フェアトレードは、『夢を叶えるお手伝い』

【写真】宇津孝子さん (伊那市高遠在住)特定非営利活動法人 フリーキッズ・ヴィレッジ、ファミリーホーム「うずまきファミリー」代表 
宇津孝子さん (伊那市高遠在住)

 6月29日(日)、JICA駒ヶ根で「信州グローバルセミナー2014」を開催します。このセミナーで、セッション2の講座C「タイの子どもたちとの交流を通したフェアトレード」の講師、(特活)フリーキッズ・ヴィレッジ代表の宇津孝子さんにお話を伺いました。フリーキッズ・ヴィレッジでは、7世代先までの子どもたちが持続可能な生活が送れるようにと、子どもたちのための様々な活動が行われています。その一つがタイのバーン・トー・ファンとのフェアトレードです。

フェアトレードは、『夢を叶えるお手伝い』

バーン・トー・ファンのナートさんとユパさん

  宇津さんは、11年前、まだ小さかった息子さんと、孤児や難民の子どもたちを受け入れているタイの中部の郡、サンクラブリーにある「バン・トー・ファン(夢を織る家)」を訪れました。当時はまだ発展途上にあったタイで、日本より恵まれているとは言えない環境で、お父さん・お母さんとして親しまれているご夫婦のナートさんとユパさんが、十分な資金がない中、孤児や難民の子どもたちを受け入れていることに感銘を受けました。彼らは、、村人たちが仕事のために家族から離れ、家族崩壊を起こさないよう、“工場をつくらない”をポリシーとし、村人や難民の自立支援のため、草木染の洋服作りの指導とその仕事の依頼もしていました。家で育児をしながら仕事ができるよう、村の一軒一軒を訪問している姿を見た宇津さは、資金なしでも、やりたい、やらせてもらいたい、という気があればできるんだ、と強く感じました。
 
  実は宇津さんは息子さんがまだ小さいころに旦那さんを亡くされており、息子さんと相談して、二人では寂しいから大家族になりたいね、でも大家族ってどんなもの?、まずは体験してみよう、ということでバーン・トー・ファンを訪問。ナートさんご夫婦との出会いが宇津さんの現在の活動のきっかけなり、今でもパートナーとして交流を続けています。
バーン・トー・ファンの服はすべて手作業。それらを日本で販売していますが、手間暇がかかるため、どうしても値段は下げられず、市場では理解されにくいとも。しかし、支払った代金が、タイの子どもたちの学費や医療費になり、自立支援になる。この貴重なお金をナートさんたちが活用してくれる。宇津さんは、グローバルセミナーの参加者の皆さんに、フェア・トレード商品を買うことは、おカネとモノの交換ではなく、誰かの夢を叶えるためのお手伝いをすることであり、お金の使い方を考えるきっかけになるということを知って欲しいと思っています。
 

ファミリーホーム「うずまきファミリー」の立ち上げ。

【画像】 これまで、バーン・トー・ファンの訪問を通じて途上国の子どもたちや、フリーキッズ・ヴィレッジでの海外からの山村留学生の受け入れなど、伊那から世界も見てきた宇津さん。活動の一環として、この10年間、不登校になった日本の子どもたち、のべ50人以上と暮らしてきました。そして、5年前に里親となり、家庭の養育環境が整わず、家族と暮らせない子どもたちとも暮らし始めました。日本では、虐待を受けたり親と一緒に暮らせない子どもたちの9割は施設で暮らしており、家はなく、成人して施設を出ると戻るところはありません。選挙権がなく訴えることのできない彼らの現実はあまり注目されません。宇津さんは、豊かであるはずの日本に、やるべきことがあったと気づき、昨年、ファミリーホーム「うずまきファミリー」を立ち上げました。現在、ご自身の息子さんも含め、7人の子どもたちと大家族の生活をしています。
 子どもたちを引き取って終わり、ではなく、彼らが家族という環境に育ち、独立してから自らの家族を築く、という良い連鎖を作り出していくことが必要だともおっしゃっていました。

信州グローバルセミナー2014参加者へのメッセージ

 宇津さんは、同じ思いを持って活動をしているバーン・トー・ファンから学んだことを、子どもたちや、今回のセミナー参加者にも伝えたい、と。貧しいタイの農村で、国からの補助金はゼロ、それでも彼らはあきらめない。「こうじゃなきゃだめ、これがないからできない」と思わず、ビジョンがあればサポートもつき、実現できるんだよ、ということを知ってもらいたいと思っています。

トップの写真は、一番年下の里子、ゆーちゃんと。笑顔が本当に素敵な母と子の姿でした。