JICA研修員(ABE ・早稲田大学大学院)
ダウディ・タマウリ・キトゥンドゥさん
今回の「人」明日へのストーリーは、JICAの長期研修員(ABEイニシアティブ)として早稲田大学大学院情報生産システム研究科の修士課程に在籍されているダウディ・タマウリ・キトゥンドゥさん(ダウディさん)です。
ダウディさんは4月から京都でインターンシップを始められる予定で、将来はタンザニアでの起業を目指していらっしゃいます。
そこで、今回はダウディさんに母国タンザニアのことや修士課程での研究内容、日本の生活について、また今夏横浜市で行われるTICAD7(第7回アフリカ開発会議)についてもお聞きしました。
タンザニアは東アフリカに位置していて、ケニアやウガンダといった国が近くにあります。北側のケニアとの国境には有名なキリマンジャロ山があり、また国全体としても多くの面積を森林やサバンナが占めています。多くの国立公園が世界遺産にも指定され、ゾウやライオンも多く目にすることができます。またナイル川もタンザニアの北部にあるヴィクトリア湖が源流なんです。そのナイル川や東側にあるインド洋で魚が多く釣れるので、私たちは魚もよく食べます。
言語はスワヒリ語と英語が公用語です。主食の一つは米ですが、日本のお米とはちょっと違いますね。タンザニアではお米に少量の油と塩を入れて炊いています。お祝いの席ではこれに野菜や肉など具材を入れたピラウというご飯を食べるんです。他にも普段だとトウモロコシを挽いた粉にお湯を入れて練ったウガリというものを食べています。どれもおいしいので是非食べてみてください!
早稲田大学北九州キャンパスにて学ばれました。
私は自動文字認識システムについて研究しています。最近では車のナンバープレートを自動で認識するシステムがありますよね。カメラが数字や文字を認識して判断します。携帯のカメラでも可能です。スマートフォンに、「あそこに書いてある文字を読み取って」と呼びかけるとカメラが文字を読んでくれます。目の不自由な方にとってはとても便利で有用な機能ですが、現在課題とされていることがあります。ナンバープレートをはじめ、パソコンで作成された書類などに書かれた文字や文章は、水平な面に直線できちんと横並びに書かれているので、カメラも即座に認識することが可能です。しかし、そうではない場合はどうでしょうか。例えば、スポーツ選手のユニフォームについて考えてみてください。選手の名前が背中にローマ字で書かれていますが、選手が動くとユニフォームの生地も歪むので文字が曲がって見えるようになりますよね。人間の目であれば補正するので即座に読んで理解することが可能ですが、カメラはうまく認識できません。他にも認識が難しいものは多くあります。街中の広告でも最近では様々な文字の形があり、波打つように書かれているものもあるので、そういったものは読み取りづらいです。そこでそのような文字列や文章も認識できるようなシステムを開発することに私は取り組んできました。実験では、マラソンランナーのナンバーカードを読み取るといったこともしましたね。
このテーマを選んだ理由は、タンザニアに戻っても研究が続けることができ、 また多くの人々を助けられるからです。実験を行うには資料が必要ですが、自動文字認識を行うための実験材料はインターネットで検索すれば材料を集めることができます。もし曲がった文字や歪んだ文字をカメラで認識できる高度なシステムを開発できれば、目の不自由な方々の生活を助けることができるでしょう。これからも研究を続けていきたいと考えています。
インターン先の会社は、医療機械のメーカーでアフリカの数か国に展開しておりタンザニアとも取引があります。そこで、タンザニアの医療機関とより良いコミュニケーションをとって強固な関係を築くことができるように仲介する役割を任される予定です。
タンザニアにいる時から日本の機械がどれだけ精度が高いかよく知っていましたし、もちろん高価ではありますが本当に素晴らしいものが多いです。このインターンシップを通して少しでも母国タンザニアに貢献し、日本との関係性を強化したいと思っています。
将来はタンザニアで起業をして経営者になろうと思っています。新しいビジネスを始めて人も雇うことになりますが、日本で学んだことを取り入れたいと感じます。その一つがKAIZENです。日本のKAIZEN運動は素晴らしい取り組みですし、どんなビジネスも成長させることができるはずです。
また子供たちの学びを助ける活動も行いたいですね。タンザニアには、技術的な科目の勉強を苦手とする子供たちが多くいます。そのような子たちの助けとなるような活動を行って、彼らの進路の選択肢を増やしてあげるなど、成長させてあげたいと思っています。以前にも同じようなプロジェクトをやりましたが、あまりうまくいかなかったのでもう一度取り組みたいです。
方法は様々ありますが、社会に貢献できることをしたいと思っています。
茶道をはじめ、多くの日本文化を体験されたダウディさん
日本で一番驚いたことは電車やバスが正確な時間に来て、正確な時間に着くことです。ダルエスサラームの都市内の交通手段は主にバスなので、電車を利用することはほぼありませんでした。バスは本数も多いんですが、市内の多くの箇所で渋滞が発生するので、まず時間通りに着くことはありません。日本に来て電車も乗るようになりバスもよく利用していますが、どちらも時刻表通りに乗ることができて目的地に着くこともできる。本当に素晴らしいし、驚くべきことです。最近では、時刻を調べるだけではなくバスや電車が今どこまで来ているか知ることのできるアプリもありますよね。とても便利でよく使っています。タンザニアの交通システムにも時刻表やこのようなアプリを提案したいです(笑)
私はABEイニシアティブを通して日本に留学していますが、今では私のような多くのアフリカ人留学生が日本で勉強することができています。確かにアフリカ全体のことを考えると留学生の数は十分ではないかもしれませんが、日本の素晴らしい技術や取り組みを学ぶことができ、また交流も深まりつつあります。一方でアフリカの国々と日本の企業の関係性を考えると、日本企業の多くがアフリカの未開拓の市場に参入できていないという事実があります。アフリカの多くの地域は発展途上ですし、新たなビジネスを展開するチャンスは多いです。だからこそ私は、今回のTICAD7がより多くの人々と企業にとってアフリカのことを知るきっかけとなり、協力関係を築くことができれば良いと思っています。そして我々のようなアフリカ人留学生が、国々と日本の企業を繋ぐ架け橋となることができれば良いですし、双方にとって利益となれば理想的だと思います。
Asante!!
インタビューを快く引き受けてくださったダウディさん。とても優しい方で、質問にも丁寧に答えてくださいました。また修士課程での研究にも熱心に取り組まれ、将来の目標に向かって努力をされている姿が印象的でした。ダウディさんの今後の活躍を心から願っています。ダウディさん、Asante!!(スワヒリ語で、ありがとう の意)
取材/文章 JICA九州インターン 松尾 慧(慶應義塾大学)