農村保健研修センターは、厚生省(現・厚生労働省)、農林水産省の指導のもとに、昭和50年に農山村地域における、生活、保健、医療、福祉の関係に携わる方々の再教育機関として開設された施設で、昭和52年から研修事業を開始しています。宿泊を伴う研修施設で、JICAの青年研修も実施しており、受け入れ業務全般を担っておられる課長の鈴木清泰さんに伺いました。
一財)農村保健研修センター 課長
鈴木 清泰(すずき きよやす)さん
2008年からJICA駒ヶ根の青年研修として、これまで、グアテマラ、インドネシア、スリランカ、パキスタン、ヴェトナム、中国、仏語圏など8カ国から約130名の研修員を受け入れてきました。彼らと直接接するなかで、イスラム教圏国などに対して抱いてきた概念がすっかり変わりました。期間中一緒にいることで見えてくる誠実さ、あいさつ程度の会話からでも十分人柄や文化が見えます。たとえば研修中はお祈りをしない、時間に遅れないなど。こちらがいくら気持ちを入れて対処しても、研修員自身が真剣に取り組まないとよい研修にはなりませんが、これまでそうでないことは一度もありませんでした。
研修員は「自国の保健医療の改善の為に来ているんだ」という強い気持ちで来ているという気概を感じて、当然こちらも一生懸命になります。研修員からは「お父さん」と慕われることもあります。
インドネシアの研修員と鈴木さん
イスラム教国の研修員が研修中に子供が亡くなり、急きょ帰国を勧めたが、宗教上24時間以内に埋葬しなければならないため当然、葬式にも立ち会うことができない、ということがありました。結果、研修員から「帰国せず、最後まで研修を受ける」と言われ、感じ入りましたね。
また、うれしいことは、今でも過去の研修員から自分の誕生日を祝うメッセージをいただくことですね。
「全村健康管理」を推進している佐久穂町が提案自治体、そして農村保健研修センターが実施団体であるJICAの草の根技術協力事業(スリランカにおける高齢者ケア—政策プラン・モデル形成プロジェクト)が間もなく開始予定です。この事業は、昨年訪れたスリランカの研修員たちが力を合わせて自ら立案したものであり、研修員自らがカウンターパートとして核になるというJICAでは初めてのケースになることでしょう。この事業を通して日本とスリランカとの友好関係がさらに進展してくれることを望んでいます。
私は今58歳ですが、この事業を成功させて退職の日を迎えられればこの上ない喜びです。
公募の内容を見るとハードルが高いイメージですが、JICA駒ヶ根がしっかりとサポートしてくれるので、長野県の関心のある団体の皆さんには、どんどんチャレンジしてほしいと思います。