突撃インタビューよろしく(日本企業編) 第1部 総集編

2017年12月8日

ケニアで開発課題の解決にがんばっている企業や団体の生の声をお届けする企画。今回はこれまで5回にわたってインタビューしてきたものの総集編。各回のインタビューからエッセンスを引き出し、座談会形式を取りながらまとめてみようというもの。

語り手はJICAケニア事務所の相園賢治。
録音はそれでも伊藤正芳。
録音補佐は杉本聡JICAケニア事務所次長。

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伊藤専用録音機。iPhoneともいう

総集編?

伊藤:
5回でもう総集編って早くないですか?
相園:
そんな気もする。ただこのインタビュー記事の企画がいつまで続くかわからないから早めにやっておかないと。
伊藤:
なるほど。あと1,000人の目標もありますよね?
相園:
あ、覚えてた。今のペースでいくと目標達成まで200年くらいかかりそうなので、最近は油っこい料理を控えるなど健康に気をつけているのだ。
伊藤:
それはいいですね、私も見習います。
相園:
さて今回はこれまでの5回のインタビューの内容からさまざまなエッセンスを抽出し、座談会形式でそれらを再度簡単にまとめていこうかと考えています。
杉本:
何事も時々は振り返ってみるのが重要ですよね。ところで、いつもこういったレストランで食事をしながらインタビューをしていたのですか?てっきりJICA事務所の会議室でやっていたもの思ってました。
相園:
そうなんです。食事をしながらのほうがざっくばらんな意見が聞けるかと思い、毎回食事を取りながらインタビューをしています。一度居酒屋でやったときは3時間もかかってしまい、次の日に文字に起こすのが大変でした。
杉本:
なるほど、今日はインタビューの舞台裏も聞けそうですね。
相園:
はい。では改めまして、本日は録音補佐の大役、どうぞよろしくお願いします。
杉本:
録音…ほ・さ??

LIXIL編

相園:
では早速LIXILさんのインタビューから始めます。まずは公的機関との絡みということで、握手をしながらも実働部隊は別で設ける、ということだと思いますが。
杉本:
そのとおりだと思います。日本もそうですけど、公的機関では何か新しいことに取り組む場合、予算を省内で検討した後、財務省に要求するという一般的な流れがあるため、特に予算制度における時間軸の違いを認識することが不可欠と思います。
相園:
なるほど。新予算を得るには結構な時間がかかると思われ、体力的に待てない企業さんも多くなりますしね。そのため、公的機関以外の決裁のシステムが早く回るところをクライアントとしてさがすダブルトラックが必要になってくるかと思います。
さてもうひとつなんですが、現地の業者さんとのお付き合い、というところで日本との違いがでてきますが。
杉本:
これは現地の業者さんだけの話ではなく、我々も常日頃から直面している課題だと思いました。私の経験でも、ケニアの駐在が始まった当初、「ケニア、いいじゃない、対応も前向きだしコミュニケーションもスムーズで」といった感じでしたが、徐々に、「約束したのになんか動いていないような気がする」、ということがわかってきて今に至っています。
相園:
そうですね。ケニアの人たち、プレゼントとかしゃべりが抜群にうまいんですよね。ただ、言ってることとやってることが、「あのねえ、君たち」というときがよくあります。また彼らは「できない」となかなか言わないところがあり、その言葉を信じて業務を任せえらい目に会うことが結構あったりします。
杉本:
私も何度か痛い目にあったので、「ノープロブレム」と即答されたら、むしろ問題があるのでは、とつい勘繰ってしまいますね。
相園:
ただそれは彼らの文化で、ケニアの人たちの「できる」という意味は期待を裏切りたくないことに対する彼らなりの優しさではないかと感じるときもよくあります。ただ仕事でその妙なやさしさが出てくると信用問題に発展するので、粘り強く「できないこと」を確認する作業が必要になってきますね。
杉本:
最近本当にそう思います。ところで、ここのインタビューの時に「角度」とか出てきますよね?
相園:
そうなんです、この角度とか75度とかですが、LIXILさんのインタビューから出てきたものでそれをアフリカスキャンさんとのインタビューのときに使いました。実は深い意味は何もなく、山上さんへのメッセージという意味合いでした。
杉本:
なるほど…深いですね。
伊藤:
これまでに5回しかインタビューしていないのにいろいろと舞台裏があります。

ロート編

相園:
続いてロートさんですが、対症療法との違いがポイントかと思います。
杉本:
対症療法との違いですか?
相園:
はい。ナイロビのヘア・ケア商品ですが、ふけとかゆみ等個別の症状を軽減する製品は市場に多く出回っていますが頭皮環境の改善に取り組む製品は存在していません。また抜け毛については育毛をパッケージに謳う製品はありますが実際に育毛成分は確認できないものが多いようです。
杉本:
なるほど。
相園:
そのような市場でロートさんは頭皮ケアと育毛をコンセプトとする製品を2017年3月に販売開始しました。このような機能性製品はロートさんが得意とする分野であり、医学的アプローチでの研究を進めることで他社との差別化を図ることを目指しているようです。
杉本:
今の話を聞いていると20年ほど前にベトナムのハノイに駐在していたときのことを思い出します。3年ほどいましたが、ちょうど経済成長が軌道に乗った時期だったので、所得が向上するに従い女性の化粧がどんどん洗練されていったのを間近に見ました。
相園:
だんだんナチュラルメイクになっていく、といった感じでしょうか?
杉本:
そうですね。アジアとアフリカなので一概にはいえませんが、所得が上がることと化粧の腕や質がかわるのは因果関係があるのではと思います。
相園:
ありそうですね。
杉本:
ところで、ロートさんはサロンとかでの販売等は考えていないのでしょうか?美容院でも色々なヘアケア製品を販売しているような記憶があるのですが。
相園:
もちろん考えていますよ。私も調査時には何件か訪問させていただきました。サロンオーナーやサロニストの方を伝道師として商品やサービスを広めていきたい狙いがあるものと。
杉本:
是非うまくいってほしいですね。ところで、ロートさんの現地代表の阿子島さんはケニア協力隊OGですが、インタビュー記事を拝見して、そのご経験を活かして仕事をされていると感じたのですが、この点はどうでしょうか?
相園:
そうですね。やはり市場創出といった場合には相手国の文化や社会等を深く理解していることが重要かと思います。ケニア人女性は他のアフリカ諸国と同様、付け毛を使用した編み込みを行う風習があり、これが女性のオシャレと社会的ステータスの主要部分を構成しています。近年、女性の社会進出が進み生活スタイルは劇的に変わりつつあるものの、髪のオシャレの重要性はむしろ増しているようです。このような変化への気づき、やはり協力隊OGならではと感じますね。
杉本:
ナイロビで仕事をしていると、ケニアのほんの一部しか見えていないことを時々痛感しますね。その意味で、ケニアやアフリカへの進出を考えている日本企業さんには、協力隊OB・OGの方々が持っている稀有な経験を是非活用いただきたいですね。
相園:
そう思います。

EXICA編

相園:
続いてEXCIAさんですが、税金等の問題がなんとも微妙で、代表の松本さんもかなりご苦労されたようです。
杉本:
本当に。政府のさじ加減一つで事業が大きく揺れるので怖いところでもありますね。ケニアは日本車を中心に沢山の中古車が走っていますけど、今の中古車市場はどんな状況なんですか?
相園:
細かいデータがないのでなんともいえませんが、ナイロビの街中をみるとあまりにも中古車販売屋さんが多いので少し飽和状態かなと感じます。ケニアの近隣諸国のほうが進出しやすいかもしれません。あとこれは中古車市場だけの特徴ではないと思うのですが、ケニアでは進出形態もかなりスピーディですが撤退もかなり早い、といった印象があります。日本と違い市場や社会の変化のスピードがものすごく早いので、じっくり調査をするといったやり方よりは、実際に事業をすすめながら様子をみるといったやり方をしているのかもしれません。
杉本:
なるほど。
相園:
ところでスピード化というと、行政のサービスにICTが入ってきており助かる場面も多いですね。車の免許更新なんかは以前はものすごい列に並ばないといけませんでしたが、今はWEB上で更新し、更新したものを印刷して免許に貼り付けるだけ、といった感じになっており、ギャップを感じます。

ウェルシィ編

相園:
さてつづいてはウェルシーさんですが、ここには東京からの遠隔操作サービスがあるんですよね。
杉本:
ええ、このインタビューを読んだ時には私も驚きました。
相園:
で、これが営業ツール(クライアントとのコミュニケーションツール)になっているといった話を担当の安田さんからお伺いしていました。というのもやはり数千万円もする浄化装置は「はい、ちょうだい」と購入してくれるような商材ではなく、さまざまな信用を積み上げてクライアントに予算計上してもらわないといけません。それにはこの遠隔操作のサービスが実弾のように効果があるな、と感じます。
杉本:
お試しができるということですね。
相園:
そうですね。そのお試しを通じて、商品だけでなく、サービス内容等もチェックできるということかと。また今回のインタビュー内容で説明してる浄水場の拡張工事に関してですが、コンパクトなろ過膜を使うことにより、よくある事業立ち上げ時の土地問題に貢献できるといわれています。
杉本:
確かにケニアでも土地利用を巡って問題が生じることは多いので、技術力で現実にうまく対応している例だと思います。ケニアに限らず途上国では、問題のありそうな点をうまく「避ける」ことは本当に重要だと実感しますね。

AfricaScan編

相園:
つぎはAfricaScanさんですが、ケニアのひとは雇われ店長になるよりは、一国一城の主になりたい人が多いのでFCのしくみはケニア人マインドに合致しているものとおもいます。同時にコンプライアンスの問題も片付きますので。
杉本:
なるほど。
相園:
ところで澤田さんのインタビューのときに、イノベーションという言葉がでてきました。イノベーションは地方からだとか、いや流行はナイロビからだとか、いろいろと出てきましたが、おそらくは規制がすくないところがイノベーションが起こりやすい(起こしやすい)ということがひとつの正解かと思います。
杉本:
そうですね。制度の中に納まるように考える、という日本人的な発想ではなくて、逆に制度をうまく使って商売をする、という思考が強いのでしょうかね。
相園:
Uberというタクシー事業はナイロビでかなり広がっており、それをまねたタクシー会社も出てきています。日本でこのようなサービスが出てきたとしても、規制でがんじがらめで普及は難しいでしょうね。(東京にも近距離はあると聞いています)
杉本:
そのとおりかと。規制が無い分、競争も厳しいのでしょうが、工夫次第では面白い仕事が出来る余地が大きいと感じます。
相園:
またSendyなどの宅配業者も出てきています。ナイロビのような住所がはっきりしない都市を逆手に取ったサービスかと。ただICTが根底にあるのが特徴です。ナイロビは社会の変化のスピードが早いのでICTは重要です。また現代のような不確実性が高い市場や社会では「走りながらまわしていく」といったやり方もわれわれ日本人はもっと学ばないといけないかもしれません。
杉本:
自分でも「じっくり丁寧にやるのが日本らしさ」とつい考えがちですが、日本ブランドでどこまで飯を食べていけるのか、考えるときが来てますね。

ひとことメッセージ

相園:
さていつもインタビューの最後に企業さんに聞いていたのですが、ケニアへの進出を考えている日本企業さんに何か杉本次長からメッセージなどがあれば、ぜひ。
杉本:
こういう仕事をしている立場で申し上げるのも何なのですが、着眼点次第でまだまだ多くのビジネスチャンスがあることに加え、何かが成功したときのインパクトややりがいが、ケニアのほうが日本より大きい、そういう魅力があるんじゃないでしょうか?
相園:
確かに。
杉本:
一方で、それを成し遂げるためには、我慢強く、初心忘れずに、熱い思いを持ちながらもしたたかに、淡々と頑張ることも必要かと思います。根競べみたいなところもあるかと思いますね。
相園:
う〜ん、今の日本語ですか?したたかといったあたりから、私の左脳がピタリと作動しなくなりました。
杉本:
あと補足ですが、ケニアは一生懸命がんばっている人を茶化したりするタイプの文化ではないと思います。
相園:
そうですね。一生懸命やっている人に対して拍手を送ってくれる人たちだと思います。

それで第2部は?

伊藤:
ところで相園さん、今回は第1部の総集編ですが、第2部やるんですよね?…
相園:
そのつもりで今内容を考えているんだけども、なかなか…
杉本:
であれば、起業されている人にフォーカスするのは?
相園:
あ、そ、それいただきます。
伊藤:
え、いただくって、それ、決めるの早すぎませんか。
相園:
即決が大事なのだ、クリスマスも近いし。
伊藤:
クリスマス、確かに。
相園:
ということで次は起業家にフォーカスします、ケニアは結構起業家の方いそうだし、また隊員OB・OGの方で戻ってくる人も多いですし。ただ、起業するのは熱意と積立金をつかえば簡単にできますが、儲け続けるのが大変かと。事業開始後(おそらく2年ほど経過した後)、事業が軌道に乗るかどうかのタイミング時にJICA協力隊事務局から隊員OB・OGの方への何らかの支援スキームがあれば大きな飛躍に繋がるのに、と思うときがちょくちょくありますね。
杉本:
そうですね。現役隊員のかたにもこれからの起業家の記事を読んでもらえるといいですねえ。
相園:
はい、そうですね。ではお時間となりました。改めまして本日は録音補佐の大役、ありがとうございました。
杉本:
録音…補・佐?
伊藤:
はい、伊藤が録音、杉本次長はその補佐となります。
杉本:
…補佐って、人にこれだけしゃべらせておいていったい…
(ガチャッ)
(おしまい)

突撃インタビューよろしく(起業家編) 来年アップ予定

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参考書

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相園(右)、伊藤(左) いろいろと思案中