突撃インタビューよろしく 第2部 起業家特集 第3回(OFFICE YAGI KENYA編)

2018年10月11日

ケニアで開発課題の解決にがんばっている企業や団体の生の声をお届けする企画。第2部はケニアで起業されている日本人のかたを特集。今回は2018年よりケニアでビジネス開始の準備にとりかかっているOFFICE YAGI KENYA 。
ケニアのような新興国で起業するには、山盛りの問題が次々と目の前に迫ってくるかと思われ、ちぎっては投げちぎっては投げといった対応をされてきたのではないか、その辺のところをこの事業の創設者である八木さんにお話を聞いた。

聞き手はJICAケニア事務所の相園賢治、録音はもう少し伊藤正芳。

八木 勇樹さん
OFFICE YAGI KENYA, CEO, Running Development Camp KENYA (RDC KENYA) 代表 (プロランナーでもある)

プロ!

相園:
ではさっそくインタビューを始めさせていただきますが、八木さんはプロランナーなんですよね?
八木:
はい、そういうくくりになるかとおもいます。以前は実業団に所属していましたが2016年に退職し、今は個人で走っています。
相園:
プロということなので、やはり賞金を稼ぐということかとおもいますが、これまでに何か実績とかはあるのですか?
八木:
海外のレースで何度か入賞し、賞金をいただいたことがあります。
相園:
おお、ちなみにおいくらいただいたのですか?
伊藤:
相園さん!!
相園:
あ、すみません、お金好きなもんで、つい。
八木:
たいした金額ではなかったと記憶しています。

スポーツ関連事業

相園:
さて実はJICAでもスポーツ関連の事業は最近ホットなテーマでもあり少しずつ案件も増えていってるんですよね。ただ、その中でもマラソンをビジネスとして捉えるといったことはあまりなかったような記憶ですので中身を少しずつ教えてください。

八木:
はい、私は基本アスリートですので世界でスポーツ関連が盛り上がるのは嬉しいです。特にマラソンはいいと思いますよ。というのもまず、道具がなくてすむというのがあります。また相手がいなくてもよい。それとグラウンドが絶対必要ということはないので、特に新興国ではよいのではないでしょうか?
相園:
なるほど。ところでやはりケニア人って走るの速いんですか?
八木:
速いですよ、マラソン大国ですからね。世界のマラソンランナーの上位100傑の過半数はケニア人ですから。
相園:
そうなんですか。
八木:
それで、私もその聖地といわれるIten(場所の名前)で自分の可能性を試してみたい、また長期的にトレーニングを積んでみたいと思い今年の初めにケニアにやってきました。
相園:
Itenというところはそんなにすごいんですか?まだ行ったことがないんですが。
八木:
そうですね、やはり2時間5分前後のタイムを持っている人がごろごろいますからね。今世界で一番速いランナーもこの辺りの出身です。あと、街の入り口にはチャンピオンズゲートがあり、マラソンの街といった感じです。
(注)今世界で一番速いランナーはケニアのエリウド・キプチョゲ選手ですが、2018年9月16日に開催されたベルリンマラソンにおいて2:01:39という人類初の2時間1分台のタイムで世界記録を大幅に更新しました。女子では同じくケニアのグラディス・チェロノ選手が優勝し、ケニアの男女優勝を実現。
相園:
楽しそうなところですね。

なぜビジネスとして?

相園:
ところで、はじめからマラソンビジネスを考えられてたんですか?
八木:
そうではないんですよね。今年の1月から3月の間、ケニア人ランナーと一緒にトレーニングしていくうちにいろいろな課題がわかってきたんですね。簡単にいうと、これだけすごいポテンシャルがあるのに、何でこれくらいの成績なんだろうか?また世界レベルのタイムを持っているのに、何でこれくらいの生活しかできないのか?そういったところが気になり始めたんです。またこのプロジェクト発足の大きな要因は、一緒にトレーニングや生活をして、ケニア人と友達となって家族とも会いました。そこで困っている現状をみて、せめて私の見える範囲のランナーだけでも、少しでも良い環境を作ってあげたいな、という思いが1番ですね。
相園:
なるほど。
八木:
それと、食事管理やトレーニングメニューの設計などのレベルが恐ろしく低いのがわかってきました。これらは栄養バランスの整った食事や摂取のタイミング、私が日本で事業として行っている科学的な根拠や数値を基にしたトレーニングメニューの設計などを取り入れる事で更なる競技力向上は可能だと考えています。
相園:
ということはきちんとしたことをしておれば、もっと活躍できるランナーが増えると?
八木:
そうです。あとマラソンは大会にあわせ自分のコンディションを高めていきベストな状態で試合に臨む、といったかなり高度なマネジメントが求められます。そういったマネージメントもレベルの高いものではないですね。だからものすごく伸びしろがおおきいと感じています。
相園:
なるほど、それでビジネスを立ち上げようと考えたわけですね。ただそういった支援をする実業団とかもいますよね?
八木:
いるにはいますが、Itenにはあまりありません。海外のエージェントが速いランナーを見つけ、実業団に紹介する、といった感じが多いです。ですので、ポテンシャルのあるランナーを育てる、といった仕組みがないといえます。

事業内容

相園:
さて改めてですが、事業内容について教えてもらっても良いですか?
八木:
はい、現在Itenにトレーニングセンターと選手が宿泊できる施設、レストラン棟を建築中です。そこを拠点にポテンシャルのあるケニア人ランナーを強化し、国際レースに出場、上位を目指し世界一のランニングチームを目指します。
相園:
なるほど。
八木:
実は東京にすでにそういったトレーニング施設を持っており、低酸素環境下でのトレーニングを活用してトップアスリートから一般の方を応援するビジネスをしています。
相園:
ある程度のノウハウはあると?
八木:
はい、そうです。
相園:
ちなみに施設はいつごろ完成予定ですか?
八木:
今年中にと考えてはいましたが少し遅れそうです。また現在は9名のランナーがおり、2,3年のうちに30名くらいにしたいですね、女性の選手ももちろん考えています。
相園:
そのランナー方たちがトレーニングセンターを使うのにはおいくらくらい払うのですか?
八木:
選手が競技に集中できる環境を作りたいので、全て無償で提供します。また単年のサポートではなく中長期的視点で行います。
相園:
無料!ただで飯が食え寝れるのなら、いっぱいケニア人の方来そうですね。私が行ってもいいんですか?
八木:
はい、ぜひ体験に来てください!ケニア人ランナーに関しては競技力だけでなく、実際に会って話して人間性なども考慮します。
相園:
そうですよね、ところで今後の話ですが、2020年には東京オリンピックがありますが、念頭においてるんですか?
八木:
はい、もちろんです。ケニア人だけじゃなく私ももちろん狙っています。
相園:
おおお、格好いい。一生に一度くらいはその「次のオリンピック狙っています」とか言うセリフ、はいてみたいもんです、な、伊藤君。ただ私も「次の有馬記念狙っています」、といったセリフ、1年に1回ははいてるんですが。
伊藤:
それ、馬券でしょ!
八木:
あと少し先ですが2024年のパリも念頭においてますよ。と同時に毎年開催される世界6大レースも。そこで各選手が実績を残し、このプロジェクトで育成されたランナーは強いといった評価がほしいですね。それで、最終的には最初に申しましたように、各ランナーやマラソン関係者またItenの人達の生活の向上にこの事業が貢献できるような仕組みにしたいとおもいます。

友情なのだ

相園:
ところで今は事業開始の準備でお忙しいかとおもいますが、ケニア人と仕事をするのは大変ではないですか?
八木:
はい、すごく大変です。約束どおりに物事が進みませんよね。
相園:
よくわかります。ストレスも多いかと思いますが。
八木:
はい、ただひとつ他のビジネスをされているかたと違うのは、私と今一緒にやってくれているケニア人は、みんなランナーなんですよね。だから根底ではランナーだけがわかる友情みたいなのがあり、信頼しあっています。それはつらい練習を一緒に続けているとかいったところから、生まれているのかもしれません。
相園:
う~ん、友情ですか、いい話です。聞いたか今の、伊藤君。
伊藤:
はい、いい話です。友情ですね。
相園:
ということで、かなりいい話だったので自分も明日からちょっと早起きして走ることに決めました。
伊藤:
いきなり、即決ですね。
相園:
当たり前だ。それでまずは身体のことも考えて無理のないように、毎朝700メートル走ることにする。
八木・伊藤:
ななひゃ…短かッ!!

ひとことメッセージ

相園:
さていつも皆さんに聞いている最後の質問になりますが、ケニアやアフリカで起業を考えている日本人のみなさんに何かメッセージなどがあれば。
八木:
そうですねえ、自分の場合もそうだったんですが、悩むのであれば行動をおこすことじゃないでしょうか?あと好きなことや得意なことに関連した事業がいいと思います。
相園:
なるほどこれまでの起業家の皆さんとと同じですね、あと好きなことをビジネスにする、というのは実は非常に大事かと思います。ニーズがあるとか、今後の有望分野であるとかのマーケティング的な視点で始めたものよりは、その事業や活動が大好きで何とか形にしたいと心から思えることを、使命感をもって始める、こういった考え方が一番大事で強いと思います。
八木:
はい、ほんとそうですね。
相園:
青臭い言い方ですが、私が事業を応援ないしは始めるときの物差しは「ワクワクするのか」なんですよね。でないと、売上が落ちた、競合が増えたとかの外部要因に振り回されるので。でもそのようなつらい場面でも自分の好きな事業であれば、ま、業績悪いけど好きだしな、と思える、それが継続になりますからね。
八木:
そうですね、私もやっぱり走るのが好きなんですよね。
相園:
さて1発目の挑戦が間近ですよね、確か10月28日だったかと。
八木:
はい、今回6人のケニア人ランナーを日本に連れて行きます。いい結果がでるようにがんばります。
相園:
がんばってください。で、もし入賞したら賞金の内訳を教えてくださいね。
伊藤:
相園さん!!!
相園:
失礼しました。では改めまして本日はどうもありがとうございました。

事務所へ帰る車の中

相園:
今日も面白い話が聞けたな。
伊藤:
はい、スポーツ関連はビジネスでありながら勝負の世界でもあるので面白いですよね。
相園:
そう、それと、友情の話は感動した。だからさっき言ったように決めたのだ。明日からは片っぱしから友情をはぐくみまくることにする。うーんそうだな、手始めに伊藤君からだな。
伊藤:
え、な、なんですか??
相園:
明日の朝から700メートル一緒に走るのだ。
伊藤:
い、いや、、遠慮しておきます。
相園:
ん?、、、そうか700メートルは君には長いか?じゃ、600メートルではどうだ?
伊藤:
(距離の問題じゃないんだけども、、、それも短かすぎるし)…さ、事務所の駐車場着きましたよ。友情の話はいったんこの辺で。
相園:
ん、もう着いたのか。そうだな、友情と距離については今夜タスカーを飲みながらじっくり話そう。
伊藤:
・・・・・

(おしまい)

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ケニアプロジェクトRDC KENYAメンバーとのトレーニングの模様

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チャンピオンズゲート

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スポンサーとの打ち合わせのあと