こまがね市民活動支援センター事務局長(元青年海外協力隊員・パプアニューギニア・自動車整備)
宮澤敏幸さん
長野市出身の宮澤さんは32歳での青年海外協力隊参加以来、一貫して国際協力の道を歩んできました。それが一転、小さな村の役場への出向をきっかけに、日本国内の地域づくりの道を歩み始めました。今は、駒ヶ根青年海外協力隊訓練所(JICA駒ヶ根)のある駒ヶ根市で市民活動の拠点となる「こまがね市民活動支援センター」の事務局長として、住民主体の街づくりを目指す宮澤さんに、お話をうかがいました。
「高齢化が進む村で地域づくりに携わるなんて思いもしなかった」。2002年、故郷の長野県から遠く離れた茨城県里美村(現・常陸太田市)に出向した時の宮澤さんの本音です。87年に協力隊に参加し、その後、JICAボランティア調整員などとして国際協力に関わってきましたが、「村の国際協力を手伝ってほしい」という里美村の要請を受け、当時所属していた社団法人青年海外協力協会から村へ出向しました。
里美村で2年間、フィリピンからのJICA研修員の受け入れを手掛けるかたわら、人口の約3割を占める高齢者が積極的に街づくりに関わる様子を目の当たりにした宮澤さん。「地域づくりっていうと、だいたい行政とか、青年団とかがやるんだけど、里美村ではお年寄りが地域に大きく貢献している。自分の地元でも何かできないかと思うようになった」。出向期間の終了と同時に協力協会を退職し、家族のいる駒ヶ根市に戻りました。
当時、高齢者に目が向いていた宮澤さんは、地元の仲間と高齢者介護事業を手掛けるNPO「中央アルプスの郷プロジェクト」を設立し、事務局長に就任しました。一方で、市の活性化について市民の立場から行政に提言する市民会議に参加。その議論の中から09年、市民活動をする人々の拠点となる公設民営の施設「こまがね市民活動支援センター」が生まれ、宮澤さんは初代事務局長に就任しました。
行政と市民の橋渡し役として地域づくりに携わる宮澤さん。「地域を改革しようと思ったら、自分が一回外に出てまた中に戻るか、外部の人に客観的な評価をしてもらうか、どちらかしかない。駒ヶ根市は面白いところで、協力隊の訓練を受けた際に駒ヶ根が気に入り、帰国後に移り住んだ協力隊OBがたくさんいる。こういう人たちと連携すれば斬新な考えで行動できる」と、協力隊の訓練所があるからこその特徴を、地域づくりに活かそうとしています。
「今一番やりたいと思うことは、国際協力と市民との距離を縮めること。協力隊の訓練所がある駒ヶ根でさえ、国際協力は縁遠いと考える人がたくさんいる。このギャップを埋めていきたい」と語る宮澤さん。“国際的な地方都市”を目指し、さまざまな構想を練っています。「夢を持つのが難しい時代と言われているけど、やっぱり夢は持ち続けたい。すぐに実現するわけではないけれど、希望を持って進んでいきたいよね」。宮澤さんの目は、更なる未来を見据えています。
宮澤さんが勤務するこまがね市民活動支援センター、通称「ぱとな」