きれいな川を世界へ!

【画像】森下 正人(もりした まさと)さん

紫川を愛する会
森下 正人(もりした まさと)さん

今回の主役は紫川を愛する会の世話人をされている森下正人(もりしたまさと)さんです。森下さんは2011年の3月まで北九州市役所で働かれていて、今後はシニアボランティアとしてマレーシアで活動をされる予定です。定年退職した後でも、積極的な人生を送っていらっしゃる森下さんにスポットを当てたいと思います。

Q ボランティア活動を始めたきっかけは何ですか。

1989年にJICA九州が八幡に設立されたと同時に、北九州市と共同の第一回目の環境関連の研修コースである産業環境対策コースがスタートしました。その際に、環境科学研究所に勤めていて講師をしたのがJICAとの最初の関わりです。英語で研修員と話し始め、国際環境協力に興味を持ち始めました。それから1992年に北九州市から市の職員としてKITA(財団法人北九州国際技術協力協会)の環境協力センターに派遣され、6年間JICAの国際研修などに従事しました。それまでは、理化学や微生物についての試験・検査などしかしたことがありませんでしたが、この経験によって人との交流をするようになったのがボランティア活動に興味を持ったきっかけですね。紫川は地元の川であるし、愛する会には市役所のOBもたくさんいたので参加することにしました。定年が無く自分のやる気があればいつまでも続けられるボランティアにはやりがいを感じています。

Q 仕事とボランティアの両立で大変だったことは何ですか。

月曜日から金曜日までは仕事をして休日、特に土曜日の午前中にJICAからの研修員に川をきれいにする講義をし、川に実際つれて行きゴミ掃除などをしました。もともとボランティアは好きで興味があったし、楽しんで活動しているので大変だと思ったことはありません。

Q 若い人は紫川を愛する会でどのような活動をされていますか。

地元の大学生と協働して、年1回大規模な紫川清掃活動をしています。子供と一緒にアユの放流活動や清掃活動も行なっています。10月にハゼ釣り大会を開くのですが、川のきれいさを実感するためにハゼを食べます。実はハゼを釣って食べられるのは東京・名古屋等の大都市を流れる川の中では紫川だけです。川に落ちているごみを拾う義務は誰にもないので、放置したままだと食べられるような魚が育ちません。市民が日頃から「川を汚さない」という強い意志を持ってきれいな川を維持しなければなりません。この維持が非常に難しいのですが、紫川ではそれが達成できています。

Q 紫川を愛する会が国内の環境保護団体と違うことは何ですか。

東京では隅田川、名古屋では堀川をきれいにする会と連携し年一回集まって報告会を開いています。中でも、紫川を愛する会だけがインドネシア及びフィリピンの海外の環境保護団体と交流を深め、国際協力活動を行なっています。紫川を愛する会では毎年6月と9月に川のゴミ掃除を地元の大学生や市民、JICAの研修員と一緒に行なっていますが、活動資金は会費やJICA研修でいただく謝金などで運営しています。

Q 紫川を愛する会が東南アジアで活動を始めたきっかけは何ですか。

1994年にJICAの環境管理プロジェクトの一員として、インドネシアで短期専門家として活動し1997年には廃棄物処理コースのフォローアップ調査でスリランカに行ったのがきっかけです。2002年にインドネシアのスマラン市で市民に対する環境協力やNGO環境セミナーに参画し清掃活動などをする機会がありました。また、2005 年にはフィリピンのメトロセブで、地元の環境NGOと協働して環境セミナーを開催し、河川の水質改善のための意見交換や生物調査等を行いました。こうした活動に参加することで東南アジアでの活動が広がっていきました。

Q紫川を愛する会の活動で嬉しかったことや感動したことは何ですか。

2011年6月21日に第13回日本水大賞の国際貢献賞を受賞したことはとても嬉しく今後の活動の励みになりました。また、ホームビジットで受け入れていたフィリピンやマレーシア等の人と現地で会うことがたくさんあって人とのつながりの大切さを感じています。印象に残っているのはJICAの研修員が紫川に来てくれたときに「水がこんなにきれいなのは自分の国では信じられない。」「魚をとって食べるなんて考えられない」といった声を聞くと、日本では川がきれいなのは当たり前だと思っていたが世界ではまだまだ汚れた川がたくさんあることに気付かされ、これまでの経験を生かして何とか力になればと思っています。

Q森下さんの今後の目標は?

開発途上国の河川の多くは生活排水等によって汚染されています。だから、マレーシアでは生活排水処理システムを構築したいと思っています。また、紫川を愛する会をよんでマレーシアでNGO環境保護セミナーも開きたいですね。その結果として、マレーシアでも魚が返ってきたり、子供が川で泳げたり…きれいな川がたくさん増えればいいなと思っています。

Q若い人に伝えたいことは何ですか。

いろんなことに挑戦して自分の可能性を求め、特に欠点ばかりを追求せず自分の長所を伸ばしてほしいです。最初からできないと決めつけないで何事にも前向きに取り組めば必ずできます。また、自分が簡単に達成できる目標を設定するのではなく、少しだけ高い目標を設定して日々頑張ってほしいです。ゼネラリストではなくてスペシャリストを目指し、ある特定の分野については誰にも負けないオンリーワンになることを目標にして下さい!

インタビューを終えて

森下さんは65歳まで市役所で働くチャンスがあったそうですが、自分の健康や家族のことを考えて定年で退職し、地域でのボランティア活動に取り組んでいます。現在は、JICAシニア海外ボランティア(SV)としてマレーシア国での派遣に向け活動準備中です。SVは69歳までできることから、今後もこれにチャレンジする予定だそうです。アグレッシブな生活を送っていらっしゃる森下氏から、限界を設けず何事にも積極的に活動するのが大切であると教えていただきました。


インターン生 九州大学 平 雅仁

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森下正人さん

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スマラン市での河川の清掃活動

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紫川におけるアユの放流活動

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JICA研修員との紫川の清掃活動