世界に広がる魔法のバケツ−KitaQ方式コンポストネットワーク・フォローアップ会合を開催−

2012年7月25日

「コンポスト」をキーワードに北九州市と連携

市長表敬訪問

多くの開発途上国では、人口増加や居住区の拡大化に伴い廃棄物が増加し、住民の健康、自然環境の両面に悪影響を及ぼしつつあります。これらの国では生ごみが廃棄物全体量の60%程度を占めるため、生ごみのたい肥(コンポスト)化はごみの減量、地域住民の環境意識向上のための有効な手段として、3R(Reduce、Reuse、Recycle)促進を目指すJICAの協力事業においても導入されています。
北九州市も、その公害克服の経験を活かし、1980年代より海外への環境協力を積極的に行っています。なかでも2002年からインドネシアのスラバヤ市で実施の廃棄物管理事業では、地域住民やNPOと協働でごみの分別促進、地域住民への啓発活動、市場のごみのたい肥化活動導入を行い、同市の廃棄物量を約30%削減するという大きな成果をあげています。この手法は「KitaQ方式コンポスト事業」として、インドネシア国内だけでなく、東南アジアの国々にも移転され、各都市で活用が試みられています。

北九州発の廃棄物管理方式は海外でどのように役立っているのか?

北九州市長とスリランカ・クリヤピティヤ市長

JICA九州は2011年6月に廃棄物管理に関わる東南アジアの行政官を招き、北九州市と財団法人北九州国際技術協力協会(KITA)、財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が環境協力で推進する「KitaQ方式コンポスト事業」について議論するワークショップを開催しました。同会合から1年が経過したことから、前回の会合で各都市が作成したアクションプランの実施状況を確認し、その実施を通じて得られた課題・教訓を共有するために、インドネシア・マレーシア・フィリピン・スリランカ・ペルーの5カ国、13都市から19名の行政官を招き、7月17日から7月20日にかけてフォローアップ会合を実施することになりました。

前回の参加都市のほか、コンポスト事業を推進しようとする新規参加都市を加えて、先行してコンポスト事業を実践している都市の経験を共有することにより、北九州発のコンポスト事業の実施を支援します。北橋健治(きたはしけんじ)北九州市長表敬訪問では、環境やお互いの国について歓談したりプレゼントをやり取りしたりするなど、早くも友好的なムードが漂っていました。

本場の「KitaQ方式」や環境都市北九州市のさまざまな取り組みを体感

環境ミュージアムで北九州の地形を確認

ラジオラマによる公害の実態説明

キャベツの試食

コンポスト使用の有無による成長の違い 

コンポスト用発酵液づくり

サークルファーム吉水(きっすい)見学

本城かんびん資源化センターの施設説明

プレスされた缶の前で

4日間という限られた時間のなか、参加者は「ごみ減量」をキーワードに北九州市内各所を訪問しました。

環境ミュージアムでは北九州市が1960年代の公害をいかに克服したかということに関心が集まりました。大腸菌さえも棲めない死の海、七色の煙で汚れた空を、市民、行政、企業が三位一体となり努力を重ねて元の美しい状態に戻す過程をラジオラマで確認し、現在北九州市が美しい青い海・空を保全できていることに感銘を受けていました。多くの参加者は同行していた同ミュージアムの創立担当者である森本美鈴(もりもとみすず)さんに、浚渫(しゅんせつ)した汚泥の処理方法について質問をしていました。

楽しい株式会社ではもみがらを使って1日に500キログラムもの生ごみを処理することのできる機械や、その処理によってできたたい肥などを見学しました。その後、払川の農園に移動し、コンポストを利用して栽培されたキャベツを試食し、参加者はその甘さに驚いていました。

J-POWERグループ株式会社ジェイペックでは、KitaQ方式コンポスト事業で活用される「タカクラ方式」の技術についてコンポスト実施の際の留意点に関する講義を受けました。
参加者は八百屋(やおや)さやかさんからの質問によるクイズ形式で、楽しみながらコンポストの作り方を確認し、コンポストたい肥使用の有無で作物の成長に違いがでることを確認しました。

その後納豆やヨーグルト、ヤクルト、麹などを使用してコンポスト作りを実習しました。
サークルファーム吉水(きっすい)ではボカシ栽培(無化学肥料栽培)を使用した農園を見学し、すいかや野菜を試食しました。玉ねぎは水にさらしていないのにとても甘く、コンポストが安全で美味しい野菜づくりに生かされていることを改めて確認することができました。

本城かんびん資源化センターでは、集められた缶・びん・ペットボトルが、資源ごみピットからバックホウと呼ばれる重機でベルトコンベアに乗せられ、手選別されている様子を見学しました。

ペルーの環境省環境管理局廃棄物管理部のミリアム・アリスタ・アラルコーンさんは「設備がとても整っている。コストはかかるだろうがこのような設備の建設を国に帰って提案したい。」と熱心に写真撮影をしていました。

株式会社西原商事では段ボールを圧縮する機械や二層式収集車などの見学の後、同社の事業説明を受け、GPSなどを使って迅速・かつ安全に廃棄物処理をするシステムや社員教育について多くのヒントを得たようでした。参加者からは二層式収集車両や家電の収集について熱心に質問が寄せられていました。
参加者からは二層式収集車両や家電の収集について熱心に質問が寄せられていました。

<互いに学びあいながら、よりよい体制づくりを目指して>

収集車から出された段ボール

カンパール市のイメージキャラクター(右下)

アクションプラン進捗状況

グループに分かれての議論

IGESによるコンポストウェブサイトの紹介

これらの市内視察と並行し、各都市からの参加者は廃棄物管理の現状や課題、KitaQ方式コンポストの活用状況についての発表を行いました。
マレーシアのカンパール市ではコンポストの効果的なPRのためにイメージキャラクター(ディタ&ディキ)を立ち上げて活用し、またマレーシアのハントゥワジャヤ市はコンポストのオリジナルDVDを製作するなど、広報面での積極的な取り組みが見られました。
発表後はグループに分かれ、各都市の取り組みの情報交換に加え、地域住民との協力体制、コンポストのマーケティング方法などについて、成功要因・阻害要因の分析を行いました。

北九州市環境局循環社会推進課による講義、「北九州市における都市廃棄物管理及びコンポスト事業」に関しては、コンポストアドバイザーやマイスターを増やすための工夫、分別収集をきちんと行うための工夫について参加者から多くの質問が寄せられていました。フィリピンのセブ市議会議員のニダ・カブレラさんは「指定のごみ袋ではなく指定外のごみ袋でごみを出した場合はどうなるのか」と質問し、その場合は市はごみを回収せず、警告のシールを貼って対応するという回答に納得した様子でした。カブレラさんは「北九州は分別収集のシステムがしっかりしている。私の国の課題は人々がごみをどこにでも捨てていることで、意識改革をする必要がある。」と話してくれました。

最終日、各都市は今後の取り組みに向けて、ごみの削減目標、その実現のための方策などを盛り込んだアクションプランを策定、発表しました。コンポスト事業推進のためには、技術のみならず、地域の協力体制の構築、作成したコンポストの用途の確保、流通システムの確立、法整備など、様々な要素を考慮する必要があることが確認されました。市内視察、質疑応答、情報交換、討議などを通して、各都市がこれまで北九州市やKITA、IGESと協力・連携してすすめてきた事業が、今回のセミナーをきっかけに各都市間のネットワークが強固なものとなることによって、更なる発展を遂げることができると期待されます。
また、今回、IGESがコンポスト事業のウェブサイトを立ち上げることとなりました。各都市のリンクを貼ることによって、コンポスト事業に関するお互いの取り組み状況を確認すること、目に見えるよりよい形でコンポスト事業の普及・拡大を図ることが可能になるでしょう。

JICA九州は今後とも環境モデル都市である北九州市、KITAやIGESなどの関係機関をはじめ関係者の皆さんと連携し、今後もさらに「KitaQ方式コンポスト事業」を推進し、環境部門で貢献できるよう、さまざまな取り組みを続けていきます。

<共催>
北九州市
<後援>
公益財団法人北九州国際技術協力協会(KITA)
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)

<協力団体>
J-POWERグループ株式会社ジェイペック若松環境研究所
<参加都市>
インドネシア(バリクパパン、マカッサル、パレンバン、タラカン、マタラン、チアンジュール)
マレーシア(シブ、カンパール、ハントゥワジャヤ)
フィリピン(セブ)
スリランカ(バドゥラ、クリヤピティヤ)
ペルー(リマ)