九州SDGs通信2019年11月号 佐賀で「地域創生×SDGsセミナー」を開催しました!

2019年11月15日

JICA九州はSDGsに関する地域向けのイベントを九州各県で開催しています。北九州、熊本、長崎、鹿児島に続き、11月12日(火)に佐賀市内で、ジェトロ佐賀、ジェトロ・アジア経済研究所、株式会社佐賀銀行との共催の下、「地域の取組みが世界を変える-「産官学金民」のSDGs取組事例を中心に-」と題して開催しました。

佐賀の地域特性を生かしながら、佐賀らしいSDGsの取組を推進していくためにはどうすればよいかについて、佐賀県内の様々なアクターが活発に議論し、交流を深めました。

(注)セミナーの概要については、こちらのプレスリリースをご参照ください。

基調講演「海外ビジネスとSDGs」

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ジェトロ佐賀 吉田健所長

吉田健・ジェトロ佐賀所長からは、自社の事業を通じてSDGsに積極的に貢献している中小企業の取組み事例が紹介されるとともに、ジェトロが2019年3月に実施した中小企業向けアンケートの結果を踏まえて、中小企業の方々がSDGsを「大企業からの発注条件として入ってくる」「新ビジネスのきっかけとなる」などのビジネス機会として捉えていること、また、逆にSDGsに取り組まなければ取引先や入札資格を失ったり、新興国における人材確保の面で他社の遅れをとってしまう可能性があることと認識していると紹介されました。

基調講演「SDGs時代の主役は誰か」

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ジェトロ・アジア経済研究所 佐藤寛上席主任調査研究員

次に、ジェトロ・アジア経済研究所の佐藤寛上席主任調査研究員からSDGsが策定された経緯・目的及びSDGs実施における各主体の役割が紹介されました。そして、企業は、SDGsへの取組みを単なる慈善的な活動としてではなく、自社のサプライチェーンに潜む様々なリスクを再点検するためのツールとして捉えるべきと説明されました。具体的には、SDGsが謳う持続可能性の実現に向けた責任ある行動をとらない場合には、企業は優秀な人材を確保することが困難になったり、自社の製品がボイコットの対象となるリスクがあるということです。
日本企業の中には、「三方良し」の理念を掲げている企業も少なくないですが、会社の理念や事業の目的が崇高なものであることに安住せず、事業の実施面でも高い倫理性が求められていることが強調されました。

基調講演「SDGsとJICAの取組み」

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JICA九州市民参加協力課 山下英志主任調査役

次に、JICA九州の山下英志主任調査役から、JICAのSDGs推進に対する取組みを紹介するとともに、佐賀県での具体的事例に言及しながら、SDGsの推進が地域創生にも貢献することを説明しました。その際、地域創生に向けた新たな取組みとして、2019年10月に、熊本県とJICAとの間で、将来開発途上国及び熊本県の経済・産業を支え、多文化共生社会の実現に貢献する人材の育成を目的に、連携協定を締結したことも紹介しました。

<参考>熊本県との連携協定の締結

パネルディスカッション:SDGs推進に向けた「産官学金民」の取り組み

続いて、「産官学金民」を代表して以下の方々にパネリストとしてご登壇いただき、各主体のSDGsに関する取組みをご紹介いただいた後、佐藤氏のモデレーションの下で、「SDGsに取り組みメリットをどのように感じているか」「SDGsの推進に向けた新たに着手した取組み」「SDGs推進に向けた連携したいパートナー」といったテーマについて意見交換を行いました。

「産」:
株式会社オプティム 事業統括本部九州支社 リーダー 細見 純氏
「官」:
佐賀県 政策部政策課 政策第二担当係長 大坪 耕介氏
「学」:
学校法人佐賀龍谷学園 龍谷中学校・高等学校 副校長 陣内 陽子氏
「金」:
佐賀銀行営業統括本部営業支援部 地域サポートグループ長 吉川 一郎氏
「民」:
認定NPO法人地球市民の会 副理事長 大野 博之氏
モデレーター:
ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員 佐藤 寛

(注)登壇者プロフィールは関連ファイルを参照

「佐賀県内でSDGsに関連する様々な取組みが行われているが、『敢えて言わない』という県民性からか十分に周知・広報できていないことが課題である」、「SDGsに関する理解知識は予測不能な社会で生き抜くリーダーとして必須の素養である」、「外国人に選ばれる佐賀になっていく必要がある」、「社会問題に取り組む上で必要な現場の具体的なニーズの把握は容易ではない、現場の知見に強みを持つNPO/NGOが現場のニーズを企業に橋渡しする上で大きな役割を持つ」といった意見が出されました。

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パネルディスカッションの様子(左から、佐賀県 政策部政策課政策第二担当 大坪 耕介係長、株式会社オプティム事業統括本部九州支社 細見 純リーダー、学校法人佐賀龍谷学園龍谷中学校・高等学校 陣内 陽子副校長、佐賀銀行営業統括本部営業支援部地域サポートグループ 吉川 一郎グループ長、認定NPO法人地球市民の会 大野 博之副理事長)

セミナーを終えて

佐賀県では、今年10月に「佐賀SDGs官民連携円卓フォーラム」が立ち上がるなど、SDGsの推進に向けて多様なアクターが連携を進めていく機運が高まっていることを感じました。また、AIを使った「スマート米栽培」、得た資金の一部を教育分野の寄付に充当する私募債発行、新興国での高齢化社会を見据えた県内と新興国をつなぐ介護事業支援、中高生に対して自分たち自身がSDGs推進のリーダーとなる意識付けを行う教育など、既に佐賀県において様々な取組みが行われていることも確認できました。

今後より重要となってくるのは、今回一同に会した様々なアクターが、今後も継続的に情報・意見交換を続け、佐賀県内においてSDGsに対する意識をより一層高めていくこと、また持続可能な社会の実現に向けた具体的な協働を一歩ずつ進めていくことです。JICA九州は、引き続き佐賀県の「産官学金民」と連携し、地域創生への貢献とSDGの推進に取り組んでいきます。

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セミナー参加者でSDGs17の目標を掲げて記念撮影

関連ファイル(公開可能資料のみ)