前回は「廃棄物管理技術(A)コース」が高倉式コンポストの見学・実習を行った様子をご紹介しましたが、今回は「後編」として、環境教育分野の活動を見学させて頂いた際の様子をご紹介します。
日本では、決められた場所以外ではごみを捨てない、ごみは決められた通りに分別してから出す、といったことは、ほとんど「当たり前」になっています。しかし、海外ではまだまだその意識が市民の皆さんに浸透していないそうです。JICA九州に研修に来た研修員のみなさんの多くは、「市民の意識の高さ」に驚き、どのような環境教育を行っているのか、とても興味を持つそうです。
それでは、研修の様子を覗いてみましょう!
この日は、午前中に北九州市の環境教育行政について講義を受けた後、午後にボランティアの方々の活動を実際に見せて頂きました。
今回、活動を見せて頂いたのは、津田さんご夫妻と栗田さんです。津田さんは、北九州市環境学習サポーターの会代表で、環境省認定の環境カウンセラーでもあります。地域での環境教育を長く実践してこられ、新聞の取材を受けたこともあるそうです。
まずは大きな紙芝居。「ゴミラがやってきた!」というオリジナルの童話で主人公は男の子「たくちゃん」です。
ごみの減量を呼びかける内容になっています。
研修員も上演に参加できるよう、英語版の脚本を用意して頂き、三人が順番に読んでいきました。
最初は何が起こるのか?とびっくりしていた研修員も、たくちゃんの物語に引き込まれ、上演すること、観ることの両方の経験を楽しみました。
次は、ごみの分別について、クイズ形式で学ぶコーナーです。
ここで使う小道具もすべて手作り。
家庭でよくでるごみを一つずつ取りあげ、適切な分別方法を選びます。
正解だと「ピンポーン!」の音とともに、リサイクル処理によって、どうごみが生まれ変わるのか、を教えてもらいます。
津田さんご夫妻のお宅では、こうして、家庭からでるごみをていねいに分別しているので、「家庭ごみ」は1か月でもごくわずかなんだそうです。すごい減量ですね!
ちょっと面倒に感じてしまうごみの分別ですが、こんな風に教えてもらったら、すぐに覚えて、リサイクルをがんばれそうです。
実際に、紙芝居を読む役をやったり、回答者役でクイズに参加することで、サービス精神旺盛の津田さんたちが、どうやったら「楽しく学べる」のか、学ぶ側の人のことを考えて、環境教育を実践されているのがよく分かりました。
環境教育における「市民パワー」を実体験し、大変感銘を受けた3名でした。北九州市は環境モデル都市でもあり、このようなボランティア活動がさかんに行われています。研修員のみなさんは、このような北九州市という環境にもますます興味を持ったようです。
この日は、JICA九州のすぐそばにある尾倉中学校に伺いました。
尾倉中学校は、早くから環境問題に取り組み、清掃活動やリサイクル活動を行っています。これらの活動は、生徒さん達が自発的に始めたのだそうです。北九州市から環境教育推進校に指定されていることからもわかるように環境への取り組みが進んでいる学校です。
今回は「環境教育国際交流会」として、全校約160名の生徒さんとお会いしました。
入口に研修員のみなさんの国の国旗を表示して、歓迎してくれました。
左から、ジャマイカ、モンゴル、パナマの国旗です。
まずは、尾倉中学校での取り組みについて、生徒会のみなさんによる発表です。生徒会が中心になって、それぞれの委員会が活動を担当しているそうです。日々の活動に加えて、遠足の時に皿倉山のゴミ拾いをするなど、学校行事にも環境活動が組み込まれています。
3名の研修員とも「中学生がここまで自主的に活動しているなんて!」と環境教育の好事例を知り、驚いていました。
発表の後は、みなさんお待ちかねの「質問タイム」です。
「尾倉中学校での環境への取り組みについてどう思いますか?」「それぞれの国の主要な発電方法はなんですか?」といった環境に関する質問や、それぞれの国に関する質問など、皆さんが興味をもっているいろいろな事が質問されます。
ジャマイカ・モンゴル・パナマの三カ国について、事前に調べてくれたことが分かる質問もありました。ちゃんと予習してくれていたんですね。さすが!
質問に回答するジャマイカの研修員レンロイさん(右端)。
最初は余裕?で回答していた3人ですが、
だんだん160人の生徒さんのパワーに圧倒されています。
何と回答しようかとちょっと考えている様子のモンゴルからの研修員のバットさん(中央)です。
質問タイムの最後の方では、「それぞれの国で有名な日本人は誰ですか?」「人気のある日本のマンガはなんですか?」といった、暮らしや文化に関連する質問が出て、研修員はタジタジになりながらも、尾倉中学校のみなさんとの環境国際交流を満喫しました。
「環境」という、私たちみんなが共通に持っている課題・関心について、お話をする機会が持てたことは、研修員のみなさんにとって、日本の若い世代が環境問題をどう考え、活動しているのかを知る良い機会になりました。
また、尾倉中学校のみなさんにとっても、日ごろの英語学習の成果を発揮したり、なかなかお話しできない国の人と直接話をする良い機会になったのではないでしょうか。
廃棄物管理技術(A)コースの研修は、10月下旬に終わりました。3名の研修員は、JICA九州での研修を基に、帰国後にどのようにして廃棄物管理方法を改善するか、という実行計画を最終報告としてまとめ、お世話になったみなさんへの感謝とともに帰国しました。
JICA九州では、このように、環境モデル都市北九州市ならではのリソースを生かした、環境管理分野の研修コースを他にもたくさん実施しています。家庭からでるごみの処理、工場から出る廃棄物や排水の処理、など多岐にわたります。世界的に環境問題への関心が高い今、参加希望も多く集まっています。
【以上】