九州エコ通信2016年11月号

ボリビアで環境を大切にする気持ちを育んで

青年海外協力隊 2014年1次隊 福岡県出身
城井 香里

こんにちは。南米ボリビアに環境教育の青年海外協力隊員として派遣されている城井香里(きいかおり)といいます。

青年海外協力隊を知ってから隊員になるまで

就職活動の際に就職雑誌の広告で青年海外協力隊を知り、途上国に生活しながらボランティアとして活動することに興味を持ちました。途上国とはどんなところなのか実際に身をもって体験したい、そして必要とされる支援をしたいという思いを抱きました。しかしながら第一次就職氷河期と言われた時期で、地方自治体に就職が何とか決まったのでそちらを優先し、青年海外協力隊への夢は心にしまっていました。
それから14年の歳月が経ち、ふと青年海外協力隊のホームページをのぞいてみると、2007年から公務員自己啓発等休業に関する法律が施行されるお知らせを目にしました。2007年5月16日には地方公務員法の改正によって、条例で規定することで地方公務員の現職参加が可能となったのです。私の自治体も条例制定を行って現職参加が可能となりました。そのおかげで現在このように青年海外協力隊として活動できています。このことに感謝して、一日一日を大切に過ごしています。

任地・南米ボリビアのパンパグランデ市における環境教育隊員としての活動

2014年8月から任地パンパグランデ市に派遣され、現在2年2か月を経過しました。
パンパグランデ市はアンデス山脈の一部に位置し、アンボロ国立公園(福岡県の面積約90%)の区域に一部属しており、豊かな自然があります。標高は1300メートルから2300メートル。人口は約9000人です。第一次産業は農業で、人口の80%が従事しており、スイカおよび野菜の名産地として全国的にも有名です。亜熱帯気候のため、トマトが一年中栽培でき、また牧畜も盛んで昔ながらの製法でチーズが作られている長閑な地域ですが、道路や川にごみが捨てられたり、農業用水が汚染されたりして環境悪化が心配されてきました。
本来青年海外協力隊の活動は2年なのですが、要請内容にあった3Rの促進、分別回収の開始を果たしたいという思いから1年間の延長を申請し許可を得て活動しています。
活動内容は学校における環境教育としての分別回収開始、農薬容器の回収、環境CMによる市民への啓発を主に行っています。まず学校における環境教育としての分別回収ですが、教育として学校から導入することにより人口の約40%を占める学生(幼稚園から高校生まで)が家庭へそれを普及するという効果を期待しています。ボリビアでは老弱男女ごみのポイ捨てが習慣になっています。「わたしの学校ではごみを分別しているのよ」と語りながら、私の目の前でごみをポイ捨てした教員がいました。このように、頭では分かっていても行動が伴っていないのが現在の問題点です。習慣を変えることは大変難しいのですが、「ごみをごみ箱に捨てる」習慣を根付かせるために活動しています。市内8校をパイロット校として選定し、その教員へ私から4つのテーマで講習会を月一回のペースで実施し、その都度分別についての進捗状況や分別のコツについて説明する時間を設けています。資源ごみ回収の際には中身をその場でブルーシートに開けてエラーチェックをし、エラーの数をカウントしています。教員や生徒は興味を持ってそれを見に来ます。その場で間違いを把握し、少しずつですが分別の精度が上がってきています。また、分別を開始してから中庭にポイ捨てされていたごみが激減したという報告もいただいています。
次に、農薬容器の回収ですが、生産者に実施したアンケートでは、使用済みの農薬容器に関して40%が焼却処分、29%が畑に投棄、19%が川に投棄、7%が畑に埋める、5%がその他となっており、実に95%が適正な処理をしていないというデータがあります。これを改善するため、講習会を行い農薬容器の回収キャンペーンを行っています。去年1回、今年も1回行いました。回収率は4%とまだまだ少ないですが、継続して講習会及び回収キャンペーンを実施していきます。
環境CMについては、市内の広報手段として常日頃から活用されているテレビやラジオを介した市民への啓発を実施しています。これまで6本のテレビCM,3本のラジオCMを現地の同僚や子どもたち、日本の友人や子どもたちの協力により作成しました。上記で述べた学校への環境教育の集大成として、教員と生徒による環境CMコンクールを実施しており、11月末までにごみ、自然の恩恵、環境汚染をテーマにした約8本の環境CMが制作される予定です。
来年3月の任期終了までにパンパグランデ市の一人でも多くの方に環境を大切にする気持ちを育んでもらえることが目標です。

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分別回収用のごみ箱を学校に贈呈した時の様子

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農薬容器回収キャンペーンの様子

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教室で集めた資源ごみ(紙)を学校の大きなごみ箱に移している生徒