熊本震災の教訓を開発途上国へ伝える

2018年11月29日

「消防・防災」研修の様子

 JICA九州センターは、北九州市消防局のご協力のもと9月10日~11月16日の間、開発途上国から8名の消防士を北九州市に招聘し、各国の消防・防災能力向上にむけた「消防・防災」研修を実施しました。近年、開発途上国では人口増加や都市化の進展により、火災や自然災害による被害・経済的損失が甚大化しており、火災・災害発生時における消防の果たす役割は益々重要なものとなっています。
 本研修は今年で31年目を迎えましたが、熊本地震の貴重な教訓を開発途上国の消防士に伝え、各国での消防・防災活動に生かすべく、熊本県庁及び熊本市消防局にもご協力いただき、10月25日・26日の二日間、熊本での研修を実施しましたので、その様子をご紹介します。

熊本震災の教訓とは

熊本県危機管理防災課での講義

 10月25日、研修員一行は熊本県庁を訪問し、危機管理防災課による「熊本地震からの教訓」というテーマの講義を受講しました。この講義では、熊本地震の教訓として、以下の5つが共有されました。1,地震発生後の市町村の対応レベルに大きな差があった。2,様々なシチュエーションを想定した訓練が不足していた。3,災害本部の運営上の訓練のみならず、避難者の住居等の実務的な行政手続きの訓練が必要であった。4,住民への支援物資は必要品をセットで準備・配布すべきだった。5,普段からの地域住民との連携体制構築が重要である。
 これらの教訓を踏まえ、同庁では今年4月より地震発生時における災害対応の工程を“見える化”した、「災害対応工程管理システム(BOSS)※」の運用を開始しました。本システムの活用により、災害対応にあたる職員が必要情報をパソコンやタブレット端末等で即時に確認することができ、災害対応の迅速化や各自の対応レベルの均質化が図られます。
 さらに、熊本地震から約2年半が経過していることから、県民の防災意識の低下や地震の風化を防ぐため、年に1回の地震防災訓練(シェイクアウト訓練)や住民向けの防災啓発活動、被災地への視察受入等を行っています。
 研修員からは、「支援物資は即時にかつ一度に配布ができるよう、日用品や食料などの必要品はセットにしてまとめておくことや、各自が防災グッズを常時リュックに入れて準備しておくことなど、自国でも広めていきたい」、「災害時に備えた行政と住民との協力や訓練が必要であることを学んだ」などの感想が寄せられました。

震災時の活動・復興視察から学んだこと

震災発生時の状況について語る熊本市消防局・古田氏

 翌日の10月26日は、熊本市消防局での熊本地震の概要や救助方法についての講義を受講しました。震災当時、救助隊長として救出活動にあたられた古田祐一氏より、震災発生時の状況や救助活動要領についてご紹介いただきました。その中でも、特に研修員の関心が高かったのは、瓦礫の下敷きになった生後8か月の赤ちゃんの救出についてのお話でした。余震が続くなか、一回の救出活動時間5分以内という厳しい状況下において、古田氏は地域の住民・関係機関との協働によって、無事に赤ちゃんを救出しました。研修員からは、「災害発生時の救助体制や地域・関係者との連携等、消防活動強化のための多くのヒントを得た」、「混乱時こそ冷静な判断や原理原則に基づいた行動が必要であることを改めて実感した」などのコメントがありました。

益城町の復興状況視察

修復作業中の熊本城

 その後、熊本城や益城町を訪れ、震災からの復興状況を視察しました。熊本城は、国の文化財となっているため、作られた時と同じ材料・技術で可能な限り再現することが求められており、修復完了までに推定20年かかるとのことでした。また、益城町は復興が進んでいるものの、いまだ24,580人が仮設住宅等へ入居しており(平成30年9月末時点)、入居期限を3年から4年に再延長することが決定したとの説明を受け、復興の難しさや日常生活における減災活動の大切さを実感した様子でした。
 熊本での研修をはじめ、北九州市や日本で身に着けた経験、知見、技術が各国で適用・普及され、消防・防災の発展及びSDGsのゴール「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「13.気候変動に具体的な対策を」の達成が促進されることを期待しています。