チャンさん・ヴァンさん
江戸時代から干し柿(市田柿)の生産が盛んな飯田市に、柿の栽培や加工の技術を学ぶため、10月からベトナム人の研修員が訪れています。柿の特産化を目指しているダラット市出身のチャンさん(30)とヴァンさん(24)です。南信州の秋の陽光の中、故郷の農業の発展を目指す2人は、「少しでも多くのノウハウを学びたい」と張り切っています。
10月中旬のある日、飯田市柿野沢地区の山あいに、2人の研修員の姿がありました。ベテランの柿農家から、干し柿を作る際の衛生管理の方法を学ぶためです。「柿にほこりが付かないように、掃除をしっかりして」「柿を干す建物の中は土足禁止」。農家の方のアドバイスに、2人は熱心に耳を傾けていました。
2人の研修は来年1月まで。その間、同市内のアパートで共同生活を送りながら、できるだけ多くの柿農家の生産・加工手法を見学する予定です。一口に「干し柿」と言っても、気象条件や日当たりによって、柿を干す時間、風の通し方など、農家の加工手法は千差万別。いくつかの方法を学び、その中からダラットの風土に適したやり方を見出したい考えです。
この研修は、JICAの草の根技術協力事業を活用した「柿生産と加工技術の普及」の一環で行われているものです。これは飯田市が提案し、干し柿などの流通を手掛けるかぶちゃんファーム(長野県飯田市)が実施するもので、ダラット市の柿生産関係者の収入向上を目的に2010年9月から3年間の計画で行われています。
ダラット市は、ベトナム有数の柿の産地で、生柿及び干し柿を出荷しています。柿生産者は、栽培・加工技術の向上を通じ更なる収入増加を目指していますが、技術が確立されるまでには至っていません。ダラット市も柿に関連する産業の育成を通じた地域振興を模索しています。
帰国後、2人は農業普及員として柿の生産・加工の技術向上に携わります。「日本の干し柿は柔らかくておいしい。日本式の干し柿を導入し、少しでも高く売れるようにすることで農家の収入増加に貢献したい」と張り切っています。
柿の加工場を清掃しながら衛生管理のノウハウを学ぶ研修員
ベトナム有数の柿生産地・ダラット市の中心部