突撃インタビューよろしく 第2部 起業家特集 第4回(Organic Solutions Ltd編)そして最終回

2018年12月18日

ケニアで開発課題の解決にがんばっている企業や団体の生の声をお届けする企画。第2部はケニアで起業されている日本人のかたを特集。ケニアのような新興国で起業するには、山盛りの問題が次々と目の前に迫ってくるかと思われ、ちぎっては投げちぎっては投げといった対応をされてきたのではないか、その辺のところをケニア・ナッツ・カンパニーの創業者であり、Organic Solutions Ltdの代表の佐藤さんにお話を聞いた。

聞き手はJICAケニア事務所の相園賢治、録音は最後まで伊藤正芳。

佐藤 芳之さん
Organic Solutions Ltd, CEO
ケニア・ナッツ・カンパニー創業者

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Out of Africaブランド

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ケニア・ナッツ・カンパニー創業者佐藤さん

アフリカとの縁

相園:
本日はお忙しい中ありがとうございます。早速インタビューを始めたいと思いますが。
佐藤:
私の話は古いんだけどねえ。
相園:
いいえ、それが聞きたいのです。早速ですが、アフリカとの縁となりますとどこの国になるのでしょうか?
佐藤:
50年以上も前になりますがアフリカとの縁はガーナが最初です。
相園:
そうでしたか、それは最初からガーナを考えていたとか?
佐藤:
そうではないんですが、若い時からどこか珍しい国に行きたいとは思っていました。あと、ガーナ独立に貢献したエンクルマ氏の自叙伝とかは読んでいたので、刺激されていたのもあったかと思います。そしていろいろなつながりやバックアップがあって、ガーナの学生をやることになりました。
相園:
学生を?
佐藤:
そうです、1963年にガーナ大学院の学生になりました。実はそこで農業リサーチを学んだのですが、それがケニア・ナッツ創業につながっていますね。
相園:
そうですか、そしてその後ケニアに行かれたのですか?
佐藤:
そうですね、またそこでも違う縁があり、ケニアにある日本の大手繊維企業にて働き始めることになりました、確か1966年です。まあ、いろいろと経験させていただきましたよ。
相園:
その経験、なんとも大変そうな響きですが、その中でもこれは重要だな、みたいなものはありましたか?
佐藤:
そうですね、やはり一番は人事ですね。
相園:
人事?
佐藤:
そう、人事。日本人という異国の人が異国のケニア人を纏め上げないといけない。まあ、いろいろとありましたし、学びも多かったです。

成功の秘訣?

相園:
さて改めてですが、事業の成功の秘訣ってあるのですか?
伊藤:
相園さん、また何も考えてないそのまんまの質問じゃないですか?
相園:
んん、そうか、でもやはり一番知りたいところなので直球で伺っています。
佐藤:
その答えは簡単なことです。ここケニアに張り付いていたからですよ。50年もずっといるから。なのでどこの国でも同じだと思いますよ。
相園:
やはりそこですよね。
佐藤:
ご存知の通りケニアでもいっぱい良い事業をされている人はいます。ただ、生活の基盤をケニアにおかずにちょこちょこと出張ベースでケニアに来ている人にとって、それら事業自体が最後の段階では他人事になってしまうのではないでしょうか?
相園:
そうですね。佐藤さんの場合、ビジネスをスタートするといった意気込みで来られたのではなく、産業を興すといった気持ちで事業を立ち上げていますからね。ケニアのナッツ産業にかかわる人が昨日より今日は少しでも幸せになる、そこを考えると張り付きますよね、というか張り付きたくなりますね。私もそこにはすごく感じるものがあって、まだ新参者ですがケニアで会社を興し9年いる理由のひとつになっていますから。
佐藤:
そうなんです。そして今日本人の若者が起業相談に良く私のオフィスを訪れます。こういった自らアフリカに来たい、と思う若者は非常に大切ですね。

孤軍奮闘はつらすぎる

相園:
日本人の若者がよく相談にこられるということでしたが?
佐藤:
そうですよ。熱い思いをもってね。ただ、一人きりでがんばっちゃうんです
相園:
一人きり、本当にそうですね。佐藤さんがケニア・ナッツ創設したときはどうだったんですか?
佐藤:
もちろんがんばるのは当たり前なのですが、先ほども申しましたように、ケニアに産業を興そうと考えてました。もちろんそんなこと一人でできるわけはないのですが、その産業を興すという渦巻きの渦の中心になろうといつも考えていました。
相園:
具体的にはどういうことでしょうか?
佐藤:
ケニア・ナッツを始めるときには、実は日本の大手製菓子メーカーに話をつけに行ってるんでよね。それも社長と直談判したんです。
相園:
それはすごいですね、よく一個人の話を聞いてくれましたね。
佐藤:
それはその時の社長のすごいところと、ご縁もあったんだと思います。それともうひとつあってね、それは私がここケニアのマカダミアナッツを信じていたからということです。このナッツはすごいと衝撃を受けてましたからね。それとその当時の世界のナッツの動きを把握していて、どこのメーカーにプロモーションをかけても絶対みながほしがるはず、といった確信がありました。
相園:
なるほど。
佐藤:
かつての私のように資金力もない、加工技術もない、販売ルートもない、技術屋もいない、商品開発もできない、そういう状況ではやはり一緒に事業をやってくれる人を探すのは重要です。
相園:
はい、まさしくそこが重要なポイントで、若い日本人起業家をひとりにしてはいけない、というところですね。
佐藤:
本当にそうで、みんな孤軍奮闘している。ところがいくらいいアイディアや事業計画でも、事業を開始するとみるみるお金が飛んでいく。自分のこれまで貯めた貯金がなくなった段階で泣く泣く日本に帰ってしまう、ちょっと悲しいですよね。これまでそういう若い日本の起業家を何人も見てきました。そのような現状に対して私のような立場の人間やまたJICAさんのようなところも含めて日本人の若い起業家に対して何らかの支援をしないといけないのではと痛切に感じます。

グローバルスタンダード

相園:
なるほど。
佐藤:
あとケニアという国は、英語圏なので、世界各国からいっぱい若者が起業や職探しにきます。そういった場所に母国語ではない言葉を操る日本人が何かをするには、やはり力をつけて来ないといけないでしょう。いわゆる競争です、最近はさらにその傾向が強いのではと感じます。
相園:
具体的にはどのような力が必要でしょう?
佐藤:
ビジネスを実際にやるには、なかなか計画通りには行かないことが多く、それを切り抜けていくタフさが求められます。一方で人とのつながりから糸口が見えて問題がスムーズに解決される場合もあります。そのため自分たちの事業を取り巻く現状を冷静に判断する力が求められると思います。それは日々勉強をするということを意味し、終わりのない自己開発というかもしれませんね。

ひとことメッセージ

相園:
さていつも皆さんに聞いている最後の質問になりますが、ケニアやアフリカで起業を考えている日本人のみなさんに何かメッセージなどがあれば。
佐藤:
私の若い時がそうだったんですが、どうせやるのならひとつの産業を興すぐらいの気持ちでやろうといった気概が必要ではないでしょうか?その方がスケールの大きな仕事ができて楽しいと思います。また起業家の人達を支援する側も、ビジネスコンテストやセミナーまたは研修などをやったから終わりではなく、それぞれの事業が開花するまで見届けるバックアップ体制を構築する必要があると思います。ケニアのインドコミュニティはそういった仕組みがあり、若者の起業家を大事にしている印象があります。相園さんみたいな人がもっとがんばらないといけないね。
相園:
うっ、は、はい。がんばらせていただきます、な、伊藤君。
伊藤:
は、はい。がんばらせていただきます。
相園:
本日は佐藤さんの起業のお話だけではなく、日本人起業家をどう応援するのかの話まで聞かせていただき、大変勉強になりました。
佐藤:
少しでもお役に立てたのならよかったです。ところで相園さんはいくつなの?
相園:
51歳のピチピチの働き盛りです。
佐藤:
そう、自分は79歳でもうすぐ80歳に手が届こうとしているの。ところがね、もう80歳になろうとしているのに、やりたいことがいっぱいあって、毎日ワクワクしてる。どうしようか。
相園:
それは困りましたね。もうそのワクワク感はだれも止められないので突っ切るしかありません。相園と伊藤もついていきますので突っ切りましょう。本日はどうもありがとうございました。

最後のインタビューを終えて

伊藤:
それにしても本当に最終回になってしまいましたね。
相園:
うん、ごくろうさん。
伊藤:
あっさり、簡単ですね。
相園:
よし、じゃ、記念に握手でもするか。
(硬い握手をする)
相園:
んん・・・なんかじとっとしてる。
伊藤:
汗ばんでるのは相園さんでしょっ!!もう、全然締まらないじゃないですか。
相園:
わかった、じゃ、ひとつとびきりいいことを教えて終わりにする。そうだな、伊藤君は世界で一番美しい言葉って何だか知ってるか?
伊藤:
世界で・・・なんでしょうね。
相園:
こういう場面で使う言葉がある。
伊藤:
一番美しい?・・・
相園:
そう、覚えておくといい。
伊藤:
いったい何なんでしょう?
相園:
世界で一番美しい言葉、それは「ありがとう」という我々日本人の言葉だ。
伊藤:
・・・
相園:
この2年間つきあってくれてありがとう・・・それじゃな。
伊藤:
・・・はい、忘れずに覚えておきます、こちらこそ2年間ありがとうございました・・・またいつか。
相園:
・・・クリスマスが近いな・・・
伊藤:
はい。

(おしまい)

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録音機輔佐

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友情の証の硬い握手