帰国後の奨学生を紹介する企画(ABEイニシアティブ教育人材のJICAプロジェクトにおける活躍)(14)

2018年3月27日

【奨学生たちの今を追う】ABE イニシアティブ(14):努力がもたらしたのは夢のような栄誉-褒賞を授与された研修員(教育人材)

このシリーズでは、研修プログラム終了後も引き続き向上心を持ってがんばりつづけている奨学生たちの今を紹介します。

今回は、2016年にケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大(Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology 、以下JKUAT)に機械工学専攻の主任技術者として復職したBoniface Wainaina Kariuki(北海道大学環境科学院修士)に焦点を当てます。北海道大学での修士課程修了に当たっては、環境科学院における最優秀生として沼口賞を受賞しました。そしてケニアに帰国してからも、メテオサット衛星を用いたケニアの日射エネルギーポテンシャルの経年・空間変動に関する論文を、北海道大学での指導教授であった佐藤友徳准教授と共同で発表しました。彼は、日本とケニアの架け橋として、ABEイニシアティブに参加する教育人材における理想的なロールモデルのひとつだといえます。

(注)ABEイニシアティブ:アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth)。アフリカ各国からの奨学生を、民間、政府、教育等の各分野で日本ビジネスの水先案内人に育てることを目的としている。 詳細はこちらをご覧ください。

(注)ジョモ・ケニヤッタ農工大(JKUAT):JKUATは、1981年に日本の支援を受けて農業単科大学として設立されました。 JICAは、JKUATの建設を支援するだけでなく、農業、エンジニアリング、エネルギー、人材育成などさまざまなセクターにまたがってプログラムを支援し続けています。 同大学のメンバーの多くは、日本で短期および長期のトレーニングを受けています。 詳細はこちらをご覧ください。

JKUAT機械工学専攻の主任技術者として復職したKariukiさんは、ABEイニシアティブによって日本で修士を取得できたことを、とても感謝しているといいます。彼が、どれだけ素晴らしい実績を残してきたのかを中心にご紹介していきます。
彼は北海道大学大学環境科学院で、太陽追跡システムの設計製作と試験に関して研究しました。
Kariukiさんに一目会えば、彼がいかに日々の研究を愛しているかが伝わってきます。 そして2017年10月の金曜日の暖かい朝には、彼は約束どおりJICAケニア事務所に、北海道大学から授与されたメダルと表彰状を携えて現れました。それは、彼が日本でいかに勤勉に、情熱を傾けて研究に取り組んだかを証明するものでした。

Kariukiさんによると、彼は帰国後に日本での指導教授から突然の連絡を受け、思いもよらず表彰されることになったことを知らされました。かつての指導教授であった佐藤友徳准教授は、卒業後ケニアに戻っていたKariukiさんに、彼が環境科学院の最優秀生に贈られる沼口賞を受賞したことを知らせたのです。これはすでに優秀生として贈られていた表彰状に加えての受賞でした。

JICAケニア事務所は、所長以下ABEイニシアティブ担当スタッフたち一同、Kariukiさんを温かく迎え入れ、和やかな雰囲気の中での面談となりました。そして、彼の日本滞在中の経験について質疑応答が続きました。

Kariukiさんは自己紹介もそこそこに、彼らしく情熱的な口調で「太陽光エネルギー」の話題に移っていきました。彼は、ケニアには大きな地熱エネルギーのポテンシャルがあるが、まだまだ調査の余地があると言います。一方、彼にとって太陽光エネルギーは、太陽光技術先進国の日本やアメリカを追いかけるものですが、まだまだ発展途上にあり目覚しい成長を遂げているのです。つまり彼の主張は、ケニアにおいてますますエネルギー需要が増加していくなかで、太陽光エネルギーによって地熱エネルギーをしっかりと補完していけるようにしなければならないということなのです。

ABEイニシアティブはどうだったかと質問されるとKariukiさんは、ABEが日本留学の道を支援してくれたように、自分も社会に本当のインパクトを与えたいと語りました。日本では、人々に奉仕することの重要性を学びました。指導教授だった佐藤友徳先生から彼が最初に感銘を受けたことは、必要な時にはいつも先生が寄り添ってくれて、大きな助けとなってくれたことでした。彼曰く、これは非常に大切なことで、彼自身、誇りをもって現在の職場でも実践しており、彼の同僚も彼の学生もその恩恵に浴しています。さらに継続的な改善のために、彼は日本で学んだカイゼンも取り入れています。

そしてABEイニシアティブによって、彼は夢にも思っていなかった高みに到達することができました。日本では多くの機会に恵まれましたが、横浜で参加した火山写真撮影についてのセミナーに参加できたこともそのひとつです。そのおかげで彼は、メテオサット衛星を使用してケニアの太陽放射エネルギーポテンシャルの経年変化および空間変動に関する論文を書くことになったのです。この論文は、いまではScienceDirectに掲載されています。

留学した北海道大学について尋ねると、Kariukiさんは本当に最高の場所だったと言います。キャンパスの施設は研究するにも生活面でもとても便利で、留学生にとっても利用しやすいところでした。図書館、コンピューター室などはじめ、全ての施設がケニアにはないような効率性を備えていました。指導教授は流暢な英語で話してくれ、コトバのカベでコミュニケーションに支障がでることも全くなかったと言います。

ただ、初めての日本で、そこにいること自体にとても興奮してしまい、彼は大事な情報をチェックをすることを忘れてしまいました。その1つは天気です。それで彼は北海道の冬を甘く見てしまいました。最初のうちはエキサイティングでしたが、2週間もすると一変しました。彼は雪の上を歩くのに慣れていなくて、笑ってしまうほど転んでしまったことを、笑いながら話してくれました。また、日本社会は閉鎖的だというけれども、彼自身は日本人との交流をとても楽しむことができたと言います。日本の食べ物についても、少し時間はかかったものの最終的には慣れることができたと言うので、聞いていたJICAの日本人スタッフは驚いてしまいました。彼は本当に和食をよく知っているのです。例えば、しゃぶしゃぶ。豚肉なのに熱を加えるのは湯にさっとくぐらせるだけで、すぐに口に運ぶのだと説明してくれました。

JKUATの学生やスタッフのみなさんは、Kariukiさんと一緒に学び、働くことができて、とても幸せなのではないでしょうか。彼らがKariukiさんから学べることはたくさんあります。Kariukiさんは持ち帰った「日本流」のやり方を彼の学生や同僚に積極的に伝えていきたいと思っていますから、彼の想いがしっかりと受け継がれていってほしいものです。

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JKUATで講義を行うKariukiさん

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JICAケニア事務所での帰国・沼口賞受賞報告(写真:左から、佐野所長、Kariukiさん、杉本次長)

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沼口賞のメダルを手に、日本で学んだことや考えたこと、思い出を語るKariukiさん

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ケニア事務所研修担当メンバーと記念撮影