九州SDGs通信2019年8月号 鹿児島で「地域創生×SDGsセミナー」を開催しました!

2019年8月8日

JICA九州はSDGsに関する地域向けのイベントを九州各県で開催しています。北九州、熊本、長崎に続き、7月23日(火)に鹿児島市内で、ジェトロ鹿児島およびジェトロ・アジア経済研究所共催の下、「地域創生×SDGsセミナー:地域の取組みが世界を変える-『産官学民』のSDGs取組事例を中心に-」と題して開催しました。

当日は最高気温が33度を超える猛暑にもかかわらず、会場となったTKPガーデンシティ鹿児島中央には60名近くの方々に参加いただきました。鹿児島でSDGsを実践している個性豊かなパネリストの方々から本音ベースの話が飛び出すなど、会場とステージが一体となった白熱したイベントの様子をご紹介します。

セミナー開催の趣旨

「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の具体的な行動計画として示されました。SDGsでは、「誰一人取り残さない」を理念に掲げ、日本を含む全ての国が対象となっています。その達成には政府だけでなく、自治体の取組みや民間の技術・知見・資金の活用、そして市民の行動が不可欠です。日本政府は国内地域でのSDGsの取組みが地域創生を推進するものと捉え、自治体、民間企業、市民社会、大学・研究機関等の多様な関係者とのパートナーシップのもと、地域が抱える課題解決に取組んでいくことを力強くバックアップしています。

こうしたSDGsに対する気運を捉え、今般、鹿児島市において、自治体(官)、民間企業(産)、市民(民)、大学・研究機関(学)等を対象にSDGsについて理解を深めるとともに、SDGsを好機としてどのような取り組みができるか、そのヒントを得ることを目的として、今回の「地域創生×SDGsセミナー」を企画しました。セミナーでは「産・官・学・民」それぞれの立場からSDGsの取組み事例を紹介するとともに、どのようにパートナーシップを組んで進めていけばよいか等について意見交換を行いました。

主催者挨拶「海外ビジネスにおけるSDGsへの期待」

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ジェトロ鹿児島永盛明洋所長

まず、主催者挨拶に続き、ジェトロ鹿児島の永盛所長から、「海外ビジネスにおけるSDGsへの期待」というテーマでお話いただきました。永盛所長からは、「SDGsは大きな国際標準=ルールであり、ルールが動くとビジネスにも影響が波及していく」とし、選ばれる企業になるために下記の3点を強調されました。1)自社のSDGs貢献を発掘し、いち早く取り組みを拡大・発信することで新たな差別化戦略につなげる!2)大きな国際標準のSDGsでPDCAを回し、経営を鍛え直してみる。SDGsの取り組みをコストダウンにつなげる!3)自社製品・サービスをSDGsのものさしで評価してみる。思わぬ付加価値や見落としていたリスクを発見し、自己改革につなげる!

【基調講演】「SDGs時代における地方創生」

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ジェトロ・アジア経済研究所 佐藤寛上席主任調査研究員

次に、ジェトロ・アジア経済研究所の佐藤寛上席主任調査研究員から「SDGs時代の主役は誰だ!」と題し、「誰が主役なのだろうか」といった会場への問いかけテーマをもって基調講演を発表いただきました。

SDGsでは「地球全体の持続可能性」が問われており、先進国に住む私たちにとって決して「他人事」ではないとの指摘がありました。例えば、我が国では外国人労働者の問題(人権問題)や介護労働へのニーズ(日本の高齢化対策)は切実になっており、市民社会の役割はますます重要となるとともにSDGsの接点が大きくなっているとの説明がありました。また、企業にとって「社会課題」に取り組む理由として、サプライチェーン・マネジメントをあげ、リスク回避の観点からも「社会的責任/倫理性」の視点を取り入れることは必然となるとし企業への理解を促すとともに、新たなビジネスチャンスに繋がる機会にもなっていることを具体的な企業の取組事例を紹介いただきました。

SDGsとJICAの取組み

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JICA企画部(SDGs推進班)小田亜紀子参事役

次に、JICA企画部(SDGs推進班)の小田亜紀子参事役から、持続可能な開発を阻むものとして、1)気候変動、2)都市化、3)資源・エネルギー・食料の問題があり、これらは開発途上国と先進国が共通して直面するグローバルな課題である。「取り組むか取り組まないか」ではなく、「どう取り組むか」といった段階にあり、企業ではSDGsと「本業」をからめ、国内外の課題解決に取り組む動きが加速しているとの指摘がありました。

また、JICAのビジョン「信頼で世界をつなぐ」について、SDGsの理念「誰一人取り残さない」と高い親和性を持っており、途上国のSDGs達成にはパートナーシップとイノベーションが必須であるとの説明があり、日本企業が自社の製品・技術を活用して途上国の課題解決に取り組んでいる事例紹介を行いました。発表の締めくくりとして、SDGsは多様なパートナーをつなぐ共通言語。JICAも途上国・日本の地域・パートナーをつなぎ広げる役割を担いたいという想いを述べました。

【パネルディスカッション】「産官学民」の取り組み事例

続いて、「産官学民」のそれぞれの立場からの取組事例の説明があった後、基調講演者の佐藤氏がモデレーターとなり、パネルディスカッションを行いました。「SDGs推進に取り組む意義、効果・メリット」、「鹿児島のSDGs的な売り・強み」、「誰とパートナーシップを組むか」等について、活発な意見交換が行われました。
パネリストからは、「人口減少というマイナス面ではなく、地域の良い面に目を向けることが大切」、「人と人との距離感が近いといった地方の強みがSDGsに活かせるのでは」という意見が出されました。また、「鹿児島は農林水産業に強みがあり、鹿児島県としての食糧自給率は84%と高い」ことから「持続化可能な社会にtransform(我々の世界を改変する)がしやすいのではないか」、といった前向きな意見も交わされました。
パネルディスカッションの最後に、今後各関係者とどのような連携を期待しているか、連携することにより、どのような相乗効果が得られそうか、それぞれの立場からお聞きしたところ、パネリスト間でも具体的に名前が挙がるなど、早速、今後の連携に繋がる機会となりました。

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左から、一般社団法人リバーバンク 坂口修一郎代表理事、鹿児島銀行 松野下秀峰経営統合推進室長兼サステナビリティ推進室長、鹿児島相互信用金庫 そうしん地域おこし研究所 本永謙介課長、大崎町企画調整課政策調整係 中野伸一参事、株式会社そらのまち保育園 古川理沙代表取締役会長、鹿児島大学 法文学部法経社会学科 酒井佑輔准教授、枕崎水産加工業協同組合 総務部 小湊芳洋参事

セミナーを終えて

SDGsセミナーは九州各県で順次開催しており、今回で4回目となりましたが、会場には多くの参加者にお集まりいただくなど、SDGsの関心が高まっているのを実感しています。
参加者からも、「それぞれの事業活動と各専門機関、民間企業がSDGsで定められた指針とうまく連動されていると感じた」「日々生活している中で、SDGSが深く関わっていることが分かった」「地域や世界の持続可能性に資するこれほど多様なステークホルダーが鹿児島にいることに驚いた」等の感想をいただきました。

「SDGsを自分ごととして考える」

SDGs時代の主役は全ての人であり、それぞれが「自分ゴト」として取り組んでいくことが期待されています。パネリストの方からも、「組織としての取り組みのほかに、各自それぞれが、SDGsを理解したうえで、自らが達成したいゴールを設定し、『My SDGs 宣言』を表明する」という取り組みが紹介されました。皆さんも、これを機会に身近なところからSDGsに取り組んでみませんか。
“地域が変われば日本が変わる、日本が変われば世界が変わる”をスローガンのもと、JICA九州としても引き続き地域のパートナーと連携してSDGs推進に取り組んでいきたいと思います。

パネリスト

「産」:
株式会社そらのまち保育園 代表取締役会長 古川 理沙氏
枕崎水産加工業協同組合 総務部 参事 小湊 芳洋氏
「官」:
大崎町 企画調整課 政策調整係 参事 中野 伸一氏
「学」:
鹿児島大学 法文学部 法経社会学科 准教授 酒井 佑輔氏
「金」:
鹿児島銀行 経営企画部 経営統合推進室長 兼 サステナビリティ推進室長 松野下 秀峰氏
鹿児島相互信用金庫 そうしん地域おこし研究所 課長 本永 謙介氏
「民」:
一般社団法人リバーバンク 代表理事 坂口 修一郎氏
JICA:
JICA企画部(SDGs推進班)参事役 小田 亜希子

(注)登壇者プロフィールは関連ファイルを参照

JICA九州では、引き続き「産官学金民」と連携し、地域創生への貢献とSDGの推進に取り組んでいきます。

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セミナー参加者でSDGs17の目標を掲げて記念撮影

関連ファイル(公開可能資料のみ)