私たちの地元は私たちの手で守る!

氏名:前川 恵理子
隊次:平成23年度2次隊
職種:村落開発普及員
任地:コースト州タイタ県ウンダニ
配属先:タイタ県ウンダニ ジェンダー社会開発事務所
出身県:三重県

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村の会議:住民に向けてグループ活動のノウハウを伝えるオフィサー

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高齢者への年金支給調査:何日もかけて一件一件調査にまわる。

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タウンで加工食品販売:地元で収穫したバナナを使ったお菓子を作る女性グループ。

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炭作り:収穫後のサトウキビの廃材を使って炭を作る。

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炭のテスト:いつも通りがかりの住民が集まってくる。毎回出来上がった炭を使って、皆で何を料理して食べるかは大きな議題。

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国際識字デー:炭の作り方、植林の方法について説明をするメンバー

私が生活しているのはケニアの南東部に位置する、タイタ県ウンダニです。タイタ県はゾウやシマウマなど多くの野生動物が生息するツアボ国立公園に囲まれた丘陵に位置します。そこはタイタヒルと呼ばれ、大きな森には古くから生息するタイタ特有の鳥や植物が数多く存在します。このことから、生態系を研究する人々が世界中からやってくる地帯でもあります。なんと言ってもここタイタの魅力は緑豊かな景色と、人懐っこいタイタ族の人々ではないでしょうか。

私はここタイタ県のジェンダー社会開発事務所で仕事をしています。赴任して1年が過ぎ、残りの任期も9カ月を切りました。事務所の役割は、住民らが形成するグループ(自助組織)の支援、女性グループを対象とした小規模融資、コミュニティプロジェクト交付金支給等、住民のグループ活動に関わる事業全般です。ここケニアは住民のグループ活動が非常に活発で、農業や小規模ビジネスを行うグループ、地域の灌漑設備を整備するグループ等さまざまな活動を行うグループが存在します。
しかし、我々の事務所はなんとこれだけではなく、高齢者の年金受給や障害者支援窓口の役割も果たしており、地域の福祉全体を担っています。

コミュニティプロジェクト交付金支給対象のグループを選定する、ある会議でのことです。
「このグループは絶対だめだ!」と上司。
「なぜだめなの?」と、私。
「グループで貯蓄していたお金でみんな平等に一人一匹山羊を買おう。と言っていたらしいんだが、リーダーが黙って二匹買っていたらしい。家に隠していたみたいだ!」
「あははは。」と、私は笑ってしまいました。だってなんだか平和だなあ、と思ったから。
「全く笑い事じゃない。今、村のチーフと一緒に仲介に入っているけれど大変!」
と、このような感じでグループに問題が発生したときの仲介役を果たすのも我々事務所の仕事です。

このような事務所で私が力を入れている活動の一つ、植林グループの支援についてお話し紹介したいと思います。
ここタイタ県は植林活動を行うグループが数多く存在しています。というのも、タイタでは農地開拓や薪の確保など生活の為の森林伐採が急激に進んでいるからです。また、「木を切れば雨季がやってくる」や「木を切れば家畜が病気にならない」などといった誤った迷信や認識を持つ住民も未だ数多く存在しています。こういった状況を改善すべく、植林活動を行うグループのリーダーらは村の会議に出かけて、住民たちに森林伐採による弊害や植林方法などを教えています。しかし、会議では村のおばちゃん達からこんな声がよく挙がります。
「そんなこといっても私たちはねえ、毎日生きるためには薪が必要なんだから!」と。
これはごもっともな意見です。特に山の入り組んだ地域ではほとんどの世帯が、伝統的な三つ石のかまどを使用していて、薪を使ってご飯を作ります。植林グループの人たちは、「生活するためには仕方のないことは理解している。私達も住民だから。でも努力が必要だと思う。私達の多くは農業で収入を得ているから、将来木が無くなって困るのは私達だ。今すぐでなくていい、少しずつでいいから木を切ることから離れていければいい。」と良く話しています。

現在、そんな彼らと私が力を入れている活動は、農業廃材からつくる炭の普及です。この技術は以前ケニアで活動していた先輩隊員から学んだものです。私達は、収穫後畑にそのまま放置されるサトウキビの廃材やメイズの芯、マカダミアの殻などから炭を作り、薪の使用を減らすことができるのでは、と考えました。また、ケニアでは薪を集めるのは小さな子どもや女性の仕事です。この炭を使用することにより森林伐採を防ぐと同時に、薪を焚く時に大量発生する煙による健康への害を減らすことができると考えています。活動当初、私達が力を入れていた事は、炭の認知度向上で、村の会議で炭や植林に関する説明を行ったり、地域のイベント等でデモンストレーションを行ったりしていました。炭について話すグループのメンバーの顔は真剣そのものです。まるで自分達が発明したかのように得意気に話す彼らの姿は、本当にたくましい。そんな彼らは既にこのアイディアを自分達のものにしているようです。そんな彼らの姿は、まさに地域の人たちが地域を良くする為に、地域の人たちを引っ張っていっているようだと常に実感しています。
そんな地道な努力により、今では道を歩いていると「ねえねえ、炭作っている人でしょ?今度私のグループにも教えに来て!私達もやりたい!」といって声を掛けてくれる人達が増えました。また、他省の事務所や地元企業の人達が活動に協力してくれるようにもなりました。

現在私たちの目標は、この炭の技術を住民が販売できるビジネスへと成長させることです。住民がビジネスで得た利益は炭の普及活動や植林活動に使われる計画です。この目標に向けて、私はマーケットの見つけ方、値段のつけ方、帳簿の付け方や広報の仕方について、グループのメンバーと話し合いながら教えています。
私がいつも「どうしたらいいんだろう…」とオフィスで悩んでいると、オフィサーから「あなたが考えるんじゃなくて、メンバーに聞いてみなさい。」と良く言われます。「あなたはヒントや情報を与えるだけでいい。どうせ人が考えた方法なんてグループの活動として長続きしない」とも言われました。最初はなんだか不安でもどかしい思いばかりしていましたが、オフィサーの言った通り、メンバーから面白いアイディアが出てくる出てくる。いつもそうです。
私がこの1年で学んだことは、どうすれば売れるのか、どうすればタイタの人たちの心を掴むのかということです。答えを持っているのは彼ら自身だということが良くわかりました。そしてこれからの道を切り開いていくのも彼らです。

私は自分の任地が大好きです。タイタの素敵な景色がずっとこのままであればいいのに、と心から願います。その為に残りの任期、彼らのサポートを陰ながら全力で行いたいと思います。