九州SDGs通信2018年12月号 【地域創生×SDGsセミナー】in 熊本を開催しました!

「地域の取組みが世界を変える-「産官学金民」のSDGs取組事例を中心に-」

2018年12月11日(火)

JICA九州は、ジェトロ熊本およびジェトロ・アジア経済研究所との共催で、12月5日(水)に【地域創生×SDGsセミナー】in 熊本「地域の取組みが世界を変える-「産官学金民」のSDGs取組事例を中心に-」を熊本市で開催し、満席となる60名を超える参加がありました。当日の様子について紹介します。

セミナー開催の趣旨

「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」は、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の具体的な行動計画として示されました。SDGsでは「誰一人取り残さない」を理念に掲げ、日本を含む全ての国が対象となっています。その達成には政府だけでなく、自治体の取組みや民間の技術・知見・資金の活用が不可欠です。日本政府は国内地域でのSDGsの取組みが地域創生を推進するものと捉え、自治体、民間企業、市民社会、大学・研究機関等の多様な関係者とのパートナーシップのもと、地域が抱える課題解決に取組んでいくことを力強くバックアップしています。

このような気運を捉え、JICA九州では北九州市に次いで熊本県において、SDGsをテーマにしたセミナー開催しました。今回は、自治体、民間企業、市民、大学・研究機関に加え、新たに金融機関にも参画してもらい、「産官学金民」それぞれの立場から、SDGsの取組事例を紹介し、SDGsについて理解を深め、いかにSDGsを好機として捉えていくか、そのヒントを探る機会を熊本県の皆さんと共有しました。

ジェトロにおけるSDGsの取り組み -SDGs時代は攻めと守りで企業支援-

まず、ジェトロ熊本の奥泉所長から、ジェトロにおけるSDGsの取組が紹介されました。SDGsの認知度や経営(本業)への取り込みにおいて、日本企業は欧米企業に遅れをとっているものの、ESG投資や「ビジネスと人権に関する指導原則」といったSDGsとも関係性の高いルールや制度が増加する等、「SDGs型」のビジネス環境がもたらす自社ビジネスへの影響を認識しておく必要がある、との説明がありました。海外でのSDGsに対する認知が高まる中、企業がSDGsを認識しないまま海外ビジネスに参入するのは不利な状況になる、SDGsに対する「ノーアクション」は潜在的リスクにも繋がる、との説明がありました。

だからこそ、「SDGs型」のビジネスが期待されていることを逆に好機または新しいニーズと捉え、日本企業が国内で既に実践している課題解決に資する事業(SDGs事業)を、ルール形成も含めて新興国等に展開することが重要で、それにより新しいビジネスチャンスの創出に繋がる、とのメッセージが伝えられました。

基調講演 SDGs時代における地方創生 -誰が主役なのだろうか-

次に、ジェトロ・アジア経済研究所の佐藤寛上席主任調査研究員から、冒頭でSDGsが描く2030年の世界について紹介され、SDGsが自治体や企業だけでなく、市民にも密接に関係し重要性が高いと説明されました。特に、SDGsの考えとして、地球環境を損なうことなく、先進国の人も途上国の人も「それなりの生活」を続けられるようにする、という目標の達成のためには、日本人自身のライフスタイルの変革も必要になる、と提起されました。その中で、「SDG=(S)すっごく、(D)大胆な、ゆびきり(G)げんまん」と覚えてほしいといった紹介がありました。

また、参加者に対して、「SDGs時代の主役は誰だ?」という問いかけがなされ、市民社会、政府・地方自治体、多国籍企業、投資家、社会的起業家、中小企業、消費者、納税者、教育機関・研究機関(大学等)等、SDGs時代において期待されるそれぞれの役割について紹介され、SDGs型のライフスタイルに合ったバリューチェーンを見直すためには、消費者でもある私たち「全員」が賢くなっていく必要がある、との力強いメッセージが伝えられました。

JICAにおけるSDGsの取組み -地域の取組み、世界を変える-

次に、JICA九州 市民参加協力課 主任調査役/課長補佐の山下英志から、JICAの「SDGsの方針3本柱」やこれまでの取り組みについて紹介しました。JICAでは、国内で培ってきた取り組みを基にして開発途上国での協力を展開しており、最近では自治体や大学、市民団体といった地域アクターが主体となった国際協力の推進、地域の企業の海外展開支援等、国内地域と開発途上国を繋ぎ、双方が「win-win」となる事業に注力している、と紹介。

SDGsは日本国内も対象となり、各地域がそれぞれの課題解決やよりよい社会の実現に向け取り組んでいく必要があるが、その取り組みや事業こそが実は開発途上国が抱える社会・経済上の課題解決にも有益であると力説。特に、SDGsという「世界共通言語」を活用することで共通課題も発見しやすくなり、新たな事業展開にも繋がる可能性があると加えました。

最後には、JICAでは、そのような国内での様々な取り組み事業を開発途上国への協力に活用・動員すべく国内のアクターとの連携に強化しており、みなさんとの共創の場を創出することに今後注力していくので、ぜひ多くの方に参画いただきたいと呼びかけ、説明を終えました。

パネルディスカッション-「産官学金民」の取り組み事例-

続いて、「産官学金民」のそれぞれの立場からの取組事例の説明があった後、基調講演者の佐藤氏がモデレーターとなり、パネルディスカッションを行いました。「SDGs推進に取り組む意義、効果・メリット」、「地域創生とSDGsとの関わり」、「海外に向けた取り組み」、「SDGs推進に向けたパートナーシップの強化」等について、活発な意見交換が行われました。

パネリストからは、「あらためて見てみると、既存の取り組みでもSDGsと関係のあるものが多いことに気づいた」という意見が出されました。また、「今の取り組みは熊本地震の原体験の影響が大きい。様々な方がそれぞれのスキルを活かし活動する姿を目にする中、自分も『取り残されずに参画したい』という強い動機が生まれ、自分が持つスキルを震災後の復興に貢献できるか考えた結果、デザインで課題を解決するという活動に繋がった」、「いつでも自分たちでエネルギーを地産できれば、地震等の災害でも自分たちの生活を守ることができるという強い動機が今の活動を支えになっており、結果としてSDGsの『ゴール11住み続けられるまちづくりを』にも貢献すると考える」、といった熊本地震とのつながりについて示唆に富む意見も交わされました。

パネルディスカッションの最後に、今後各関係者とどのような連携を期待しているか、連携することにより、どのような相乗効果が得られそうか、それぞれの立場からお聞きしたところ、パネリスト間でも名前が挙がるなど、早速、今後の連携に繋がる機会となりました。

セミナーを終えて

参加者からは、「会社としてSDGsを推進し始めたばかりなので、セミナーを通じてSDGsについての理解を深めることができた。」「現在自分が取組んでいることが、SDGsとどう関係しているか、これからどういう取組みができるのか、パネルディスカッションを通じて、考えることができた。」「SDGsに取組んでいくべきと分かっていたが、何からどう始めてよいかが分からなかったため、ヒントを得ることができた」等の感想をいただきました。

「SDGs時代の主役は誰か?」

SDGs時代の主役は全ての方であり、それぞれが「自分ゴト」として取り組んでいくことが期待されています。また、SDGsは一部の人々によって達成されるものではなく、いかに多くの市民を巻き込んでいくかが重要です。今回のセミナーを通じ、様々なパートナーが多様な組み合わせで連携して「オール熊本」として取り組むことの大切さを共有できたと思います。

“地域が変われば日本が変わる、日本が変われば世界が変わる”をスローガンのもと、JICA九州としても引き続き地域のパートナーと連携してSDGs推進に取り組んでいきたいと思います。

パネリスト

「産」:自然と未来株式会社 三苫智子氏
    株式会社日本リモナイト 熊本営業所 津田美矩氏
「官」:小国町政策課 審議員 白浜真治氏
「学」:熊本県立大学 文学部教授 石村秀登氏、環境共生学部教授 石橋康弘氏
「金」:肥後銀行 経営企画部サステナビリティ推進室 副企画役 高田賢治氏
「民」:一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO 代表理事 佐藤かつあき氏

(注)登壇者プロフィールは関連ファイルを参照

JICA九州では、引き続き「産官学金民」と連携し、地域創生への貢献とSDGの推進に取り組んでいきます。

【画像】

パネリスト、参加者の皆様との記念写真

関連ファイル(公開可能資料のみ)