など様々な経験を現場で得る必要があります。ケニアの様に短期間に新たな地方行政制度を形成するときには、他国の経験や指導は大きな意味を持ちます。

ケニアでは、2008年から2011年まで毎年、JICAが実施する日本での研修員受入事業(東アフリカ地域・地方行政改革プログラム)に計18名の行政官が参加し、大阪府茨木市等の視察を行う等、日本の地方行政の現状や課題を学び、多くの知見が共有されています。

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研修会場でのひとコマ

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来賓として挨拶される日本大使館の高田大使