突撃インタビューよろしく 第4回(ウェルシィ編)

2017年5月31日

ケニアで開発課題の解決にがんばっている企業や団体の生の声をお届けする企画。今回は2016年にJICAの支援プログラムのひとつ「太陽光発電を用いた水浄化普及・実証事業」が終了したウェルシィ。ケニアのような新興国で新規ビジネスを実施するには、山盛りの問題が次々と目の前に迫ってくるかと思われ、ちぎっては投げちぎっては投げといった対応をされてきたのではないか、その辺のところをこの事業の担当の安田さんにお話を聞いた。

聞き手はJICAケニア事務所の相園賢治、録音はもちろん伊藤正芳。

安田直樹さん
株式会社ウェルシィ 海外事業推進室 担当部長 ガーナ青年海外協力隊OB(1994年〜1995年)でもある。

あたりをつける

相園:
では早速インタビューを始めたいと思います。
安田:
はい。ちなみに私で何人目のインタビューなんですか?
相園:
4人目です。1,000人を目標にこつこつやらせていただいています。さて2016年8月で普及・実証事業は終了しましたがその後の動きというのは?差し支えなければ。
安田:
この普及・実証の期間中に今後の事業展開を考え、ネットワーク構築を念頭にいろいろと人脈つくりに励んでいました。もちろんCPであったRUJWASCO(Ruiru-Juja水サービス会社)とは良好な関係が今も続いています。特に昨年の普及・実証後はフォローアップの一環として契約ベースで保守・管理のサービスを提供してきました。またRuiru地区はThika Roadが完成してからNairobiから車で約1時間ほどの通勤圏となったため、この地域に住む住民の数がかなり増加してきており、それに伴い水の供給量の増量も急務となったため、現在、浄水場の拡張工事に関して引き合いがきています。
相園:
引き合いが。いいですねえ。それはウェルシィさんの実力が評価されたということですよね?
安田:
実証期間中の3年間とフォローアップの支援も含めて信頼はいただいているものと思います。

高額製品の営業

相園:
ところでこういった、典型的なB to Bビジネス、と言っていいかと思うのですが、施設や機械が高額なためビジネスの水平展開が難しいかと思うのですが、そこには何か策が?
安田:
そこが難しいところで、日本製品は他国製品に比べて価格が高いので、価格の以上の何か(付加価値)を提供しないとクライアントは振り向いてくれないことが多いと考えています。そのため、違うサービスを組み合わせて提供してきました。先ほどRUJWASCOに保守・管理のサービスを提供していると説明しましたが、東京から遠隔監視ができるシステムを利用して浄化装置の動きをリアルタイムで確認しています。スマホで。
相園:
東京から?スマホで?

ここで日本の技術

安田:
はい、スマホで。何か問題があれば私のスマホに連絡が入るよう仕組みになっており、受信後すぐにデータを分析し現場に対応策を伝えています。そのため、この1年間は特に大きな問題は起こっていません。
相園:
ほお、日本の技術というやつがでてきましたね。ただ、東京で飯を食べているときに、「ケニアで水漏れしてるぞ!」ってお知らせされるのは、なかなか微妙な感じですね。
安田:
そうなんですけど、水って世界中の誰にとってもすごく大事なものなので、ケニアから遠く離れた東京でも当社は24時間体制でスタンバイしています。
相園:
すごい、そしてえらい。聞いたか、今の、伊藤君?
伊藤:
すごい、そしてえらい。
相園:
それはそれは大変失礼しました。ところでそのシステム、何か特許や商標をとっているのですか?
安田:
はい、日本ではすでに商標を取得しており、商品名は「WeLLDAS(ウェルダス)」といいます。
相園:
「WeLLDAS(ウェルダス)」ですか。ケニアでも同様に商標などを取得することを考えているのですか?
安田:
はい、できれば。
相園:
そうですか。それじゃあ、ケニアでの商品名を考えないといけませんねえ、うーん、そうだなあ「WeLLDASサナ」、なんかはいかがですか?
安田:
「WeLLDASサナ」?なんですかそれは?
相園:
ケニアでは「ありがとう」を「アサンテ」、「ありがとうございます」を「アサンテ・サナ」といった感じで言います。なので商品名が「WeLLDASでございます」みたいな感覚ですかね。
安田:
「・・・・・」(無反応)
伊藤:
な、なにもせずに「WeLLDAS(ウェルダス)」でいいんじゃないですか?売り込みにいったときに「WeLLDAS(ウェルダス)でございます」でございます、となり結構気持ちが悪いです。
相園:
ん、そ、そうか。売り上げ炸裂と思ったんだけども。
ところで、この遠隔監視とは別に先ほど浄水場の拡張の引き合いがあるといった話があったと思うのですが、そこでも日本の技術が登場しますか?
安田:
はい、よくぞ聞いてくれました。通常浄水場の拡張には新しい土地の確保が必要になってくるのですが(浄水施設自体がコンクリート製で大規模になる)、今回は新たにそのような大規模施設を作らずにコンパクトなろ過膜を利用して浄化をおこないますので、既存の土地や施設を使いながら効率よく浄化をすることが可能になります。これですと、ろ過膜の分だけ価格は高くなるかもしれませんが、新しい土地の確保などに要する予算や時間は大幅に省けるので、とても価値があるものが提案できると考えています。
相園:
なるほど。
安田:
またそのろ過膜を利用した技術の利点は普及・実証中にすでに証明済みであり、RUJWASOCOはこのシステムにかなり関心が高いようです。
相園:
そうですか。それは今回の普及・実証事業がこれからの事業展開の布石になったということですね。説明を聞いていて嬉しくなってきます。

新興国のビジネスモデル

相園:
ところで改めてですがケニアのビジネスモデルについて教えていただけますか?
安田:
日本の場合ですと水処理装置を設置し、地下水などの原水を浄化するサービスを提供しています。ここでコスト削減や地震などの災害対策(水道水の断水対策)としてのBCP(Business Continuation Plan - 事業継続計画として"有事に事業を継続できる体制を整えること")効果を高く評価頂いて導入につながっているケースが多いです。イメージは「浄化」をキーワードに、メンテナンスや部品の供給、水質分析等を一体としたサービスを商売としている感じでしょうか。ケニアでも同様の事業展開を念頭に活動を進めています。
相園:
まさによく言われるジレットタイプですね(カミソリ本体ではなく替え刃で儲ける)。ただ、ケニアのような新興国ではそのモデル難しくはないですか?
安田:
そこなんです。まだ営業活動を始めて数年なのでなんともいえないのですが、そう簡単にはいかないかなと思います。ただ、装置だけを売るような売り切り型の商売ではなく、先ほど説明した遠隔監視システムやろ過膜の優位性等を組み合わせ、いろいろとアプローチを考えていきたいと思います。
相園:
そうですね、営業でトークするときの持ち駒のためにはマネタイズモデルを考えることは非常に大事かと。それには課金のパターンをよく考えることで視野が広がると思います。よく言われているのは、何で儲けて何では儲けない、誰から儲けて誰からは儲けない、この時は儲けてこの時は儲けない。この3つをクロスで考えるだけでもかなりのマネタイズモデルができます。

ひとことメッセージ

相園:
さて最後の質問になりますが、ケニアへの進出を考えている日本企業さんに何かメッセージなどがあれば。
安田:
そうですねえ、大変なことがいっぱいありますが長期的な展望でこられるのがよいかと。われわれも大変なことを色々と経験させていただきました。
相園:
そうですね、長い目で。
安田:
あと、われわれもまだまだこれからなので一緒に仲間として歩んでいただければと思います。
相園:
お、温かいお言葉で。ところで日本にはウェルシィさんにとっての競合会社っているんですよね?その方たちがケニア進出に関心があるとかいうのはないのですか?
安田:
ま、ないでしょうね(バッサリ)。ケニアは遠いし、まだ有望な市場と思われていないでしょう。ただわれわれがケニアで何やかしらやっていることは知られているようです。おそらくですが、われわれがケニアで成功すると一気に関心は高まるとは思います。
相園:
なるほど、では成功しちゃいけませんね。
伊藤:
そうじゃないでしょっ!
相園:
じゃ、失敗しまくっていつもがっくりした顔をしながらたまに成功する?
伊藤:
普通に成功しましょうよ。
安田:
そうします。
相園:
それがよろしいかと。
では安田さん、本日はどうもありがとうございました。

(おしまい)

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プロジェクト内容を発表する安田さん(中央右)

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浄化施設全景

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雨季のプラント浄水性能(原水→処理水)