九州エコ通信2015年7月号

合言葉は「混ぜればゴミ、分ければ資源」

鹿児島県大崎町役場住民環境課
中野伸一

鹿児島県大崎町は、インドネシア国デポック市にて2012年度からJICA草の根技術協力事業(地域提案型)「住民参加型一般廃棄物処理技術開発普及事業」を実施しました。

本町は、「混ぜればゴミ、分ければ資源」の掛け声のもと、徹底した分別を行い、焼却に頼らない廃棄物処理システム行政、事業者、住民が一体となって築いてきました。徹底したゴミの分別により約80%の埋め立てごみ減量化を達成した実績と経験を伝えようとデポック市での活動を行ってきました。事業は今年3月に終了しましたが、その活動の成果をご報告します。

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1 デポック市のゴミ問題とは?

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以前の堆肥化施設。
廃棄物が混載状態で処理が困難。

インドネシア国デポック市は首都ジャカルタの南部に位置している人口約200万人、面積200平方キロメートルの都市です。農村部からの都市部への人口流入で、年率10%程度で急激に人口が増加していて、交通渋滞やゴミ問題などの住環境の悪化を招いています。

特に廃棄物問題は深刻で、急激な経済発展に伴って増え続けるゴミにより埋立処分場の残余量が逼迫し限界状態を迎えています。ゴミの減量化のために市内に設けられた生ゴミ堆肥化施設もゴミの分別が徹底されていないため機能せず、ゴミの散乱で住環境が悪化するなど、廃棄物処理の実務は日々困難になっていました。

2 意識改革により「大崎方式」の人材を育成

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市民自ら分別回収を行うゴミ銀行の設立が進んだ

元来インドネシアでは、ゴミ処理は下層階級の仕事との意識が強く、ゴミ処理政策をつかさどる行政職員と回収や堆肥化の現場が分離していました。

そこで廃棄物減量化のためにはまずは職員及び市民の意識改革を図る必要があると思い、3年間で計9回、大崎町よりデポック市に環境行政、堆肥化技術指導などゴミ資源化の専門員等を派遣し、12地区において市民向け現地モデル地区説明会を開催しました。またデポック市の廃棄物担当者の研修会を開催し、行政職員の意識改革を行い、市民向け現地モデル地区説明会では、デポック市職員が自らが普及指導員として活動するよう指導を行いました。

その結果、職員及び市民の意識改革が行われ、デポック市職員による説明啓発活動や市民主体で資源化に取り組むゴミ銀行の設立等が急速に進みました。

3 生ゴミの分別収集・資源化のシステム作りが始まる

廃棄物の減量化のためには、家庭から排出される廃棄物のうち重量比で約半分を占める生ゴミごみの資源化が効率的です。モデル地区では生ゴミ分別収集に着手し、重量比で3割以上の減量化を成功させました。

また生ゴミリサイクルのため、元からあった堆肥化施設の充実を図り、生ゴミを資源として活用する堆肥化に着手しました。家庭で分別された生ゴミを回収し、良質な堆肥作りのため、生ゴミから異物を撤去する作業を手分別で徹底して行います。こうすることで、以前には全く作れなかった良質の堆肥が出来るようになりました。

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生ゴミを収集車で回収

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良質な堆肥作りのため生ゴミから異物を除去

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生ゴミと草木を混ぜ、4ヵ月程度で堆肥が完成

4 市民・学生に対する環境学習

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高校にて生ゴミ堆肥化の環境教育を開催

ゴミ分別の成果と活動を継続させていくには、市民や若い世代の啓発も重要です。高校でも環境教育を行った結果、高校性による生ゴミ堆肥化や、堆肥を使って木の苗を育てるなどの取り組みが広がりました。また市民への啓発のために、公園等の公共施設にゴミ箱が設置されました。

5 インドネシア政府から環境に対する技術革新賞を受賞

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デポック市は、大崎方式により廃棄物を使って有機堆肥を生産した技術革新に対し、政府から表彰を受けました。

JICA草の根技術協力事業は終了しましたが、3年間で培われた信頼関係は、途切れることはありません。廃棄物処理プラントへの支援や、人材交流などを通じて、これからも良き友人でありたいと考えています。