光ファイバ通信技術者の育成を目指して

氏名:首藤晃一
隊次:2016年度4次隊
職種:電子工学
任地:ナイロビ
配属先:ケニア・マルチメディア大学
出身県:神奈川県

私はナイロビの中心部から南西方向に10kmほど離れたところにあるケニア・マルチメディア大学の工学部・電気通信学科において、光ファイバ通信に関する講義内容の改善と実用的な教育の実現を目標に、学士課程と修士課程の学生に光ファイバ通信技術を教えています。約70年前に当時の電気通信省の研修所として設立された歴史のある学校ですが、総合大学に昇格したのは2013年と新しく、教員不足が課題となっており、また近年ケニアにおいても光通信システムが急速に普及し、技術者の養成が急務であることもボランティア要請の背景にあると思います。

活動内容は、学士課程の学生に対する講義の実施と実習案の作成、それと修士課程の学生に対する短期コース講義の実施です。学士課程の学生に対する講義については光通信技術者ならば知っておいて欲しいと思う基本的な技術内容を追加し、最新技術として私自身が研究開発に従事していた光加入者システムを加え講義を行っています。講義と並行して行う実習の実施案の作成については、実習に必要な機材リストを作成し大学が持っていない機材を洗い出し、特に重要なものをJICAに申請し提供してもらいました。提供された機材が有効かつ継続的に使われるように、機材を用いた実習の手引書を作成し、実習担当の技師へ引継ぎを行いました。

ボランティア募集時の要請では修士課程の学生への支援は可能であればということでしたが、学科長との会話の中で修士課程に対する支援の要望が高いことを知り、また学士課程への支援の1つとして計画していた新しい講義の提案ができなかったこともあり、光ファイバ通信の分野で現在活発に研究開発が行われているデジタルコヒーレント光通信(注1)についての講義を修士課程学生に行うことを提案しました。私自身この技術についての経験がなく準備に時間を要するため、4回程度の短期コース講義として実施することにしました。

講義では図面を使い丁寧な説明を心掛けています。大学で講義をした経験は無く、しかも海外でということで不安も有りましたが、定期的に行う理解度確認試験と期末試験の結果から講義内容をよく理解している学生も多くいることが分かり安心しました。

講師組合のストライキで予定通り講義が出来なかったり、カウンタパートが定年で赴任半年後から不在になったりするなど想定外のことは有りますが、全て不可抗力と割り切り、その都度、学科長などに相談しながら対応しています。ボランティア活動の他に、同僚や学生とのコミュニケーションを深めるため、大学の卒業式にガウンを着せてもらい参加したり、学生と一緒に大学の専用バスで13時間かけてモンバサへ工場見学に行ったり、大学スタッフの運動会に参加するなど貴重な体験もさせてもらっています。

ある調査報告によると、ケニアは東アフリカ共同体の中で光通信が最も普及していて大都市間を結ぶ長距離中継回線やナイロビの市内中継線の光化は終了し、通信会社のビルからお客様宅までを光ファイバでつなぐFTTH(Fiber To The Home)の工事も始まっているとのことです。学生の職場見学に同行し見学したモンバサの光海底ケーブルシステムの陸揚げ局には、デジタルコヒーレント光通信技術を使った最新のシステムが導入されていました。ケニアでも普及しているスマートフォンなどモバイル通信サービスの中継回線も光通信で構成されており、光通信システムの設計や運用保守を行う技術者の需要は少なからずあると思います。私の講義を聞いた学生の中から中核となる光通信技術者が出てくれればと思っています。

(注1)デジタルコヒーレント光通信。従来のレーザダイオードなどの光源をオン・オフして信号を送る方法に代わり開発された光通信方式。光の波としての性質を使い光の振幅や周波数や位相を変えることで信号を送るコヒーレント光通信技術と、光ファイバで生じる信号の劣化をデジタルフィルタなどで補償する高速デジタル信号処理技術の2つの組み合わせで実現されている。

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講義風景

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JICAから提供された機材を使った実習手引書の同僚技師への引継ぎ

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提供機材を使った実習風景

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ガウンを着て卒業式に参加