乾燥地での森林保全と農民の収入向上を目指す

氏名:望月 彩葉
隊次:平成25年度1次隊
職種:森林経営
任地:キトゥイ
配属先:ケニア森林公社
出身県:神奈川県出身

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村人たちとメリア・ボルケンサイを囲んで(写真中央が望月さん)

ナイロビから車で3時間ほど離れたケニア東部のキトゥイ(Kitui)で活動する望月彩葉さんはケニア森林公社(Kenya Forest Service:KFS)に配属され、現在は主に「メリア・ボルケンサイの普及」、「改良かまどの普及」及び「地元の小学校への環境教育」を行っています。以下、インタビューでは任地での活動内容と地元の農民グループ(FFS)への支援について話してくれました。

—望月さんが普及を進めているメリア・ボルケンサイとはどんなものですか?

メリア・ボルケンサイは乾燥地でもよく育つ有用樹木で、慢性的な乾燥に悩まされている同地域で森林保全と木材としての活用が期待できます。栽培が難しいので初めは栽培方法を学ばなければいけませんが、うまく育てば約10年後には高級木材として高値で売ることができるので地元農民にとって大きな収入源となります。植栽にあたっては、例えば「子供の大学の学費をまかなうために今のうちに植えておきましょう!」と提案しています。

現状ではキツイ県内、キツイタウンから50Km圏内の地元農民を中心に普及活動を行っていて、主に苗木の生産方法を指導しています。また植林地のデモ・プロットを作るべく、近日中に100本ほどメリア・ボルケンサイを植えることになっています。

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改良かまど(鍋1つ用)

—「改良かまど」とその普及活動について教えてください

改良かまどとは燃焼効率の良いかまどのことで、現地では「JIKO(ジーコ)」と呼ばれています。このかまどは従来のものと比べて薪の使用量を抑えることができるため環境保全にも役立ち、煙による人体への健康被害も少なくすることができます。また、調理時間を短縮することができるため、今では多くの家庭に普及しています。

私は大きさの異なる二種類のかまどの作り方を教えていて、鍋1つ用の小さなかまど(写真2)と鍋が3つ置ける「KAMADO JIKO」の普及活動を行っています。1つ用の改良かまどでは薪の使用量を従来の50%、3つ用では最大75%削減できるというデータもあります。私は農民グループ(Farmers Field School:FFS)を対象に、実際に彼らと一緒にかまどを作りながら作成方法を教え、その後、各家庭に1つずつ各自で作ってもらうようにしています。

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普段はここで授業が行われています

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みんなの大好きなダンス

—農民グループ(FFS)とはどのような活動を行うグループでしょうか?

FFSとはFarmers Field Schoolの略称で、農民たちが育林や農業技術を勉強する学校のことです。この学校に参加して知識を学び、植林活動などを行っている農民グループをFFSグループと呼んでいます。週に一回、青空の下で授業が行われています。プログラムには「苗木の育て方・植え方・手入れ方法」「農作物の栽培方法」「家畜の飼育方法」「グループマネジメント」「小規模ビジネスマネジメント」などがあり、農民が育林や農業を通じて生活を向上させていくための技術を学んでいます。

(FFSの時間割の例)

9:00〜 始業のお祈り、点呼
9:05〜 一日の流れの確認
9:10〜 AESA Talking(Agro Ecosystem Analysis、圃場での比較実験の計測と観察。果樹、木材用樹木などが対象)
10:10〜 AESA Processing(計測・観察結果のまとめ)
10:40〜 AESA Presentation(グループ全体へプレゼンテーション)
11:10〜 Group Dynamics(お楽しみ時間。ダンスをしたり、チャイを飲んだりする)
11:30〜 Today's Topic(ファシリテーター、または外部からの講師によるレクチャー、テーマは週によって異なる)
12:30〜 一日の振り返り
12:35〜 翌週の内容確認
12:45〜 連絡事項の共有
12:50〜 点呼、終業のお祈り

FFSは、圃場での実験や観察を通じて、自ら考える力を養うということを特徴としています。色々な方法を試してみて、自分たちの土地に最適なやり方を見つけていくのです。また、プログラム作りの最初の段階では、まず時計を置いて各カリキュラムを時間割通りに進めることが指導されています。ただ、勉強ばかりでは退屈なので、休憩時間のティータイムや、彼らの大好きなダンスの時間も時間割に盛り込まれています。

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卒業生たち

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卒業証書の授与

そしてつい先日、この学校の卒業式が行われました。卒業生にはそれぞれ卒業証書が授与され、複数のグループから一年間の集大成としてプレゼンテーションがありました。この教室で学んだ生徒たちからは、「農民エキスパートとしての称号を貰えてうれしい」「(授業を通じて)虫には害虫だけでなく有用な虫もいるということを学んだ」「今では毎日畑をチェックしている」というように、教室で学んだ内容だけでなく「新しい出会いやご近所さんとの絆が深まったことにより、ソーシャルライフが充実した」という声も聞かれました。また、具体的な成果として「ローンの借入先などとつながることができるようになった」というコメントもありました。

これまで、農民たちは生活のために木を伐採しても、新たな木を植える方法が分からず、森林は減少し続けていました。しかし、FFSを卒業し植林に必要な知識を習得することで、自主的に森林管理を行うことができるようになりました。このように、その地域に住む人々が森林管理のための正しい知識を持つことが、持続的な森林保全のためには非常に大切なのです。

キトゥイのFFSグループはカンバ族が多く、望月さんはカンバの部族語で「いつもハッピーな女の子」という意味の「ムタヌ(Mutanu)」という愛称で地元の農民たちに親しまれています。

筆者が任地を訪ねた際も英語だけでなく現地の言葉で住民たちとコミュニケーションを図り、現地の生活にうまく溶け込んでいる姿がとても印象的でした。任期満了までの残り8ヶ月、望月さんは今日もムタヌとして任地の課題解決に前向きに取り組んでいます。