元青年海外協力隊員(平成16年度1次隊・ガーナ・青少年活動)
小林論子さん
「協力隊が終わったら、日本と海外を行ったり来たりする仕事をしようと思っていました」−。かつて、こんなビジョンを描いていた小林論子さん(長野市出身)は今、長野県北部の小さな村で、「地域子育て創生事業コーディネーター」として、地域の子どもや母親たちと向き合う毎日を送っています。小林さんの目が村に向けられたきっかけは何だったのか、そして日々どんな活動をしているのか、うかがいました。
長野市から車で約30分、遠方に北アルプスの稜線が美しく映える人口約3000人の小川村。ここをフィールドに小林さんは今年1月から主に子育て支援、そして独身者の結婚活動、いわゆる「婚活」の支援を行っています。村の公民館配属で、契約は来年3月まで。最初誘われたとき、「1年ちょっとで結果を出すのは無理」と断ったそうですが、村の熱意ある説得に次第に心境も変化。「一軒家に住みたい」という小林さんの希望も聞き入れてもらったため、小川村での仕事に取り組むことになりました。
村に移住した小林さんは、農作業や福祉施設などで体験学習を行う子どものグループ活動を立ち上げたり、村の独身者の現状を調査したりするなど、積極的に動き始めます。一方で、村の抱える課題も見えてきました。「意外にも、子どもに外遊びの経験が少ないんです。知識もインターネットに頼っているから、体験から学んだ経験に乏しい気がする」と小林さん。婚活支援も「周囲が盛り上げても、肝心の独身者のモチベーションがなかなか上がらない」と、活動の難しさを口にします。
大学卒業後、大手旅行会社に就職した小林さんは、窓口でお客さんと接しながら、自分が知らない場所への旅行商品を売ることに疑問をつのらせていました。もともと海外に興味があった小林さん。小さいころより母親から協力隊を勧められていたこともあり、思い切って参加を決意。青少年活動隊員として、ガーナの首都から約8時間のところにある人口2500人の村で職業訓練校の運営に携わり、生徒が作った工芸品の販路を開拓したり、算数や英語を教えたりしました。
協力隊終了後、「隊員経験を社会に還元したい」との思いから、JICA事業の広報や国際協力への市民の参加を支援する国際協力推進員となり、3年にわたり長野県を舞台に活動しました。「旅行会社は2年で辞めたし、協力隊も2年間。だから3年間同じところに勤めるのは初めてだった。2年しかないと、結果を出すために自分が動き回るだけで終わってしまうが、3年目になると自分を頼って人が来てくれ、活動がより広がっていく。それが分かったとき、一定期間同じポジションで仕事に取り組む面白さを感じた」と小林さん。「小川村では、外に出る機会はあまりないけれど、腰をすえてじっくり仕事ができる。ここに来て、人と深く付き合う楽しさがわかってきた」といいます。
今後について、小林さんは「地域の活性化に関わる仕事を続けたい。人と人を結び、それが広がって、そこから新しい何かが生まれる。そのきっかけを作れればいいな」と語ってくれました。小川村での任期も残すところ半年。「本当に国内版協力隊って感じです。まず自分の生活環境整えて、人間関係を作って、自分の顔を売って…」と、協力隊員として培った経験を活かし、村の課題解決に向け、今日も元気いっぱいに活動しています。
小川村で子どもを集めて開いたイベントの一コマ。伝えたいことはたくさんあります
ガーナでの青年海外協力隊時代。このとき村で働いた経験が、今の仕事にも活かされています
職場の小川村公民館でデスクワーク中。村の課題にどうアプローチするか、頭を悩ませています