農と地域にかける思い

【画像】西田 徹也 さん

木島平村総合政策課 地域おこし協力隊員/元青年海外協力隊員
西田 徹也 さん

北信州の豊かな山々に囲まれた木島平村。人口約5千人のこの村に今年4月、1人の元青年海外協力隊員がやってきました。地域の活性化を手掛ける「地域おこし協力隊員」、西田徹也さん(大阪府出身)です。開発途上国から戻った西田さんが、なぜ日本の農村に活躍の場を見出したのか、その軌跡をうかがいました。

精力的に行動

「美しい山、おいしい湧き水、人々の温かいつながり。木島平はめっちゃいいところです」。笑顔で話す西田さんの口からは、木島平の魅力が次々と飛び出します。「地域おこし協力隊」は都市の若い世代を、地域社会の担い手とするプログラムで、隊員は一定期間以上、農林漁業の応援、住民の生活支援などに従事します。木島平での西田さんの仕事は、人口流出を防ぐための方策や土地の活用法を村人と一緒に考えること。赴任5カ月目の今、担当地区を回って地元の人と話をしたり、村のミーティングに顔を出したりするなど、精力的に行動しています。

自転車で目にした世界の現状

大阪で10年近く電機メーカーに勤めていた西田さんは、ある時、自転車での世界一周の旅に出ようと思い立ち、会社を辞める決心をしました。もともとバイクでの国内旅行が趣味だったので、その延長のような感覚だったといいます。ヨーロッパ、アフリカ、中南米など計50カ国を、3年かけて走破しました。この体験が協力隊参加の原点になりました。

「やはり印象が強かったのはアフリカです。日本より各段に厳しい生活状況を見て、なぜこんな不条理が存在するんだろうと思った」と西田さんは振り返ります。また、旅人である自分をもてなす村の人の優しさに感動する一方で、何も恩返しができない自分にもどかしさを感じていました。そんな時、現地で出会った協力隊員の姿が、西田さんを国際協力の世界へと導きます。

村に本当に必要なものは・・・模索の日々

協力隊員としての活動内容は、アフリカ大陸南東部にあるマラウイ共和国の小さな村の住民組織が行なうエイズ啓発、予防活動のサポートでした。西田さんはまず、メンバーに対してエイズの基本的知識を伝えたり、補助金を申請するプロポーザルの書き方指導などの活動に専念しました。

自転車旅行で目にした不条理の解消に向け、エイズ対策の活動に尽力した西田さんですが、その関心は次第に食糧問題へと移ります。「村の人たちは、弱者支援の意識がすごく強い。だが、ボランティアとして活動するためには最低限の生活の基盤が必要であるのに、日々の食糧も足りていない現状である。善意に頼った方法には限界があるのでは」と自問を始めた西田さん。そして、「まずは食や農業という基本的ニーズにつながる支援が必要なのではないか」との思いに至ったといいます。

「地方があってこその日本」

帰国後、飽食、大量廃棄など、日本の食を取り巻く環境に、「世界の不条理を変えるには、まず日本が変わるべきでは」との意を強くしたと同時に、過疎化、高齢化が進む地方の現状に危機感を募らせたといいます。「食べ物をつくる地方が滅びれば都市も生き残れない。地方に住んで、農業を学びたい」。そんな思いに駆られた西田さんの目に飛び込んできたのが「地域おこし協力隊」でした。

現在のモットーは「村の人と常に寄り添い続ける」。トップダウンではなく、村民の間からアイデアが湧き出てくる底力の育成を目指しています。そして「田と家を借りて、都市の人を巻き込みながら、農業を学んで体験できる場を作り出したい」と夢を語る西田さん。理想とする村の姿に自分の将来像を重ね合わせながら語ってくれました。

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エイズ患者向けの大豆料理の紹介

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演劇によってエイズ検査の重要性を説明する西田さん(写真中央)

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村づくりに関するワークショップを開催