持続可能な発展のために—「第二の母国」でICT教育の可能性を探る—

【写真】Mr.SOKOUT Hamidullah (スクートさん)熊本大学自然科学研究科 博士課程
Mr.SOKOUT Hamidullah (スクートさん)

 熊本大学自然科学研究科の博士課程に在籍されているスクートさんは、来月7日にアフガニスタンへ帰国されます。スクートさんはアフガニスタンを対象としたPEACE(未来への架け橋・中核人材育成プロジェクト)の研修員です。早期に論文を終わらせたり、熱心に研究に取り組んだりと、非常に勤勉な姿勢が印象的なスクートさん。今回、研究内容や将来の展望、日本での生活に関してお話を伺いました。

日本へ留学した経緯

研究に励むスクートさん

 コンピューターが好きで、アフガニスタンの大学ではコンピューター科学を専攻しました。その後アフガニスタンの首都にある国公立大学で講師として働くなかで、高等教育省を通してJICAが提供するPEACEプロジェクトを知りました。8年近く経つ今でも、応募したその日のことを覚えています。PEACEプロジェクトでは、渡航前に研修を受け、英語や数学の知識を蓄えました。9か月間にわたる研修後、最終試験を受け正式に長期研修員として日本へ行く資格を得ました。2013年から神戸大学にて主にICT教育に関する研究を行い、2015年に卒業しました。その後帰国し、2年間講師として復職した後、もう一度PEACEプロジェクトを利用して日本へ戻り、(神戸大学は当時博士課程のプログラムを提供しておらず、神戸大学の教授の推薦により)ここ熊本大学にて無事博士号を取得することができました。

日本での生活

 日本に滞在する中で、いくつかの困難はありましたが、特に大きな問題に直面したことはありません。言葉に関していえば、熊本大学に来た1年目に大学が提供する日本語講座を履修しました。その授業で基本的なレベルの日本語を学び、生活に役立てました。また、同じく1年目に教授が日本人学生のチューターを割り当ててくださり、彼が携帯電話や銀行口座の手続きといったことをサポートしてくれました。その後はなるべく自分の力で手続等を済ませています。実は、私は妻と娘と一緒に熊本に住んでいるのですが、娘は日本で生まれました。つい最近彼女のパスポートを手に入れたところです。大学のキャンパス近くに産婦人科があり、医師の方は英語を話せたため、非常に快適な環境で娘の誕生を迎えることができました。休日は家族で買い物に出かけたり、熊本在住のアフガニスタン人の友人宅を訪問したりしました。

ICTがもたらす可能性

沖縄で開かれた学会にて

 現在、ICTは幅広い分野に適用され得る非常にポテンシャルが高いフィールドであると考えています。また、私自身のキャリアを通して、ICTは持続可能な発展を達成するために重要なものであると思います。例えば、アフガニスタンのような開発途上国では、持続可能な発展のために、人材を育成することが強く求められています。実際に、教育者としてアフガニスタンの大学で働く中で、私たちが目指していた目標は、「人材資源の育成」です。しかし、COVID-19が教育システムに大きな打撃を与えていることからも分かるように、この目標は、ICT教育(e-learning)の教養がないと達成が不可能だと思います。そのため、私がこれまで学んできたことをアフガニスタンの教育分野に還元し、「教える」「学ぶ」の質を向上させたいと考えています。これにより、国内の教育システムやポリシーの改善を働きかけることにも繋がるのではないかと考えています。私にとって、この分野を日本という先進国で学ぶことができる機会は、極めて貴重なものであり、この機会を最大限に活用するため、与えられたほとんどの時間を研究に費やしました。

 母国の持続可能な発展のために、日々研究に励んでこられたスクートさん。多忙な研究生活にも関わらず、日本にいながらアフガニスタンの学生にオンラインでの講義をしていたそうです。インタビューを通して、強い責任感や使命感とともに、日本への大きな愛情と感謝が伝わってきました。近い将来、アフガニスタンと日本の架け橋としてご活躍されることを心から願っています。

 取材/文章 JICA九州インターン 鳥羽乃愛(長崎大学)