協力隊の経験を国際看護の授業に

【画像】宮越 幸代 さん

長野県看護大学准教授
宮越 幸代 さん

長野県看護大学(駒ヶ根市)准教授の宮越幸代さんは、青年海外協力隊の経験をいかし、開発途上国の事例をふんだんに盛り込んだ国際看護学の授業を展開しています。また、在日外国人の健康問題に取り組んだり、太平洋の島国・サモアの大学との学生交流事業を手掛けたりするなど、幅広い分野で活躍されています。そんな宮越さんに、国際協力と看護教育についての思いをうかがいました。

「正解はありません」

「協力隊の看護師として途上国で活動していたところ、医療行為が必要な患者が来ました。近くに医者はいません。対応できるのはあなた一人です。どうしますか」。看護師を志す学生に、宮越さんが問いかけます。思いもしなかった質問に、考えあぐねる学生たち。想像をめぐらせ、必死で考えます。

「正解はありません」と宮越さん。ただ、「自分がとろうとした行動に法的な問題はないか。協力隊員として問題はないか。倫理的問題はないか。結果に対し責任を取れるか。これらの視点があらかじめ整理できていることが大切なのです」と、事例を扱う意義を説きます。想定外のことが次々と起こる国際協力の現場に身を置いていた宮越さんの授業は、経験に裏打ちされたケーススタディが魅力の一つ。「現地に必要なことを見極める目を養ってほしい」との思いが込められています。

自分自身を振り返った2年間

長野市出身の宮越さんは、東京都内での病院勤務や、小児看護の教員などを経て、2001年、青年海外協力隊員として南米のボリビアに赴任しました。地方都市の看護学校で、教員として看護の基礎を教えたり、救急蘇生法の普及に努めたりするなど、充実した2年間を送りました。

その中で、宮越さんは自分自身の教え方を振り返る機会に遭遇します。「教えていて、『何でわからないんだろう』っていうことがいっぱいあった。でもそれは、教え方が悪かったんです。テキストそのままの授業をしていたけど、それでは根本的なところが伝わっていなかったんです」と宮越さん。以来、教授方法を見直し、必ず根拠とともに知識を教えるよう心掛けるようになりました。

海外で活躍できる看護師を

試行錯誤の連続だったボリビアでの活動を終えた宮越さんは、帰国後も看護教員としてのスキルを磨き続け、2009年春、長野県看護大学に着任しました。大学はJICA駒ヶ根から車で10分ほど。そのメリットをいかし、ときには学生とともにJICA駒ヶ根で訪問学習を実施することもあります。「国際協力に対する学生の興味をもっと引き出したい。そして海外で活躍できる人材が出てほしい。そのために、まずは日本の臨床できちんと仕事ができる看護師を育てていきたい」。日本国内と海外、その両方で培った豊富な経験をたずさえ、宮越さんは今日も学生と向き合います。

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ボリビアで協力隊として活動中の宮越さん

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長野県看護大学の学生と