九州エコ通信2016年7月号

北九州市のリサイクル技術で街をきれいに!−インドネシア・メダン市 ごみ減量・リサイクルへの挑戦−

株式会社新菱
 金子 愛里

はじめに

北九州市と(株)新菱は、北九州市内の団体・大学等と連携し2014年1月−2016年3月に草の根技術協力事業「メダン市における廃棄物管理効率化事業」(インドネシア共和国)を実施し、廃棄物行政や廃棄物管理システムの指導や、廃棄物組成分析、最終処分場の発火の原因調査を行いました。3年間の活動を振り返り、メダン市の人々と共に取り組んだごみの減量・リサイクル活動についてご報告いたします。

メダン市のごみ問題

メダン市は人口約211万人、インドネシア第4の大都市です。毎日約1,700トンのごみが衛生局の収集車で運ばれ、メダンで唯一の最終処分場にオープンダンピングされています。最終処分場では、多数のウェストピッカーがゴミ山の中から売れるごみを拾い集めて生計を立てていますが、衛生状態が良くない上、ごみが自然発火を繰り返しているために危険が伴います。また運搬されずに放置されているごみが街中の道路沿いや川に溢れ、悪臭や洪水を引き起こして問題になっています。

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メダン市の位置

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メダン市内最終処分場

ごみ減量・リサイクル活動

ごみが蓄積する前に、発生源で減らすことが重要であると考え、草の根技術協力事業では、メダン市環境局の協力のもと、メダン市内のモデル地区にて1)コンポスト(堆肥)センターでの生ごみコンポスト化、2)家庭での生ごみコンポスト化、3)ごみ銀行での資源化物リサイクルの推進を行いました。コンポストセンター・ゴミ銀行の運営を現地NGOが行い、無職だった地域住民10名をスタッフとして雇用しました。この10名はコンポスト専門家の髙倉弘二先生(現髙倉環境研究所代表)から高倉式コンポストの手法(高倉式コンポストの詳細はこちらのページをご確認ください)を学び、今ではコンポストセンターで一日約5トンの生ごみを市場から受け入れ、コンポスト化する業務にあたっています。
また400世帯の住民を対象に家庭でできる高倉式コンポストの普及を行いました。コンポスト講習会を受けた住民たちにコンポスト用バスケットを配布し、定期的にモニタリングや助言を行いました。できたコンポストは家庭菜園で使っています。事業が終了してからもこの活動が継続されるよう、現地のリーダーたちは髙倉先生のモニタリングに同行し、点検のポイントや住民への指導方法を学びました。
ゴミ銀行では、住民が持ち込んだ資源化ごみ(缶・ビン・プラスチック・紙)を買い取り、ある程度の量が溜まったらリサイクル業者へ販売しています。利用者が増えれば増えるほど、街のリサイクルが促進されることになります。利用者は、通帳に記載された買い取り金額を好きなときに現金で引き出せる他、口座振替による支払いで英会話クラスや医療クリニックのサービスを利用することができます。この地域はメダン市の中でも貧困層が多く、これまでこういったサービスを受けることができなった人たちにとって「ごみで支払える」として好評を得て、ゴミ銀行利用者の増加につながっています。
この活動が現地メディアに大きく取り上げられたことで「自分の村でもやりたい」という声が多く上がり、メダン市がさらに普及を進め、2016年3月時点でコンポスト化やゴミ銀行の活動に取り組む家庭は1,387世帯に増加しました。

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コンポストセンター・ゴミ銀行外観

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コンポスト指導にあたるリーダー

現地スタッフの熱意

活動を進める中で、始めはモデル地区住民の理解が得られなかったり、コンポストがうまく作成できなかったりと、たびたび問題が発生しましたが、その度にメダン市の担当職員が責任を持って問題解決にあたってくれました。またコンポストセンター・ゴミ銀行を運営するNGOのマネージャーは、「モデル地区を環境で誇れる街に」というモットーのもと、どんな時にも最貧地域の住民に寄り添ってきました。
これからも彼らが活躍することでこの活動が広がり、メダン市、インドネシアが環境に優しいきれいな都市、国になってほしいと願っています。

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現地スタッフとの記念撮影(コンポストセンター内)