イラクの子どもの闘病生活を支援する

【画像】西村 陽子 さん

アラブの子どもとなかよくする会
西村 陽子 さん

千曲市出身の西村陽子さんは、東京に本部がある非政府組織(NGO)「アラブの子どもとなかよくする会」メンバーとして、闘病中のイラクの子どもや家族の支援活動に従事しています。アラブ地域に目が向いたきっかけは、青年海外協力隊員としてヨルダンで奮闘したことです。そんな西村さんに国際協力への思いをうかがいました。

手芸品制作プロジェクト

「これを売って支援金にするんです」。こう言って西村さんが取り出したのは、手作り感あふれる卓上カレンダー。背景には砂漠や海、ラクダなど、アラブ地方をイメージさせる図柄があしらってあります。制作したのは病気治療中のイラクの子どもやその家族。1部1000円で販売しているカレンダーの売り上げは、そんな親子の貴重な生活費に当てられます。

政情不安が続くイラクでは、白血病など難病を患った子どもの治療のため、多くの家族が全財産を持って隣国・ヨルダンに足を運びます。しかし中には、生活費が底を尽き、途方に暮れてしまう人々も少なくありません。このような家族に対し、西村さんは手芸品を日本で売るプロジェクトを提案。2007年に3家族でスタートしたこの活動は徐々に広まり、2011年のカレンダー制作には10家族が参加しました。

度胸を学んだ協力隊

日本と中東を行き来する西村さんは、かつて長野県の養護教諭として充実した日々を送っていました。そんなある日、通勤途中の電車の中で協力隊募集説明会の中吊り広告を目にしたのを契機に、国際協力の道を歩み始めます。「小学校5年生のころ、テレビで見たときから協力隊には興味があったんです」と西村さん。説明会で「養護」の職種の存在を知り、応募に踏み切りました。

協力隊員として赴任したのはヨルダンの特殊学校。ここで6歳から14歳の障がい児教育と、養護教員の指導に携わりました。「目からうろこというか、世界にはいろいろな人がいると痛感しました。衝撃的なことを、もれなく体験しました」と西村さん。「どこへ行っても一人でやっていける度胸を学びました」と振り返ります。

日本とアラブの架け橋に

隊員終了後、「もう一度海外に行きたい」と考えていた西村さんは、さらに6年の教員生活を経て、NGO活動に入ります。「小さい組織だからこそできる、きめ細かい国際協力をしていきたい。それに日本ではイスラムやアラブへの偏見も多いので、二つの文化の架け橋になれれば」と話しています。

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ヨルダンの特殊学校で活動した協力隊時代

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NGO活動で訪れたイラクの子どもたちと

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闘病中のイラクの親子が作った手工芸品は、駒ヶ根市で昨秋開かれた「みなこいワールドフェスティバル」でも販売しました