九州エコ通信2016年9月号

九州とパナマが結ぶ絆

青年海外協力隊 2015年度2次隊 職種 環境教育 鹿児島県出身
薗畠 ひとみ

パナマに来て早10ヶ月が経とうとしています。私は、パナマ国の首都パナマ市都市家庭廃棄物庁清掃推進部(AAUD)で子供達やコミュニティに向けて青年海外協力隊として環境教育活動を行っています。

国際協力との出会い

私がそもそも青年海外協力隊に応募した理由は前職である環境省国立水俣病総合研究センターで国際係として働いていた時に遡ります。国際協力の第一線で活躍される研究者の方たちと共に仕事をする事は学びの連続で多くの影響を受けましたし、仕事をする中で沢山の海外から訪れたJICA研修員とも出会いました。どの研修員も真剣に学び中には水俣病の事を初めて知って涙する研修員もいました。その中で、私に1つの思いが生まれました。「この研修員たちは国に帰ってからどのようにこの研修を生かすのだろうか?」「私も国際協力の現場に立ちこの研修員たちと途上国で一緒に働いてみたい」この気持ちが応募のきっかけでした。合格通知を受けた時にはすぐに当時の上司である坂本峰至さんに相談しました。JICAの環境分野専門家経験もあり、国際協力の先輩でもある坂本さんは、「残念だけど、頑張ってきなさい!」と力強く肩を押して下さいました。そして他の職員の方々や研究者の方々も激励して下さいました。このような多くの人の支えにより今に至っています。

北九州での出会い

環境教育隊員の私はパナマに出向く前に北九州市にて環境教育技術補完研修を受けました。この研修の初日にコーディネーターの向井侯太さんが言った言葉がとても印象的だった事を覚えています。「この研修は、チーム戦でしかも主役は君たちひとりひとりだ」この言葉はパナマの職場の皆とチームで働けているか?みんなが主役になれているか?と常に活動の際に自分自身に問いかける言葉となっています。また研修では北九州市の公害歴史の背景から見出した沢山の知識と、現在ある環境未来都市として前進していく過程で培われた多様な環境への取り組み方への方法論、更に現在行っている環境国際協力の内容を学ぶ事で将来日本が行える環境分野での可能性を学ぶことが出来たと思っています。

パナマでの出会い

初めて任地に行った時、「あなたが来るのを本当に楽しみに待っていた」と迎えてくれた人がいます。それは今も同僚として一緒にお仕事をしているミックダリアさんとエドアルドさんです。ミックダリアさんはJICAの廃棄物関連の研修で2014年北海道、エドアルドさんは2013年廃棄物管理技術(B)集団研修で北九州市を訪れています。エドアルドさんに関してはJICA九州にて北九州のタカクラ式生ごみのコンポスト化技術や北九州市の取り組み、更に水俣市での研修を受けた経験があります。そうです!全くの偶然ですが私の「日本で研修を受けた人と一緒に働いてみたい」という当初の願いが叶ったのです。

パナマでの環境教育活動

パナマは北海道ぐらいの小さな国です。首都パナマシティは、急激な経済成長に伴い慢性的な廃棄物管理の問題が日々のニュースでも頻繁に取り上げられ、市内の道や川には放置されたゴミが溢れています。
私の配属先であるAAUDはパナマ市内の廃棄物の収集や廃棄物処理所の管理などを行っています。赴任当初同僚の2人は日本で学んだ事を基礎にすでに環境教育の活動を行っていました。ですが「あまり手ごたえがない」「どのようにしたら子供たちがゴミに興味を持ってくれるかわからない」と相談を受けました。そこでまずは現場を見ながら2か月ほど一緒に活動を行いました。一緒に活動していく中で分かったことが2点ありました。1つ目は、短期的に環境教育を行う機会が沢山あるにもかかわらず長期的に段階を踏んで教える機会がないという事。2つ目は、廃棄物を使った工作等のワークショップが多くあるのに対して基本的な環境の事を教えていないという事でした。この事を2人に話すと、状況を理解しすぐに長期的な活動についての計画を一緒に行う流れとなりました。その後、様々な人々の協力や長い手続きを得て5月から3カ所の小学校で6か月間の活動を行う事にたどり着きました。授業の内容に関しては2人とも日本で研修を受けた経験があるのでとてもスムーズに行う事が出来ています。特に「水の汚染について」の回では、パナマの川の汚染と日本の公害である水俣病について教えました。その時には私が絵本を作り、エドアルドさんが文章を作るという共同作業で教材を作りました。このような活動が出来ているのはまさしく共通の知識と経験を九州という土地で行ったからだと思っています。また、パナマの子供たちに日本の環境への取り組みを教える際には、私以上に同僚の2人が日本滞在で実際に得た経験を交えて詳しく説明します。その影響からか子供たちは本当に日本が大好きです。このように同じ情熱と目標を持った仲間と一緒に活動を出来ているのは九州とパナマを結んだ多くの“絆”だと私は思っています。私達のパナマでの環境教育の挑戦は始まったばかりですが、残りの任期もチーム戦で頑張っていきたいと思っています。

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薗畠隊員と同僚

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小学校での環境教育