アジアに広がる「KitaQ」−コンポストネットワーク会合を開催−

2011年7月21日

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北九州市長表敬の様子

「北九州市の廃棄物管理方式は、海外で役立っているのか?」
JICA九州は6月28日から7月1日にかけ東南アジア4カ国10都市から行政官を招き、北九州市が環境協力で推進する「KitaQ方式コンポスト事業」について議論するワークショップを開催しました。

<「コンポスト」をキーワードに北九州市と連携>

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高倉さんによる「タカクラ方式」の講義(写真:今村健志朗)

多くの開発途上国では、特に都市地域における人口増加、居住区の拡大化に伴い廃棄物が増加し、住民の健康、自然環境両面に悪影響を及ぼしつつあります。これらの国では生ごみが廃棄物全体量の60%程度を占めるため、生ごみのたい肥(コンポスト)化はごみの減量、地域住民の環境意識向上のための有効な手段として、3R(Reduce、Reuse、Recycle)促進を目指すJICAの協力事業においても導入されています。
北九州市も、その公害克服の経験を活かし、1980年代より海外への環境協力を積極的に行っています。なかでも2002年からインドネシアのスラバヤ市で実施する廃棄物管理事業では、生ごみ堆肥化技術を活用しながら、地域住民やNPOと協働でごみの分別促進、地域住民への啓発活動、市場のごみの堆肥化活動導入を行い、同市の廃棄物量を30%削減するという大きな成果を出しています。この手法は「KitaQ方式コンポスト事業」として、インドネシア国内だけでなく、東南アジアの国々にも移転され、各都市で活用が試みられています。
今回のセミナーは、JICA九州と北九州市、市内の関係機関が協力し、各国各都市に広がる「KitaQ方式コンポスト事業」の成果とこれからを議論することを目的に開催されました。

<本場の「KitaQ方式」を体感>

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コンポスト講座で実習を体験(写真:今村健志朗)

4日間という限られた時間のなか、参加者は「ごみ減量」をキーワードに北九州市内各所を訪問しました。J-POWERグループ株式会社ジェイペックでは、KitaQ方式コンポスト事業で活用される「タカクラメソッド」の考案者である高倉弘二さんよりコンポスト実施の際の留意点に関する講義を受けました。「タカクラメソッド」は知っているものの、高倉さんに会ったのは初めてというインドネシア・タラカン市清掃美化局のソニャ ウイジアンティさんは、講義後も高倉氏に質問するなど、熱心にコンポスト技術について学んでいました。講義後は近隣の農家に移動し、コンポストを活用して栽培された野菜を試食しました。インドネシア・バリクパパン市の環境局に勤めるアリー ソティアジさんは「野菜が甘くておいしい。インドネシアでは生野菜を食べる習慣は無いが、これなら栽培過程も分かるから、安全・安心だ」とその効果を五感で体験しました。

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農園での野菜の試食(写真:今村健志朗)

次の日以降は資源化センターや市民センターを訪問し、施設設立の背景、役割について学びました。本城かんびん資源化センターの見学後、タイ・ノンタブリ副市長のポンスリ キチャムさんは「施設がきれいで、作業者の安全確保が徹底されていることに驚いた」と、技術面のみならず、施設や働く人の管理方法についても多くの情報を得たようでした。
穴生市民センターでは、ごみ減量のための市民センターの活動について学んだ後、地域住民向けのコンポスト活用講座を見学しました。各都市とも、コンポスト活動を普及させるための人材育成が課題となっていたことから、北九州市が行う研修のシステムや、市民センターの活用方法について、強い関心を示していました。

<「点と線」から「面」の協力体制へ>

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グループに分かれての議論(写真:今村健志朗)

市内視察と並行して、各都市からの参加者が廃棄物管理の現状や課題、「KitaQ方式」の活用状況についての発表を行いました。マレーシアのカンパル市環境健康局に勤めるゴー セン チーさんは、JICAが派遣中の青年海外協力隊員と協働でタカクラ方式を導入し、作成されたコンポストを町の緑化に活用するパイロット事業について発表しました。コンポストの活用にメリットが見られる一方で、「コンポストのもとになっている食材が宗教上禁止されている場合は流通に影響が出るので、配慮が必要」と、多民族・多宗教が共存する社会ならではの課題についても紹介が行われました。
各都市からの発表後はグループに分かれ、各都市の取り組みの情報交換に加え、地域住民との協力体制、コンポストのマーケティング方法などについて、成功要因・失敗要因の分析を行いました。以前JICA大阪で実施した「都市環境管理コース」の研修員としても来日経験のあるインドネシア・パレンバン市環境局のイーマ イダ アプリアニさんは、「他都市・他国からの参加者と議論ができて、たくさんの教訓、学びを得ることができた。これからも参加者たちとの情報共有を続けたい」と話していました。
これまで各都市は北九州市や財団法人北九州国際技術協力協会(KITA)、財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)とごみ減量のための事業を行ってきましたが、他国・他都市の成功事例や課題について直接意見交換をする機会は限られていました。今回のセミナーが、「北九州と自分の町」という「点と線」で行われていた協力事業が「KitaQ方式」をキーワードに「面」として展開する後押しとなったことが伺えました。

<地域の強みを活用した国際協力の推進>

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穴生市民センターの見学(写真:今村健志朗)

これまでJICA九州では、草の根技術協力事業の実施、研修員受入事業の実施を通じて「KitaQ方式」の移転を図ってきましたが、今回の各都市からの発表・議論を踏まえ、コンポスト事業推進のためには、技術のみならず、地域の協力体制の構築、作成したコンポストの用途の確保、流通システムの確立など、様々な要素を考慮する必要があることが確認されました。参加者からは「資源化センターの運営方法についてもっと知りたい」、「コンポストを活用して栽培した野菜のマーケティング方法は?」、「市民センターの活性化はどのように行うか?」など、地域の技術・ノウハウを吸収しようとする積極的な姿勢が伺えました。

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帰国後の活動についての発表

九州地域は地理的要因もあり、特にアジア地域との交流が活発です。JICA九州は地域との連携をより強化し、「KitaQ方式」のような地域特有の豊かな技術やその活用ノウハウを積極的に海外に発信していきます。

<共催>
北九州市
<後援>
財団法人北九州国際技術協力協会(KITA)、財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
<協力団体>
穴生市民センター、サークルファーム吉水(きっすい)、
J-POWERグループ株式会社ジェイペック、本城かんびん資源化センター
<参加都市>
インドネシア(バリクパパン、マカッサル、パレンバン、スマラン、スラバヤ、タラカン)
タイ(ノンタブリ)
フィリピン(セブ)
マレーシア(シブ、カンパール)
<写真>
 今村 健志朗

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