「先生たちの忘れられない夏」教師海外研修inフィリピン

2011年9月13日

教師海外研修フィリピンコース報告

平成23年7月31日から8月11日までの12日間、九州各地から7人の先生たちが集結し、JICA九州教師海外研修が実施されました。向かったのは、福岡から直行便で3時間半の国、フィリピン。ツアーのテーマは「格差と教育」。。九州各地の小中高の先生たちが、笑って、泣いて、考えた12日間をレポートします。

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パヤタス地区の子ども達

「わっ、すごいにおい…!」そびえ立つスモーキーマウンテン(ゴミ山)を背景に、あふれる笑顔の歓迎を受けた研修2日目。マニラ首都圏にあるパヤタス地区を訪問しました。ここには首都圏のゴミが運び込まれ、大きな山を形成しています。このゴミ山から金属などを集めて換金し、暮らしを営む人々がコミュニティーをつくっています。

ここで活動しているNPO組織<ソルト・パヤタス>のマニラ事務局長、小川恵美子さんの案内で、元気いっぱいのパヤタス地区のお母さんたちに出会いました。お母さんたちは、刺しゅうしたタオルやブックカバーで現金収入を得、子どもたちのための図書館を運営し、就学前の子供たちの教育にも携わっています。

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フィリピンの先生たちとディスカッション

日本から来た先生たちは、パヤタス地区の子どもたちが、元気いっぱいに夢を語るようすにびっくり。「日本では将来の夢を語れない子どもが多い。なぜ、パヤタスの子どもたちは、はっきりとした夢を持っているんだろう。」先生の素朴な疑問に、パヤタスのお母さんは答えました。「日本の子どもは、豊かすぎるから将来が見えなくなっているのではないでしょうか。パヤタスの子どもは、” 持たない ”からこそ、大きな夢を持つんだと思います。」この時から、「豊かさって何だろう?」という疑問が、先生たちの頭の中をまわり始めました。

研修6日目。マニラとは違ったのんびりとした時間の流れるボホール島で、青年海外協力隊の活動を見学しました。その中で、理数科教師という仕事で派遣されている協力隊員のグループのSAMURAI6が開催した、現地の先生たちを対象とした理数科教育セミナーを視察しました。

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フィリピンの先生に日本文化を紹介

生演奏あり、寸劇あり、あっと驚く科学実験あり…。ユーモアあふれるセミナーに、ボホール島の先生たちも九州の先生たちも引き込まれていました。現地の先生による模擬授業も見学。生徒にとってよりよい授業づくり、学校づくりについて、ボホール島×九州の先生たちによる熱い意見交換の時間もありました。

「フィリピンで活動するSAMURAI6の熱意には、同じ教師として感銘を受けました。」視察後のある先生からの言葉です。将来、青年海外協力隊<理数科教師>として派遣される先生が生まれるかも…しれません。

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グレイスさんに話を聴く

研修終盤、訪れたのはのどかな田舎町、イロイロ市ニュールセナ町。ここでは、JICA技術協力プロジェクト、「地方における障がい者のためのバリアフリー環境形成プロジェクト」を見学しました。

プロジェクトに関わるグレイスさんは、筋ジストロフィーのため車いすを使用しています。「発症から9年間、家から出られない日が続きました。今、こうして皆さんの前で話ができるようになったのは、このプロジェクトを通して力をもらったからです。」涙を浮かべながら語るグレイスさんの言葉に、先生たちは深く胸を打たれていました。

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現地プロジェクトスタッフに質問

行政と障がい者グループが一緒になって、バリアフリーのまちづくりを目指しているこのプロジェクト。町役場の前には現地で手に入る材料である竹でつくられた手すり、市場には車イスマークのついたトイレなど、障がい者の方々の意見が反映されたバリアフリーの施設が町の至るところにあり、日常に溶け込んでいました。「人びとの意識を変えることが先決。資金やモノはその後についてくるものです。」障がい者グループの代表、パシャナさんの力強い言葉に、先生たちも深くうなずいていました。

いきいきとした障がい者の皆さんとの意見交換の後、ある先生がプロジェクト調整員の伊藤さんに尋ねました。「家に閉じこもっていた人たちが、あんな素敵な笑顔になるなんて、一体どんなことをしたんですか?」伊藤さんはこう答えました。「特別な事は何もしていません。ただ、今、その人に必要だと思う経験をした人たちと、たくさん出会わせただけです。」フィリピンの各地でたくさんの人、出来事と出あった先生たち。この経験を、間接的な出あいとして、日本の子どもたちに伝えられる先生というお仕事。新しい可能性への期待に胸を
膨らませながら、先生たちは帰国の途につきました。

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授業案作りに取り組む先生たち

帰国から2週間後。先生たちは再びJICA九州に集合し、模擬授業づくりに挑戦しました。エドゥケーショナルサポートセンターの松本亜樹さんから的確なアドバイスをもらいながら、、小学校チーム、中学校チーム、高校チームに分かれて授業づくりを開始。持ち帰ったフィリピンの国旗や地図、おもちゃ、たくさんの写真、そして先生自身が悩んだこと、生まれた新しい思いを材料に、夜遅くまでかかって授業が完成しました。

翌日は朝から模擬授業開始。授業を聴く先生たちは、生徒になったつもりで質問し、本番さながらの展開でした。「ここがよかった!」「こうしたら、もっといいんじゃない?」一つの模擬授業が終わるたびに、率直な意見が飛び交い、よりよい授業づくりのために先生たちは余念がありませんでした。「なかなか接する機会のない小中高の先生たちが、貴重な体験を共有し、教育についてたくさん話をする時間を持てた。この研修のおかげで、今年は忘れられない夏になりました。」

新学期を迎えた先生たち。「フィリピンで出あって、悩んで、見つけたこと。」それを自分たちが伝えることで、子どもたちの将来は、もっと豊かなものになる。そう信じて、先生たちは今日も九州各地の教育現場で奮闘中です。

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