青年海外協力隊50周年記念特集  〜世界と地域を結ぶ。グローカルな協力隊員50名 リレーインタビュー 〜 vol.3 森田 真弓 さん

【写真】森田 真弓さん (旧姓:小野寺)平成18年度3次隊 職種:青少年活動 派遣国:メキシコ 出身:宮城県
森田 真弓さん (旧姓:小野寺)

今回は、1回目の森下ともみさんとからのご紹介で森田真弓さん。来年秋に開校を目指している私立の小学校「学校法人自然学園 清内路子どもの森小学校開校準備室」(以下子どもの森小学校※下記リンク参照)のスタッフとして奮闘中です。

人とつながり、阿智村へ 

  こどもの森小学校スタッフとしてフリースクールやセカンドスクール(4月開始)に携わっています。3.11の後、より田舎で自然農ができる場所を探して村のIターン者向け説明会に参加。多くの出会いがあった阿智村へ東京から移住しました。
 その後小学校教諭免許取得の勉強中、子ども、お年寄り、障がい者、外国人など多様な人たちと交流したり、自分たちで食べるものを作ったり、パーマカルチャー的な学校を学校を作りたいと思うようになり、こどもの森小学校に関わることに。
村の有志で立ち上げた「福島に学びつながる会」事務局メンバーとしても、昨年「第1回福島つながるフェス」を開催。集まった資金で伊達市の中学生を村に呼び、夏キャンプを実施しました。3月には第2回目のフェスを行い、今年も福島の子どもたちを呼ぶ予定です。

生きていることを実感できる日々を求め、協力隊へ

劇団「てぃーだ」の子どもたちとソーラン節を踊る。右端が森田さん。

  東京で働いていた時、毎日が繰り返しで生きている実感のない日々に疑問を感じ、思い切り生きたい、と思っていた頃、元隊員の体験談を聞いて協力隊に応募。メキシコでは、2歳〜18歳の知的障害、盲・聾、肢体不自由など様々な障害を持った子どもたちが一緒の養護学校で音楽を教えることに。学校の存在が地域であまり知られていなかったので、何かつながるきっかけを作りたくて学校を会場に「日本祭り」をし、子どもたちの劇を見てもらおうと思いつきました。
子ども達と保護者、同僚や同期隊員ら、日系の学校や会社、地元の仲間やアーティストなど大勢の人たちに協力を呼びかけ、当日は500人を超える参加者が。折り紙や習字、ろう児たちの手作り折り紙ピアスの販売、そして、劇「ももたろう」の発表。この時普段は見せない自分を思い切り表現していました。目の見えない子は声優に、耳の聞こえない子はダンスやパントマイムで、普段おどおどした子が大きな声で堂々たる演技。いつも無言の子が役に成りきって叫んだり、興奮して『愛している』とステージで叫ぶ子も。フィナーレではたくさんの笑顔と自信あふれた表情に、劇ってすごいな、と。自分をオープンにし表現することで自信がつき、違いを超えて関わり合える。心が開かれて「楽しい」と感じた子どもたちはどんどん力が湧いてくることを実感しました。
 これを機に、普通小学校の生徒や先生にも参加を呼び掛けて「劇団てぃーだ」を結成。各地で10回以上発表をし、子ども同士がたくさん交流し活躍することができたことに大きな充実感を得ました。実際は私がみんなに引っ張られ、多くの事を得ていたんだ、と後から気付きましたね。

協力隊の経験から得たこと:イメージしたことは必ず実現できる

メキシコの養護学校での音楽の授業風景

  思いついた企画を他の人に共有し具体化できたのは、駒ヶ根訓練所での訓練中、同期とエイサーを踊ったのが実は始めて。メキシコでの日本祭りは、難しいとは思ったけれどイメージが湧いたのでできるのではないか、と感じました。先生へのプレゼンテーションから始め、協力者がどんどん増えて、可能になった経験から、「やってみよう、完璧を求めなくても、そのなかで色々な人と関わって、色々なことが生まれてくるんだ」ということを学びました。
 以前は、元気でなくちゃ、こうでなくちゃ、と思い込むこともありましたが、疲れている時や不安な時もありのままを受け入れてくれたメキシコの人たちに、70点でもいいんだ、人と比べて立ち止まるのではなく、とにかくできることをやってみるのが大事。」ということを教わりました。

メキシコ人から学んだ家族の大切さ、人とつながることの大切さをこれからも

子どもたちの作品を手に、子どもの森のスタッフと。

  メキシコ人は家族をとても大切にしていて、誕生日は必ず皆でお祝い、週末は「フィエスタ(パーティー)」。以前は一生独身でチャレンジする人生を思っていましたが、メキシコの家族を見ていて、いいな、と思い、帰国直後に結婚。夫は日本祭りに参加してくれたアーティストの一人で、メキシコ人の熱い心に感動した一人でもありました。
多くのかけがえのない仲間との出会いも。「トモダチ」「ゼッタイワスレナイ」という日本語を覚え、胸に手を当てながら帰国前何度も言ってくれたり。メキシコで人とつながる力を得たことは、現在生かせているだろうし今後も生かしていきたい。人とのつながりを大切にするのは南信州の人たちにも共通していることではないでしょうか。
子どもの森小学校も、人と自然との命との関わりの中で生きている素晴らしさを感じられるような学校にしたいと思っています。メキシコで手間暇かけて作って家族みんなで食べる大切さも学び、食を通じても人とつながりたい。以前は食べられればいいやと思っていたけれど、今の環境では醤油づくりなどたくさんの手作りが楽しめて幸せを感じています。さらにみそ作りや野菜、米など自給自足に近づきたいです。
地元の仲間と発足した沖縄の会も、いろいろな人が参加できるグループにしたいし、本格的なエイサーを練習して披露もしたい。沖縄の現状について学び、沖縄料理や文化を通して多様な人とつながっていきたいです。



  まるでメキシコの太陽のように明るく楽しそうに語ってくれた森田さん。これからも阿智村で夢いっぱいに輝かれることでしょう。