モリンガで栄養改善と収入向上支援

氏名:衣川 英之
隊次:平成21年3次隊
職種:モリンガ普及員
任地:ニャンザ州ボンド県
配属先:ボンド県保健事務所
出身地:大阪府

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小児科病棟の様子。1台のベッドに子ども3人、付き添いの母3人、合計6人で1台のベッドをシェアをしている。

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病院内で栽培をはじめたモリンガを収穫中の同僚。
1年が過ぎ収穫できるまでに。現在、給食にも利用中。

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そのモリンガと牛乳を混ぜて栄養失調の子どもたちに栄養補給中。

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商品化に成功したモリンガ石けん、モリンガ茶、シュシュ。ナイロビ市内やJICA事務所で好評発売中。

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草むらに捨てられていた赤ちゃんに、粉ミルクとモリンガを混ぜ、授乳中の隊員。

私の配属先であるボンド保健事務所はナイロビより西400Km、ビクトリア湖沿いに位置するボンド県病院の中にあります。私はそこでエイズの予防啓発をはじめ病気の予防や健康や栄養に関する活動をしています。今回はその中でも栄養に関する活動の話をさせていただきます。

去年の夏頃、入院する子どもたちが急に増えました。大人用のベッド1台に3人の子どもたちが寝ていました。ベッドが足りません。主な病気はマラリア、下痢、脱水、貧血、火傷などでした。その中に栄養失調の子どもたちがいました。アフリカ諸国の中でも、わりと豊かなケニアで、TVで見るような、栄養失調の子どもたちを目の当たりにし、すごく衝撃を受けました。理由を聞くと、乾期で貧しくて食べるものがない子、母子感染でHIV陽性で産まれて来た子、結核に罹っている子、ネグレクトの子など、理由はさまざまでした。そこで栄養サポートの必要性を感じ、医師や看護師と相談して栄養指導をはじめました。ローカルな野菜や栄養価の高い地元の食材を使用して、入院中の子どもたちに食べてもらい、調理方法や栄養価を母親に指導しました。

ちょうどその頃、近くで開催された農業ショーに行く機会があり、そこで「モリンガ」という樹に出会いました。モリンガって、何?モリンガは、アフリカ、インド、フィリピンなどの熱帯、亜熱帯地方に自生する植物で、正式名称は、「モリンガ」もしくは「モリンガ・オレイフェラ」といいます。特定の部位のみでなく、モリンガは全ての部位「葉」「実」、「種」、「茎」、「根」、「花」に利用価値があります。栄養素の豊富なことといったら、
カリウム:牛乳の63倍 鉄分:ほうれん草の31倍 ビタミンA:ほうれん草の13倍 ビタミンB1:豚肉の4倍 ビタミンB2:マイワシの50倍 ビタミンB3:ピーナツの50倍 ビタミンE:菜種油の6倍 カルシウム:牛乳の20倍 アミノ酸:黒酢の2倍
まさに救世主の樹です。

ケニアでも自生はしていますが、その栄養価はあまり知られておらず、有効利用されていませんでした。そこで、モリンガの葉をパウダーにして、牛乳に混ぜて入院中の栄養失調の子どもたちに飲ませたり、病院内の荒れ地を耕し種を植え、モリンガガーデンを作りました。また、コミニティーやグループに出かけて、モリンガについてレクチャーをしたり、モリンガの種や苗を配って植えて歩き、モリンガの普及に努めました。気づくと「モリンガさん」と呼ばれるようになっていました。

病院の活動と並行してあるサポートグループの支援もしていました。そのグループはビーズ細工で収入向上に取り組んでいました。しかし、全く売れず悲鳴をあげていました。そこで計画を変更して、モリンガを使って商品開発に取り組みました。そうして何度も試行錯誤を繰り返し、ようやく「モリンガ石けんやモリンガ茶」の開発に成功し、商品化にこぎつけました。そして、それらはケニアの新しい名物として展示販売やナイロビ市内で販売しはじめました。おかげさまで飛ぶように売れております。

こうして、モリンガがたくさんの出会いをもたらしてくれました。まもなく帰国となりますが、病院内のモリンガガーデンの木々たちは大きく成長し、今では病院の給食として、患者さんに提供できるまでになりました。なかなか急に食生活を変えることは難しいですが、モリンガの未知なるパワーを実感してもらい、小さなことからコツコツと栄養改善ができればと願っております。