九州SDGs通信2018年11月号 「ごみ処理問題の解決に向けて」

2018年11月27日

JICA九州では、福岡県内を中心に環境管理分野の研修コースを数多く実施していますが、このうち、ごみ処理問題の解決に向けた「廃棄物管理」に焦点を当てた研修コースを2018年度は5コース実施しています。これらの研修は、SDGsの17あるゴールのうち、主に11「住み続けられるまちづくりを」と12「つくる責任、つかう責任」の取り組みに密接に関連するものです。
今回はこれらの研修コースの内容や特徴をご紹介いたします。

北九州市内で実施する研修コース

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農園でのコンポスト実習

このうち廃棄物管理技術・手法を包括的に取り扱うコース及び生ごみなどの有機廃棄物をコンポスト(たい肥)化することによりごみの総量削減を図るコースを北九州市内で実施しています。これらの研修では、低炭素、省エネ、水、大気汚染対策等の長年に亘る北九州の取り組みやその教訓を主に講義形式で研修員に伝えています。また2018年に「SDGs未来都市」に選定され、現在は日本の環境管理分野をリードしていく立場となった北九州市の廃棄物行政や一般市民への環境教育手法なども含め幅広く取り扱う内容となっており、講義、実習や討論、視察なども取り入れて研修を行っています。

「福岡方式」の研修コースの特徴

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ガス抜き管設置(廃タイヤを使用)

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集排水管作成

また廃棄物管理を扱った研修コースのうち、主に福岡市内を拠点に実施している「準好気性埋立(福岡方式)処分場の維持管理」という研修コースがあります。このコースでは、悪臭やガスの発生を抑えながら、廃棄物の中の微生物が有機物の分解を早めることによりごみの減量化を目指す「福岡方式」の理論や技術を学び、開発途上国の最終埋立処分場の運営管理に役立てることを目的としています。この技術の特徴は、処分場に廃棄されるタイヤやドラム缶、竹などの資源を、ごみから排出される汚水(浸出水)処理や、ガスを排出するための管(ガス抜き管)の装置として再利用するもので、資源循環型の環境にやさしい活動と言えます。またこれらの装置の作成、維持には高額な経費や高度な技術を必要としないため、開発途上国にとっても導入しやすいという側面もあります。2017年現在、中国、マレーシア等のアジア諸国を初め、大洋州、アフリカ、中米等、世界14ケ国の最終埋立処分場でこの方式が導入されています。

日本の公害克服の経験を研修員に伝える

日本では、1960年代から70年代にかけて、ごみから発生したガスによる火災や悪臭、汚水の土壌への流出などによる大気汚染、水質汚染などの深刻な公害に直面していました。福岡市内でも埋立地付近での悪臭や火災が頻繁に発生する深刻な状況であり、これに対する技術として福岡市、福岡大学が試行錯誤を重ねながら共同で開発したものが「福岡方式」です。

ごみ削減への取り組み

このように、上述の研修では日本自らが経験した公害克服の歴史から得られた知見、技術を研修員に伝える内容となっていますが、どのコースにも共通する基本的な考え方は「廃棄物の総量を削減する」ということです。
九州で廃棄物管理手法を学んだ研修員が帰国後に廃棄物管理分野のリーダーとなり、今後自国での環境改善に積極的に取り組んで行くことが期待されます。また我々も一地球市民として「ごみ削減」のための意識を持って日々行動することが重要であると考えています。