環境レンジャー不定期連載ルポ 赤レンジャーからの報告その6 高倉式コンポスト広域研修

2012年5月7日

今回は、中米のエルサルバドルにて2月21〜23日に開催された高倉式コンポストの広域研修について報告します。

本研修の対象は、中南米諸国のスペイン語圏の環境教育や農業分野で活動する青年海外協力隊員とその同僚もしくはカウンターパート。ボリビア、ペルー、チリ、エクアドル、ドミニカ共和国、パナマ、ベネズエラ、コスタリカから、およそ70名が参加しました。私は、カウンターパートのマリアさんと参加しました。チリの黄レンジャーの安藤隊員とも、およそ1年ぶりの再会です。ひげをたくわえ、野生味を増した風貌にチリの過酷な乾燥地帯で戦い抜いてきた安藤隊員の汗と涙を見たような気がしました。

本研修には、日本から、講師として高倉式コンポストの発明者のJPEC高倉弘二先生と八百屋さやか先生がお越しくださりました。私は、北九州市での研修以降、メールで高倉八百屋先生にコンポストの相談に乗っていただいていたのですが、こうした形で任期中に再び両氏にお会いできると思っていなかったので、うれしかったです。

【写真】
【写真】

初日は、コンポストの基本的なことを勉強しました。高倉先生の軽妙な講義と、高倉式コンポストの可能性に、参加者みな惹き込まれました。日本とエルサルバドルは、時差が15時間ありますが、長旅の疲れを全く感じさせないパワフルな講義でした。

初日の最後に各国でのコンポスト導入事例の紹介の時間を頂きました。私もミズアブ大発生や発酵液爆発事件、これまで実施してきたコンポスト講習会についてスペイン語で、どうにかこうにか発表させていただきました。正直、このプレゼンのことが気がかかりで、前の晩から落ち着きませんでした。

【写真】
【写真】
【写真】

2日目は、朝から野外活動です。分解菌を探すため国立農牧林業センターを訪れました。

【写真】
【写真】
【写真】

同センターの敷地内の林の中で、微生物探しです。落葉の下に隠れている白い固まりが、放線菌です。窪地などすこし湿っているところにあります。落枝に、ついたキノコ類も採集します。これは、生ごみに含まれる植物体中の成分のうち、分解に時間のかかるリグニンを分解してくれる担子菌類を利用するためです。スーパーで市販されているキノコの非食部のいしづきの部分だけでも代用可能です。

【写真】
【写真】
【写真】

落葉の下には、微生物だけではなく毒ヘビもいます。かまれた場合は、速やかにこの毒抜き器を使い毒を吸い出さなければなりません。あらかじめ杖を使って地面を探り、ヘビがいないか確認してから菌をゲットしましょう。by高倉先生。今後、学校などでコンポストを作る場合、腐葉土探しの際に、ヘビの事故を防ぐための予防策として杖の使用は参考になりました。

【写真】
【写真】
【写真】

つづいては、講義です。発酵液の作り方、菌床の準備について学んだ後、実際に菌床作りをしました。米ぬか、もみがら、腐葉土に、さきほど採取した放線菌やキノコを混ぜた発酵液を加え手で混ぜていきます。実習に積極的に参加し学ぼうとする参加者の意欲が伝わってきます。

【写真】
【写真】
【写真】

さらに、4チームに分かれて、コンポスト容器の作製をしました。材料は、ダンボール、洗濯かご、新聞紙、ガムテープ。いろいろなアイデアが出てきます。通気性を高めるためにフタに工夫が見られます。意見が合わず、チーム内でアイデアを競い合うグループもありました。

【写真】
【写真】
【写真】

【写真】さぁ、いよいよコンポストの真価を問う時がやって来ました。野菜や果物の皮を細かく切ります。そして事前に、エルサルバドルの隊員が準備してくれたコンポストに生ごみを入れて混ぜ合わせます。ながれるような段取りのよさは、さながら料理番組のようです。参加者の注目が一点に集まり二重三重の人垣ができました 。

翌日、見事に生ごみが消えました!大成功!!! その効果に、おどろく参加者たち。だれも見ていない夜中に、生ごみだけ取り出したんじゃないの〜?なんて冗談が聞かれる程でした。

最終日の3日目は、サンタクルス市役所運営のコンポストセンターを訪れました。

【写真】
【写真】
【写真】

こちらでは、生ごみを積み上げてゆっくりと堆肥にしていくWINDROW方式により生ごみ処理が行われています。コンポスト槽の下部に、通気を高めるために通風口を設置したり、煙突をコンポスト内に立てたりと分解を促進する工夫がなされていました。切り返しなど行っていないそうです。しかしながら、ごみ排出源での分別の徹底が難しいため最終段階のコンポストにもプラスチックなどの混入が見られ、製品としての流通は、まだまだ課題がありました。排出源での分別の徹底の重要性、言いかえると、住民への分別教育の大切さを実感しました。コスタリカでもこうした形で、市役所が継続的にコンポストセンターを稼働させている例は、ほとんどないので貴重な見学となりました。

研修の最後に、JICAボランティアとカウンターパートが智恵をしぼって、それぞれの任地でのコンポスト導入のアクションプランを作成しました。

【写真】
【写真】

私の任地では、環境活動に取り組む小中学校15校が、コンポストに興味を持ってくれているので、ますはかれらと、一緒に取り組んでいこうと考えています。半年後には、各国のJICAオフィスに本研修の参加者が集いテレビ会議を開催し、それぞれの活動経過を発表予定です。さらに、SNS上での情報交換もはじまっています。エルサルバドルでの成果が中南米全域に広がっていくことが、期待されます。

【写真】

カウンターパートのマリアさん

【写真】

全参加者集合写真

本研修の修了証を参加者ひとりずつ高倉先生から頂きました。

【写真】実は、研修は、これで終わりではありません。このあと、隊員と講師の先生一行は、隊員連絡所に場所を移し隊員からの質問コーナーの場を特別に設けていただきました。活動でコンポストに取り組む隊員の質問は、さまざま。より深い面白い話が聞けました。そうして、エルサルバドルの最後の夜は、更けていきました。

講師の先生方 本当にどうもありがとうございました。

最後に、本研修の企画準備から参加者への対応まで丁寧に行って下さりましたエルサルバドルの隊員のみなさんと、関係者のみなさんにこの場をお借りして感謝を申し上げます。