九州エコ通信2018年3月号

ペルーの豊かな自然保護のために奮闘しています

青年海外協力隊 2016年度3次隊 職種 環境教育 福岡県出身
海田 健太郎

ペルーには地球上の約80%もの生態系があり、それらを支える豊かな自然と様々な気候があります。私が配属されているSERNANP(国家自然保護区管理事務所)は、国内にある77の自然保護区を管理する環境省の組織です。ここで私はペルー北部のピウラ州に配属され、州内にある海岸砂漠地帯と海洋性熱帯乾燥林地帯にある2つの保護区の管理に携わっています。また、任地周辺での啓発活動として小・中学校などへの環境教育授業も行っています。

環境教育隊員として応募に至った経緯

自然保護や環境保全には小さい頃から強い興味を持っており、書籍を読みあさったり旅行先でも国立公園を訪れたりして、自然と多く触れ合ってきました。その場所で体験できることや見る事が出来る素晴しい景色がこれからも長く続いてほしい、そう思い動く人がもっと増えて欲しい、また自身も様々な経験をしながら自然保護に関わる仕事をしてみたいと思っていました。はじめは国内で分野が全く異なる法人営業として働き、社会人としての経験を積みました。これから夢へ向かうため視野をさらに広げ、人に伝える力を付けるために環境の大きく異なる海外での経験が必要であると考え、協力隊に参加しました。

活動現場での現状や課題などで気づいたこととそれに対して自身が取り組んでいること

2つの保護区は、異なる気候帯と自然環境にあります。海岸砂漠の保護区には、オタリヤやペンギンなどの海洋生物や様々な渡り鳥のコロニーとなっています。沖合いに南極からの寒流と赤道からの暖流が合流し、多くのプランクトンが発生しそれを求めて彼らの餌となる魚が多く集まってくるからです。そして、近くに深い渓谷を持つ山々がある地理的条件が幸いし、通常アンデス山脈にいるアンデスコンドルがペルーで唯一海岸に生息している貴重な場所となっています。もう一方の保護区は、海洋性乾燥熱帯林という珍しい生態系が育まれている森です。シカやピューマ、アリクイなど150種以上の動物やCeibo(セイボ)と呼ばれるバオバブの木の仲間を含む200種以上の植物が生息する場所となっています。ここでは生態系維持の為にシカの狩猟も行われています。

コンドルが生息している海岸砂漠地帯、珍しい海洋性熱帯乾燥林地帯と貴重な自然が広がっています。しかし素晴しい自然を持つこれらの保護区は、州内に住む人々にあまり認知されていません。ペルー全体が自然保護に力を入れてきています。協力の輪を広げる為には、より多くの人に保護区の魅力を知ってもらい、興味・関心を持つことが、自然保護へ協力していく人材を育てていくことへ繋がると考えています。そのために任地の活動では、映像を通して自然への興味や印象を強めること、自然に触れる楽しさを多くの人に知ってもらうことを目標に広報活動、そして体験型授業の活動に力を入れています。
広報活動では、事務所が行っている活動やイベント・保護区を撮影し、Facebookページを通してより多くの人の目に触れてもらえるようにしています。ペルー人のほとんどがFacebookを頻繁に利用し、特に若い人たちは交流が盛んです。色々な地域へ行き講義や授業をした際にページの宣伝もしながら、多くの人に美しい景色や様々な動植物を映像から興味を持ち楽しんでもらえるようにしています。映像完成まで毎回何度も同僚と打ち合わせや激しい議論をし、完成直前で一から作り直すこともあります。しかし、完成した作品をプレゼンで誇らしく披露する同僚や、街で映像を見た人たちからの反響や投稿へのコメントがこれまでより増加しつつあり、活動の成果を実感しています。体験型授業では、自然と触れ合う機会を通して多様な考えを育てることを目的に授業を行っています。特に任地の市内の生徒達はあまり自然と触れ合う機会がありません。学校内の環境や学校近辺の環境を利用しながら、普段の生活以上に「見る・聞く・嗅ぐ・触る・味わう」の五感を意識して刺激する体験を通し学ぶことが出来るように心がけています。外国人とあまり体験しない自然と触れ合う授業ということで、生徒たちが授業を楽しんでくれ、「次はいつ来るの?」と先生たちも含め毎回聞いてくれることが良い授業を作り上げようとモチベーションになっています。

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保護区で同僚たちと

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任地での巡回授業

これからの残りの任期に向けての夢や目標

任期も残り1年を過ぎましたが、今後もこれまでの活動を継続しつつ、さらに様々な方と協力して配属先の自然保護の活動の力を入れていきたいです。任地では、昨年初めて環境コンクールを実施できました。今年も同様に開催して任地の人々の自然保護に対する興味を広めていきたいです。また、環境教育の普及のため授業の指導案を作成しています。巡回している学校や任地の教育機関に配布、先生達への授業指導をして多くの人へ環境教育の定着と普及を目指して活動していきます。まだ帰国後の具体的な目標は定まっていませんが、この経験を生かしつつこれからも自然と教育、そして海外と日本が繋がっていけることに携わっていくことが出来たらと考えています。

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環境コンクールの受賞者たちへ保護区ツアー