キーワードは「継続は力なり」

平成24年度JICA九州所長感謝状受賞者 団体の部

【写真】中嶋英二郎(なかしま えいじろう)さん株式会社中島ターレット 代表取締役
中嶋英二郎(なかしま えいじろう)さん

【画像】株式会社中島ターレット社には、JICA九州が担当する産業技術分野の研修コースで平成19年以来31回にわたり研修員受入れにご協力いただきました。同社の生産現場における5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の実践状況は研修員に大きな影響を与えており、その取り組み手法を自国で実践し成果を上げている研修員も数多くいます。

今般、所長感謝状を受賞された中嶋英二郎氏にお話を伺いました。

JICAの事業にご協力いただくきっかけとなった出来事は?

北九州国際技術協力協会(KITA)の宮本正氏から、海外からの研修員を連れて訪問したいとの依頼を受けたのが5年ほど前。それ以降、JICAの生産性向上に関連する研修コースを受入れてきた。実は、今回の受賞は青天の霹靂で、当社が受賞の対象になるとは思っていなかった。研修員の受け入れを始めたのはKITAの宮本氏との縁がきっかけであり、海外からの研修員が当社を見学に来ることで、従業員も自分たちの取組が他者から認められている事を知る機会になっているので、自分たちの達成感を感じる事が出来、自社にとっても都合が良かった。

社内で5Sや改善活動を定着させるためにどの様な努力がありましたか?

【画像】私の会社は中小企業なのでスタッフが少ない一方で年長者や経験者がほとんどであるため、当初は5Sや改善活動を導入しようとしてもなかなか成果が現れず、中小企業が5Sや改善活動を取り組む際の難しさに直面していた時期があった。
その様な中、福岡県のアドアイザーやKITAの宮本氏に相談し、自らの取組が間違っていないことを信じながら継続してきたことが今日につながっている。宮本氏の話の中で、「まずは経営者が自ら実践し従業員にその姿を示すことが大切だ」という言葉は非常に印象深く心に残っており、それを実践してきた結果が今日の姿だと思っている。
経営者と従業員の間にはギャップがあることを認識する必要がある。従業員に日常の仕事プラスαを求めすぎると従業員の負担増につながることを理解し、長い目で取り組むことが重要だと思う。経営者は5Sや改善活動を経営の一環として取り組もうとする一方で、従業員にとってみれば「やらされ感」が伴う場合も多いと思う。経営者は、従業員の「やらされ感」を無くしていくような努力が必要だと思う。5Sや改善活動を通して仕事のロスが減り、取引先から信頼されるようになると、結果として従業員の生活にも良い影響になる。そのためには、従業員全員で5Sや改善活動という道具を共有し、実践する必要があると考え、自らも実践してきた。従業員の生活を先ず大事に考え、その為に経営者として出来ることに取り組んできた。

日本に来る研修員に伝えたいメッセージはありますか。

5S活動や改善活動の成果がすぐに現れなかったとしても、粘り強く継続することの重要性を伝えていきたい。海外の生産現場は日本の現場と異なり、想像し難い困難を乗り越える必要があると思うが、自らの経験から、取り組みを続けることにより徐々に変化が現れてくるものである。この様な自分の経験を研修員に持ち帰ってもらいたい。

JICAに対する期待は?

【画像】JICAの海外そして国内のネットワークは幅広い。このネットワークはJICAの強みであり、広く国民に還元してほしいと思う。途上国の情報に日常的に接しているJICAから、海外の情報を発信する取り組みを続けてほしいと思う。これからも研修員受け入れに出来る限り協力していくので、JICAも地域とのつながりを大切にしながら海外と日本の現場をつなぐ仕事をしていってほしい。

【JICA九州担当者より】
中嶋代表取締役、株式会社中島ターレット社員の皆様、日頃よりJICAの研修員受け入れにご協力いただき、誠にありがとうございます。
各研修コースの最後に研修員に印象に残った訪問先について話を伺うのですが、多くの研修員から株式会社中島ターレットが印象に残った取り組みとして挙げられます。最近、関係者がベトナムの帰国研修員を訪問する機会があったのですが、その研修員の会社は日本の大手製造業の部品を納入する程にまで成長しています。帰国研修員にその要因を聞いたところ、5Sや改善活動をきちんと実践し、日系企業から信頼される職場を作ったことにあるとのことでした(写真)。この様に、帰国した研修員は着実に成果をあげています。
改めて御礼申し上げるとともに、引き続きご指導、ご鞭撻のほど、お願いいたします。