JICAデスクのご紹介(佐賀県編)

2020年2月18日

【画像】JICAは九州各県の国際交流協会などに国際協力推進員を配置しています。
今回、1月から佐賀県を担当しているJICAデスク佐賀の武田推進員にインタビューしましたので、是非ご覧ください。

-武田推進員のプロフィール-
佐賀県出身。静岡県の病院にて病棟勤務3年、東京の赤十字病院にて手術室勤務5年3か月を経て、青年海外協力隊としてタンザニアの州立病院へ派遣される。現地では5S-KAIZEN手法を用いた患者ケアの向上、記録の質の向上、地域住民へのごみ分別の啓発活動等を実施した。2019年7月に帰国。2020年1月よりJICAデスク佐賀担当推進員として着任。

青年海外協力隊に参加したきっかけを教えてください

5S改善活動の一幕

私は剣道をやっていたのですが、中学生の頃、チームメイトと共に団体戦で全国大会に出ることを目標に毎日練習をしていました。
順調に勝ち進み、県大会2位にはなったのですが、県2位では九州大会のみの出場で、全国大会に出場する事は叶いませんでした。「負けたのは自分の責任だ」と感じて挫折したんです。そんな時、テレビで7歳の難民の子供がインタビューを受けている映像を見たのすが、その子は「将来は医者になりたい」と語っていたんですね。
それが本当に衝撃的で、私は恵まれた環境にいながら落ち込んでいるのに、困難な状況でも生きる希望を持った人達がいることを知りました。そこから是非、開発途上国に行きたいと思いました。
ただし、海外に出る前に何か技術を身に着けてから行きたいと思い、保健医療の分野に進むことを決めて看護学校に進学しました。
学校を卒業してから静岡の病院に就職し3年間働いたのですが、今のレベルでは開発途上国に行っても人は救えないと思い、国際医療を行っている日本赤十字社の関東にある病院に移りました。そこでは手術室に配属になり5S活動(「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」)や改善活動、災害医療、医療記録などを学びながら働きました。また、開発途上国に派遣された時に役立つと思いJPTECという団体の救急医療に関する資格も取得しました。そして5年ほど経ったときにそろそろ役に立てるかなと思い、青年海外協力隊の募集説明会に参加し応募しました。

青年海外協力隊に参加してみて如何でしたか?

小児科での5S改善活動

離任日のお別れ会にて

派遣されたところはタンザニア連合共和国のイリンガ州立病院というところで450床、スタッフも450名位の規模の病院でした。そのQIT(質改善チーム)に所属し活動を行いました。
私の活動要請の内容は5S活動や医療記録の定着化、院内感染防止の定着化といったものでしたが、これは派遣前に日赤病院の手術室で学んだことが大いに役に立ちました。
タンザニアは10年前からタンザニア保健省でJICAの支援により5S改善プロジェクトが行われているのですが、私の赴任当時、配属された病院では積極的な活動はされていませんでした。
一言でいうと、QIT内の人間関係が原因で、病院内の5S改善活動に関する情報共有が円滑になされていませんでした。その為に病院全体のスタッフの5S改善活動へのモチベーションが保たれていなかった事が病院の抱える問題でした。
そして更に、活動費用や人員の問題もありました。タンザニアの保健省が行っている5S改善活動の勉強会に参加したスタッフが自分の病院に戻り、同僚たちに広めるために勉強会を開く必要があるのですが、主催する側が参加費を参加者に払い、更に昼食も出すというタンザニアならではのルールがあるんです。
また5日間一日中行う研修の為、そこに参加している人達は通常業務が行えません。つまり各部署はその人以外の人員で業務を回さなければならず、少ない人員の中で勤務を調整するのはとても困難な事でした。
ですから、費用や人員の確保が困難な配属先は、私が配属された時、積極的な勉強会が行われておらず、その為5S改善への理解とモチベーションが維持されていなかったと考えられます。
そういった病院に対しいくつかのアプローチを行いました。例えば日本では使ったものは元にあった場所に戻しますが、タンザニアでは戻さないので、何をそこに置く場所なのか書いたラベルを貼ったり、物品やごみ箱のカラーコーディングや、病院の廊下に足の絵を書いて左側通行を行うことを促したりと、目で見てわかる5S活動を実施しました。視覚に訴える事ってとても大事なんです。
そしてそれを病院全体にシェアする為に、病院の使われていなかった掲示板をデコレーションして使用出来るようにし、5Sは改善前と改善後の写真を張り出して成果を掲示するSmall-KAIZENと言われる活動があるのですがその手法を用い、前述した活動のシェアを行いました。それを行う事で、どの部署の誰がその活動を行ったか分かる為、その他部署が参考に出来るのと同時に、それを見た人から5S改善活動を実施したスタッフへのフィードバックが行われるため、スタッフのモチベーション維持が期待出来ると考えたのです。
更に保健省からの働きかけも相まって徐々に病院の5S改善への意識が変わってきました。看護部長が保健省の勉強会に参加したのをきっかけに、配属先の病院でもどうにか予算を捻出して勉強会を開催しようという意識が高まり実施が可能となり、5S改善活動を学んだスタッフが多くなりました。
結果、JICAの専門家とタンザニア保健省の担当者が見回って決めるグッドプラクティスとして当病院の5S改善活動の一つの取り組みが選ばれるまでになりました。
なぜ、病院で5S改善活動が必要なのか。病院は限られた予算で物を購入しますが、物品管理がなされていないので、使われている個数を把握していませんでした。ですから、適切に物品の購入ができないのです。そうすると足りない薬が出てきます。また救急トレイに必要な物品が揃っていない場合、それを探す為に処置に長い時間を要します。それはひいては患者の命に直結してきます。もし、それで患者が亡くなっても「神のご加護がなかったのだ」と言うのです。しかし、その状況を当たり前としていない日本人の私から見れば、5S改善を行う事で変えられる現実、救える命があると思いました。
実は日本の病院で5S改善活動の重要性をあまり感じたことがありませんでした。なぜなら日本人は幼少期から当たり前のものとして5Sを行っているからです。しかし、タンザニアではその常識が当たり前ではない事、そして費用・物品が十分にないという状況を突きつけられ、いかにそれが重要な活動なのかを理解し指導することが出来たと思っています。
また、仕事の延長として病院外でも活動しました。タンザニアはごみの分別をする文化がないので、環境保護の歌を作ってミュージックビデオを作り、公共交通機関やラジオ、州事務所で流してもらうよう働きかけも行いました。

協力隊の活動を通して派遣前はせっかちで仕事を他の人に任せられなかった私が、相手のことを信じて仕事を任せられる様になりましたね。
また、協力隊では自分がやらなければ他にやれる人がいない状況なので、いろいろ不安なことを考える前にまずはやってみるようになりました。そして人前でも恥ずかしがらなくなったことも協力隊を経験したからだと思います。
今後は積極的に前に立つことが苦ではなくなったので、推進員として皆様に助けて頂きながら、経験をお話ししたいと思っています。

最後にJICAデスク佐賀のご紹介をお願いしします

前任の和田推進員と

JICAデスク佐賀の対応は月曜日から金曜日が基本ですが、佐賀県からは社会人経験を経て協力隊に応募する方も多いので、事前にご連絡して頂ければ土日や夜間でも対応可能です。
また、ここは柳川や久留米などの筑後地区からご相談に来られる方も多いですね。
佐賀駅からは歩いて20分程度の距離ですが、近隣には駐車場(有料)もありますので、お車での来館も可能です。
みなさまのご来館を心よりお待ちしております。

-JICA国際協力推進員について-
国際協力推進員は、「地域のJICA窓口」として、地域国際化協会など地方自治体が実施する国際協力事業の活動拠点に配置されています。ボランティア事業や開発教育支援事業をはじめ、JICAが実施する事業の広報及び啓発活動の推進、自治体や大学、NGO、企業等が行う国際協力事業との連携促進等の業務を行っています。これらの業務を通じて、国際協力に対する市民からの理解の増進、地域での市民による国際協力活動の促進、地域関係者との連携推進を図ることを目的としています。