ケニアよりアフリカへ:日本の教育協力(南南協力)(アフリカ理数科教育域内連携ネットワーク、ケニア・アンゴラ等の実例)

1.ケニアの経験をアフリカ全土へ

SMASE-WECSA(注)は「ケニアの理数科教育の経験をアフリカ全土へ」というアフリカ各国の要望より、日本の協力を通じ2001年に設置されたアフリカ理数科教育域内連携ネットワークです。当初11カ国であった加盟国は、2011年2月には34カ国1地域に広がり、JICAの支援による技術協力プロジェクトも12カ国で実施されるに至っています。理数科教育の学力向上、理数科系技術人材の輩出、教員の指導力の向上など、アフリカ各国が人材育成開発に向け一丸となって活動しています。

JICAは域内の経験共有のための会議・ワークショップ開催やSMASE-WECSA参加国への研修実施を通じ、SMASE-WECSAの活動を支援してきました。このSMASE-WECSAの活動は、前回のTICAD IVにおいても日本政府の対アフリカ開発の貢献策の一つとして位置づけられ、アフリカの理数科教育の発展に大きな影響を与え続けています。

このアフリカ域内の活動の原点は、1998年より始まったケニアにおけるJICAの理数科教育強化計画プロジェクト(SMASSE)に遡ります。

(注)SMASE-WECSA:Strengthening of Mathematics and Science Education in Western, Eastern, Central and Southern Africa

2.ケニア理数科教育強化計画:『教員が変わり、授業が変わる』

中等理数科教育強化計画プロジェクト(SMASSE)は、ケニアで、1998年に5年間の予定で始まりました。

キーワードは「先生が変われば授業が変わる。授業が変われば生徒が変わる。」。当時のケニアの理数科教育は、教員が教科書に沿って説明し、生徒は板書する授業方法が一般的でした。しかし理数科が苦手な多くの生徒が、理数科に興味を持ち、主体性を持って授業に参加するには、教員がもっと魅力的な授業をできるようになることが必要です。

そのため専門家の支援や日本での研修を通じて、実験の導入や生徒参加型で答えを見つける授業のやり方をケニア人と共に開発しました。身の回りにある生活用品や廃材等を用い、安価で簡易な実験器具を使う工夫をすることで、ケニアの地方の学校においてもこのような授業を行えるようにすることを目指しました。

ケニア教育省および教育関係者と日本人専門家の共同作業によって開発された新たな教授法は、パイロット地域にて確認された成果をケニア全国に広めていくことになりました。

3.ケニア理数科教育強化計画フェーズ2:『新たな授業をケニア全国に』

2004年から開始された中等理数科教育強化計画プロジェクト(SMASSE)フェーズ2は、中等教育レベルの理数科教育教員を対象とした現職教員研修(In-service training for teachers : INSET)の制度を全国に普及することによって、ケニア全国の教員2万人が継続的に研修に参加し、全ての中等レベルの教員が魅力的な教授法を学べるようにすることを目指しました。

そして、JICAが協力を終えた後もケニアの政府自身がINSETを実践できるよう、教育省や教育関係者の人材育成だけでなく、財源の確保を含めた持続的な実施体制を構築することができました。

その後、2009年からは、中等教育だけでなくケニア全国の初等教育の教員を対象とするINSETの仕組みを構築・強化する理数科教育強化計画プロジェクト(SMASE)へと受け継がれました。現在では、8年制の初等教育の6年生から8年生を担当する教員6万人を対象に研修を実施しています。このプロジェクトで実施された活動も、ケニア側自身により継続されることとなっています。

(参考リンク)

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植物のつくりをみる子ども。子どもが自ら見て、考える授業

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日本側とケニア側で理数科教員どのような研修を行えば良いか話し合い、カリキュラム・教材・マニュアルづくりを一緒に

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授業の工夫(分子構造の模型)家庭やスーパーで簡単に手に入る粘土とストローを使って作成

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ケニアにおいてアフリカ諸国からの研修員に対して行う理数科教育の第三国研修

4.広がる日本の理数科教育協力

国際的な学力調査においてアフリカの子供たちの理数科の成績が低いことの原因のひとつが、教員の指導力不足といわれています。しかし、継続的に教員の能力向上の仕組みが整備されている国はほとんどありませんでした。

それ故に、日本の支援によりケニアで構築されたINSETの仕組みや新しい授業法は、そのようなアフリカの他国にとっても、非常に有益な経験であり、知見の共有が強く望まれたのです。

JICA支援の下、まず南アフリカやガーナを始めとする理数科教育で同様の課題を抱える国を交えた域内会合が2001年に開催され、経験の共有や技術的な学び合いが実施されました。また、ケニアの経験を他のアフリカの国々に分かち合うための研修(第三国研修)がケニアで実施されるようになりました。

2004年ころからは、マラウイ、ウガンダ、ザンビア等においてもJICAの理数科教育の技術協力が開始され、各国が独自に自国特有に合わせた活動をしていくようになりました。これに伴い、お互いに自国・他国の経験から学び合おうと、域内会合やケニアでの研修への参加国も徐々に増えていきました。

中には、SMASE-WECSAの活動の結果、日本側が直接支援はしなくともアフリカの国が他のアフリカを支援するアンゴラのような例もでてきています。このようにSMASE-WECSAはアフリカ各国の理数科教育の発展において重要な役割を果たすようになり、今後の更なる活動の展開が期待されます。

(参考リンク)

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理数科教育域内連携ネットワーク会議風景(ナイロビにて2012年11月開催)

5.ケニア人が繋げる日本の教育協力(アンゴラ)

1975年にポルトガルから独立後も27年に亘る内戦によって経済インフラ・社会制度はもちろん、人的資源等が壊滅してしまったアンゴラ。悲惨な時代を乗り越え、復興から開発への新しい国づくりの真っ只中にあります。その中でも、人材育成は急務の課題です。

JICAは、アンゴラに対して2009年から中等理数科教育強化計画(SMASSE)を実施しています。同国では第三国研修を通じ、ケニア人を介した日本の教育協力が実施されています。5つの州におけるパイロットプロジェクトの成功を通じ、中等理数科教育強化計画プロジェクトはアンゴラの教育分野の開発計画の中で核となりつつあります。

その結果として、2012年7月、ケニア・アンゴラ両国が協力して作成した理数科の教科書がアンゴラ政府に届けられました。アフリカの理数科教育に十数年の協力をささげた日本を代表し、在アンゴラ日本大使が5000冊の教科書を授与する姿は、現地マス・メディアでも大きく取り上げられました。

日本の経験がアフリカにおいて理解され、アフリカ側の主体性により広がっていく、日本の教育分野の協力はアフリカで自立発展的な広がりつつあるのです。