中国内モンゴル自治区で農業支援する

【画像】竹田 恭一 さん

NPO「日中蒙農業交流協会」理事長
竹田 恭一 さん

伊那市のNPO「日中蒙農業交流協会」は、2008年からJICA駒ヶ根と協力し、中国内モンゴル自治区のドキトラ村で堆肥作りを中心とした農業支援を実施しています。プロジェクト最終年度となる今年も、中国から研修生を招いて日本の技術を伝えるなど、積極的な取り組みをしています。この事業を中心となって進めてきた、同協会と竹田恭一理事長を取材しました。

砂漠化の進む村

冬の寒さが和らぎつつある2月下旬、伊那市の種苗会社のビニールハウスに、野菜の苗作りを学ぶ中国からの研修員の姿がありました。彼は、「日中蒙農業交流協会」が支援するドキトラ村農民青年連絡会のメンバーで、日本の技術を学び、故郷の村の振興に役立てるため、2月上旬来日しました。約1ヶ月間の滞在期間を少しも無駄にしないようにと研修に取り組む姿からは、ドキトラ村が置かれている現状が垣間見えます。

モンゴル国境に近いドキトラ村は、砂漠化の進行や化学肥料の使用に伴う土壌劣化などの影響で、主産業の農業を取り巻く環境が厳しさを増しています。収入不足を補うため、出稼ぎに出ざるを得ない若者も少なくありません。こんな村の状況を改善しようと、理事長の竹田さんはJICAの「草の根技術協力事業」を活用し、堆肥作りや土作りなどに取り組んでいます。開始から3年目を迎え、「自然が厳しく、なかなか思うようにいかない」と苦笑しますが、取り組みが少しずつ根付いてきた手ごたえも感じています。

「ものすごいカルチャーショック」

竹田さんが最初に関心を持ったのは、草原の国・モンゴルでした。「初めて行ったとき、ものすごいカルチャーショックだった。大自然の中で家畜と対等の関係で生きる遊牧民の姿に、人間の生活の原点を感じた」といいます。その一方、近代化の影響で、都市などに定住したものの職に就けない遊牧民が増えていると耳にし、「何とかできないか」と思うようになりました。

2001年、竹田さんはNPOを立ち上げ、モンゴルへの農業支援を始めます。「遊牧していた人たちが定住するとなると、家庭菜園とか必要になってくる。その技術の支援ができれば」との思いからでした。「日本の農作物は安心・安全というイメージがある。日本の技術に対する現地の関心も高い」といい、信州大学農学部の先生方の助言も得ながら取り組みを続けました。2008年からは内モンゴルのドキトラ村を支援対象に加えるなど、活動の幅を少しずつ広げてきました。

夢の続き

竹田さんの本業は惣菜の製造・卸会社の経営。多忙な毎日ですが「皆さんが協力してくれるし、JICAの草の根制度があるから続けられる」と話します。今後について竹田さんは「内モンゴルで生ゴミなどを利用した家畜の餌作りにチャレンジしたい。今、勉強している最中です」と意欲を燃やしています。強烈なカルチャーショックから始まった竹田さんとモンゴルや内モンゴル自治区とのつながりは、まだまだ続きます。

【画像】

ドキトラ村から来日した研修生。伊那市で育苗の手法を学んでいます

【画像】

中国内モンゴル自治区・ドキトラ村にて。村の若者がトウモロコシやヒマワリの茎を使っての堆肥づくりに挑戦しています