ミリアム・ウェレ氏とケニアのエイズ教育充実に向けたワークショップを開催!

氏名:加藤 淳史
隊次:平成23年度1次隊
職種:エイズ対策
任地:ニャンザ州ニャミラ県
配属先:ニャミラ県保健事務所
出身地:東京都

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ウェレさん講演

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モデル授業

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参加者集合写真

今年6月、第8回HAPA(注1)において、私の任地であるケニア西部ニャミラにて野口英世アフリカ賞受賞者であるミリアム・ウェレ博士とJICA「ニャンザ州保健マネジメント強化」プロジェクトの杉下智彦専門家を講師としてお招きして、エイズ教育充実に向けたワークショップを開催しました。

これまでの活動を通してケニアにおけるユースはHIV感染リスクの高い世代であることを感じてきました。HIV予防策は「ABCアプローチ(Abstain・Be faithful・use Condom)」が広く知られていますが、ケニアの高校においては宗教上の理由からこのうち「Abstain(禁欲)」のみに焦点を当てた授業が行われています。一方、Abstainの重要性こそ理解しているものの、生徒たちの性行動はとても活発です。ケニアのエイズ対策隊員7名がケニア西部ニャンザ州の7県において14歳から18歳の学生663名を対象に調査したところ、52%の生徒が既にセックスの経験があり、その内毎回コンドームを使用すると回答した生徒はわずか23%でした。生徒たちの現実に即していないエイズ教育の結果、ユースはHIV感染のリスクにさらされているのです。エイズ予防を生徒たちの生きる力の一環として伝える「ライフスキル」という授業が週1コマ設定されていますが、訓練を受けていない先生により実施されていることが多いようです。

このような状況は隊員個々のレベルで取り組み成果を残すには限界があるため、私が代表となった第8回HAPAでは「エイズ教育に革新を!青年の生きる力を支える教育へ」と題した二日間のワークショップをエイズ対策隊員とその同僚を対象に開催することにしました。

講師にはミリアム・ウェレ博士と杉下智彦専門家を招き、保健省や教育省から県レベルの担当者、学校の先生、NGOなど8つの県の様々な分野から合計38名が参加しました。幅広い立場の人たちが一つのテーブルで議論する場を作れたことは、様々な立場の人と「パートナー」として関わるボランティアの強みだったのではないかと思います。

初日は最初に各県からエイズ教育にどのような問題があるのかを報告し、隊員で行なった保健・教育関係者への意識調査、高校生の性行動に関するアンケート調査の結果を発表しました。これらを通じて現状を理解してもらった上で、ウェレ博士が「アフリカにおいてユースが抱えるHIV/AIDSの課題」についてセクシュアリティーのマネジメントをテーマに講演を行いました。エイズを含む様々な性の問題を生徒自身が適切に対処できるような授業、そういう意味でのライフスキル教育をしなければならないというのが彼女の主張でした。午後は市内の高校へ移動し、70名の女子生徒に対しウジマ財団(注2)のウィニー氏よるライフスキルのモデル授業が行われました。生徒たちに将来像を次々と聞き、そこから彼女たちに人生で何が大事かを諭すこと、つまりセックスやエイズが自分の人生にどのような影響を与えるか真剣に考えさせる授業でした。

2日目はグループに分かれ「HIV/AIDSをどのように教えるか」というテーマで話し合い、その内容をもとに最後に県ごとで今後の行動計画を作り締めくくりました。

ワークショップを終えて印象に残ったのは、おとなしそうだった生徒たちが、モデル授業が始まるやいなや、目を輝かせながらたくさん手を挙げ、熱心にノートを取っていたことです。プログラムについても、ダンスを取り入れた保健推進やタブー視されているマスターベーションを取り扱うなど非常にユニークな内容であったため、立場を越えた活発な議論と意見交換がなされ、ぜひまた開催してほしいとの声もありました。

また、行動計画の中には、今後政策的に各県にモデル校を設定し、ライフスキル教育の充実を図るといったものもありました。今回のワークショップは全体の調整・ニャミラでの調整などの事前準備はかなりの時間を割いて行われましたが、結果的に有意義な時間を作ることが出来たことに充実感を感じています。このワークショップが隊員たちの自己満足で終わらないよう、引き続きフォローアップは続けて行きたいと思います。

(注1)HAPA(HIV/AIDS Volunteers Progress Assembly)は、エイズ対策関連隊員による任地でのより効率的かつ効果的な活動につながる企画を、隊員が主体的に実施することを目的として、2010年8月に設立されました。これまでにJICA「エイズ対策強化」プロジェクト専門家との意見交換会・視聴覚教材共同制作等の活動が行われています。

(注2)ウジマ財団は、ウェレ博士が代表を務めるケニアの慈善団体。「ウジマ」とは、スワヒリ語で良質な生活を意味する。ウジマ財団は、HIV/AIDS及びマラリアの対策を含む保健の向上を通じて若年層の自己啓発を行っている。