カレー店店主
小笠原 一博 さん
駒ヶ根市でカレー店を営む元青年海外協力隊員の小笠原一博さんが、カロリーを抑え、健康に配慮したカレーを開発しました。商品名は「天使のカレー」と命名。収益の一部は協力隊時代に活動したバングラデシュでの学校建設など、独自の国際協力活動に充てる予定です。
「天使のカレー」は寒天や雑穀の一種、アマランサスを用いるなどしてアレルギーにも配慮しています。「カレーは大好きだが、血糖値が気になる」という常連客の声を受け、開発に着手。地元企業や大学の研究者の協力を得て完成にこぎつけました。インターネットなどで販売する計画です。
松本市出身の小笠原さんは、農業機械メーカーに7年間勤務した後、1985年、青年海外協力隊に参加。バングラデシュ北西部のクスティア県で、水田に水を送るポンプを維持管理する技術者の養成などにたずさわりました。稲作が盛んなバングラデシュで、ポンプは水田維持に必要不可欠。そのポンプの修理工は、地域に欠かせない人材でした。
当時、小笠原さんは技術者養成学校で、「土地なし農民」の若者らを対象に授業をしました。「彼らの中から1人でも多くがメカニックとして一人前となり、自立してほしい」と願っていました。任期を延長した小笠原さんはバングラデシュで3年活動。熱心に指導してきましたが、その後、学校を出た教え子たちの消息は、ほとんど伝わってきませんでした。
帰国した小笠原さんは、「バングラデシュと関わりを持ち続けたい」との思いから、現地の料理を独学で学び、90年、駒ヶ根市でカレー店を開業。「当初は苦労が多かった」といいますが、徐々に軌道に乗り始めました。と同時に、「バングラデシュへ何かできないか」との思いが湧き上がってきました。
転機となったのは2009年、民放のテレビ局が小笠原さんのバングラデシュでの任地に行き、現状を取材したのです。その中で、教わった技術をいかし、修理工として水田のポンプの維持管理を行う教え子の姿が映し出されました。20年という時に埋もれることなく、協力隊時代の取り組みが大きく結実していたのです。
この事実を目の当たりにした小笠原さんは、かねてから試行錯誤を続けていた健康に配慮したカレーの収益を、バングラデシュの学校建設に充てることを決意しました。「今の自分があるのはバングラデシュのおかげ。恩返しがしたかった」と小笠原さんは語ります。協力隊終了から24年、着手から3年を要して完成した、「天使のカレー」は、「地域にも、途上国にも貢献したい」という思いとともに、3月11日、販売が始まります。
バングラデシュで活動する小笠原さん
小笠原さんが経営する「アンシャンテ」の外観
厨房でカレーを作る小笠原さん