独立行政法人 国際協力機構 九州国際センター 所長
勝田 幸秀(かつた ゆきひで)
今年3月、JICAタンザニア事務所よりJICA九州に所長として赴任した勝田 幸秀所長の素顔にせまるインタビュー記事をご紹介いたします。
「途上国が面白い」と思ったからです。そのきっかけは、大学生の頃に旅行が好きで、オートバイで国内のいろいろな所を、テントを載せて自炊もしながら旅をしていて、一度くらい「海外も行こう」と思って出かけたインド旅行です。30年以上も前のインドなので、今よりずっと貧しいところがあって、列車から降りると物乞いに取り囲まれたり、人力車の車夫達が客である私を取り合ったりしていました。印象的だったのは、夕方、列車に乗っていたら、列車の屋根の影がでこぼこになっているのが見えて、それは満員で車内に乗り切れなかった人たちが屋根に乗っていたからでした。私は指定席にいて「なぜ、一介の若い大学生の私がこんなところでゆったり座っているのか・・・」など、いろんな事を考えるきっかけとなりました。
そんなインドでのいろいろな体験がもとで、「途上国に役に立てる仕事がしたい」と思うようになり、この道に進みました。
私の海外赴任はタンザニア2回とジンバブエで、いまから20年以上前、30代前半の時にタンザニアに1回目の赴任をし、2回目はここJICA九州に来る直前で、通算で6年半いました。ですので、印象に残っている国はやはり「タンザニア」です。
初めのタンザニア赴任から20年後に、改めて赴任した時に「いまだに援助が必要な状況である事」、「20年前と同じく、貧しい人が、貧しいままでいる事」という現実を見て、悔しい思いをしました。私たちの仕事というのは、援助が必要とならないように自立してもらうこと、つまり、私たちが必要でなくなることを最終目標にしていますから。残念ながら、JICAがやるべきことはまだまだ沢山ありました。
プライベートな話になりますが、1回目の赴任は家族と一緒で、三男はタンザニアで産まれたので、現地の方たちも非常に歓迎してくれました。その意味ではタンザニアは、子供の出身地でもあるので非常に印象に残っている国なのです。
私がアフリカにいたから言うわけでないのですが、これからの世界は「アフリカ中心」になることは間違いないと思います。これはTICAD(アフリカ開発会議)の際にも、多くの方がそう仰っています。
九州にとって地理的に近いアジア各国が重要だというのは、変わらないと思いますが、アジアに目を向けているのは九州の方だけではなく、日本中の方が注目しています。しかし、アフリカに行っている日本人はまだまだ少ないです。けれど、中国やインド、あるいはヨーロッパ各国やアメリカ、カナダの人たちは沢山、アフリカに行っています。だからこそ、日本人があまり行っていない今、行かないと、フロンティアとしての先駆者利益を取れなくなると思います。
アフリカは日本人のみなさんが想像するほど、怖いところではないですから、是非とも、九州の方々にもアフリカに行って欲しいと思います。
「JICAの業務を通してどうやって九州の元気に貢献できるか」という思いがあり、JICAを通じて九州がもっともっと「元気」になって欲しいと感じています。そして、途上国の為になり、九州の為にもなるような「Win×Winな国際協力活動」を積極的に展開したいと思っています。また、それを決して義務感でやるのではなく、楽しく、元気になれる「仕事」になればいいと思っています。
私は「九州の人は熱い!」と思います。それは、私だけではなく、JICA九州で働いた経験がある現在は東京のJICA本部にいる人も言っていました。「九州の人は熱くて熱心」ですから、我々はそれに応えなくてはいけないと思っています。
あまり、宣伝したくないのですが・・・(笑)「合気道」なんです。
大学生の時に始めて、社会人になってからは、ちょっとやって、すぐ挫折したりして出来なくて、その後、1回目のタンザニアから日本に戻ってきた時に本格的に再開しました。仕事が忙しくて稽古になかなか行けないので、密度は薄いのですが、今まで何とか続いています。JICA九州のすぐ近くに市の柔剣道場があって、今が一番、合気道の稽古に通う回数は多いかもしれません。前任地のタンザニアでも、タンザニア人と一緒に稽古をしていました。けれど、タンザニア人なので、時間通りに来なかったですね(笑)
普通のホールなので、畳を敷くところから始めるわけで、はじめの頃は、一人で暑いので汗びっしょりになって畳を敷いて、その後に雑巾がけをして、終わった頃になると、ポツリ、ポツリとタンザニア人が来る状況でした。でも、一年くらい経ってから、全員ではないですが、何人かは先に来るようになって、一人で雑巾がけをすることは無くなりました。
考え方の上ではあります。
真正面から相手にぶつかるのではなく、相手を徹底的に打ちのめすわけでもなく、相対的な勝ち負けにこだわらずに、でも絶対的な強さを求めながら相手と調和するという考え方が、合気道のひとつの哲学みたいなもので、気持ちとしては、いつもそんな考え方を仕事の上でも役立てたいと思っています。なかなかうまくいかないですけどね。
JICAというのはそんなに敷居の高いところではないので、お気軽にJICA九州にお越し頂いたり、何かあれば是非、ご連絡を頂いたりできれば幸いです。