突撃インタビューよろしく 第1回(LIXIL編)

2016年12月15日

ケニアで開発課題の解決にがんばっている企業や団体の生の声をお届けする企画。今回は2012年よりケニアをターゲットに循環型無水トイレの普及に力をいれているLIXIL。ケニアのような新興国で新規ビジネスを実施するには、山盛りの問題が次々と目の前に迫ってくるかと思われ、ちぎっては投げちぎっては投げといった対応をされてきたのではないか、その辺のところをこの事業の担当の山上さんにお話を聞いた。
なおLIXILはJICAの民間技術普及促進事業のスキームに採択。(実施済み)
聞き手はJICAケニア事務所の相園賢治。
録音は伊藤正芳。

対象国を選ぶのは難しそう?

相園:
なんでまたケニアを対象国にしたのですか?
山上:
会社の方針です。2008年(当時 INAX)よりこの「循環型無水トイレ」の実証実験を日本やベトナムで実施してきました。2011年に会社がLIXILにかわり、今後のグローバルの戦いに向けてサニテーションを掲げていく方針が決定しました。そんな中対象地域をサブ・サハラ以南の地域に定めそのなかでも、事業可能性の高いケニアを選び、また2013年のTICAD5を皮切りに本格的に始動しました。そのチームメンバーとして私は2012年に参加し今に至っています。私がケニアにしようといったわけではありませんので。これ言うとインタビュアーのかた、ちょっとがっかりするんですよね。私が決めたと思っていたようで。
相園:
いやいや、勝手に対象国を個人で決められても困るので。ところでケニアでやろうと決まり実際に進出を始めるわけですが、ケニアに来る前と実際に来てみたらぜんぜん違ってた、というのはありませんでしたか?

来てみてわかるのです。

山上:
来る前はケニアの政府とうまくパートナーシップを築くことができればすべてうまくいくと考え、いい関係の構築が最初の目標でした。日本やアジアでは公衆衛生はパブリックサービスである、特にケニアのような新興国ではそれがさらに強い、といった固定概念がわれわれにもあったのは確かです。ケニア入りした当初、ナイロビ市や保健省に事業の説明をしたところ非常に高い関心を持っていただいたため、われわれはこれを成果だと本社に報告していました。ところが違っていました。
相園:
違ってましたか?どのようなところが。
山上:
関心を示してもらえることと、現実的な実施パートナーとなることは違う、それに途中まで気づきませんでした。具体的には相手側とMOU結んだので何かが動くであろう、みたいな感じで我々は思っていたのですが、何も起こらない。MOUはもちろん大事なのですが、実施には別のアプローチが必要と気づくのに時間がかかりました。
相園:
う、耳が痛い話ですね、身につまされます。
山上:
あと予算がないこと。おそらく保健分野の予算はあるんだろうけども、優先順位等もあり、サニテーション分野にすぐに使っても良い予算はなかったかと思います。あとスピード感でしょうか。決裁の。そのため進出から2年くらいたったあと、アプローチの方向転換をしました。現地政府と握手をしながらも、実施母体としてケニア内の民間企業との連携を模索し始めた。ちょうどJICAの民間連携事業の中間あたりからでしょうか。
相園:
お金、ないですよねえ。

インサイトがあります。

山上:
ただそこもひとつ気づきがありました。それはLIXILのような新参者にいきなり予算を、さあジャンジャン使ってください、ということは普通ないかなと。われわれのケニアでの実績のなさに改めて気づき、小さくてもいいから実績つくりに注力するようになりました。以前は公共事業に直接アプローチしていましたが、小さくても民間を対象に実績を積み上げ、それをショーケースとして行政にアプローチしていく、といった感じに方向転換しました。
相園:
それは王道かと。新興国で開発課題の解決をビジネスとしていくには今言われたアプローチをとるパターンが多いかと思います。私がこれまでケニアで見てきた案件でも途中から方向転換しているパターンがほとんどです。(大型インフラはこの限りではありません)要はスピード感を考慮したダブルトラックが必要です。
山上:
政府にお金を出してもらう、良いパートナーになってもらうにはやはり信用が必要でそれにはケニアでの実績がやはり必要になってきますね。

立ちはだかる壁。

相園:
ところで、これまで事業を実施してきた経験から、「なんでそうなるの?」「なんでわかってくれないかなあ?」みたいなものはありましたか?で、それをうまく乗り越えました、といったストーリーが聞ければ。
山上:
実はまだ乗り越えてません。日々の業務で直面していることですが、ひとことで言うと「日本のやり方とケニアのやり方の違い」ということになるでしょうか?たとえば日本で何かを業者に発注すると、納期までにある程度のものが上がってきますよね。また、こちらのオーダーがおかしかったら、業者から確認の連絡が入ります。そういう頭を持ってケニアで仕事をしていると、発注後何も連絡がないのは問題がないことだと解釈してしまいがちです。で納期に何もあがってこない、えー、どういうこと?ということが結構ありました。
相園:
そうですよね、日本ではあがってきますよね。よくわかります。
山上:
それで、仕事の質が、レベルがと思ってしまいますよね?ところが私はこちら側の頼み方、フォローの仕方が悪いのだと気づきました。時間かかりましたよ。
相園:
えらい。待ってました。それを言ってもらわないとこの記事出せなかったので。
山上:
それ以来、業者とは密なコミュニケーションをとるように心がけています。あといい人(パートナー)との出会いが大事ですね。

ケニア人って。

相園:
でもできる人、真面目な人を見抜くのは大変でしょう。簡単な面談や履歴書ではよくわからいこと、ないですか?
山上:
そのとおりです。ですのでわれわれの場合、間に信用できるケニア人をパートナーに選んでいます。これまでの経験から、良くしゃべる人より寡黙な人の方がパートナーに向いている傾向にあります。
相園:
確かに。俺はいい人なので雇いなさい、とかいうすごいのもいた。
山上:
おしゃべりな人は面白いけど仕事を一緒にするのはまた別なような気がします。
相園:
本当に。ところで3年半ほどケニアに滞在され山盛りいろいろなことありましたが、ケニアに引き続きおられる予定ですよね?なにか特別な理由でも?

でもやはりケニアです。

山上:
2つ理由があります。ひとつはケニアはもう私の中で第2の故郷ということでしょうか。友人・知人も増えましたし。もうひとつは社内に応援してくれる人の数が増えたことでしょうか。2年ほど前までは何かケニアでやっているらしい、といった感じだったのですが、社内でのケニアの活動の報告会、といったものを設けて以降関心を持つ社員の方が増えてきてすごく応援してくれています。また、社としてはできないことを社員のドネーションでまかなっている事業もあります。
相園:
なんですかそれは?
山上:
ナイロビのスラムに図書館を建設、生理用品の配布、パソコンの配布などLIXIL社員のドネーションで実施しているプロジェクトもあり、ケニアでの活動の関心が社内で高まってきている、これが二つ目の理由かと。
相園:
それはやめられませんね。もう有名人じゃないですか。
山上:
はい、やめられません。

ひとことメッセージ

相園:
最後に今後、ケニア/アフリカに進出しようとしている企業さんに向けてメッセージみたいなものはありますか?
山上:
まだ成功してないのでおこがましいのですが、、「成功すると思ってケニアに来る」でしょうか。
相園:
うーんなるほど。経験に基づいた腹から出たお言葉かと。
では本当に最後の質問ですが、山上さんにとっての理想のトイレって?
山上:
自宅のトイレです。プライバシーが守られほっとする場所が好きなんです。用を足すためだけに使ってるわけではないのです。また外に出たときに一番好きな場所はと問われるとそこでもトイレですと答えてしまいますね。それと洋式がいいです。
相園:
シャワートイレとかも必要?
山上:
もちろんシャワートイレ派です。実は便座もメーカーによっていろいろと違うんですよ。当社の場合はツインノズルです。角度も違います。
相園:
ツイン?、、か、角度?
山上:
はい。当社は75度です。
相園:
何が違うのですが?
山上:
刺激が違います。それとツインノズル。
相園:
やはりツインか、、ありがとうございました。

(おしまい)

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バラ園従業員宿舎のパイロットサイト(無水トイレ)左;山上さん 右;相園

【画像】

無水トイレ インサイド