SMASSEプロジェクトが研修効果発現調査を実施

2012年7月11日

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2012年4月実施した地方研修後に、一カ月をかけて、270名の教員を対象に、全国で授業観察を行いました。同時並行で、「研修効果発現調査」も実施しました。今回は、「研修効果発現調査」を担当した短期専門家の方にレポートをしてもらいます。

マラウイSMASSEプロジェクトフェーズ2では、今までに中央研修を4回、地方研修を3回実施してきました。ところが、研修の中で指導する生徒中心の授業は、実際の教育現場で、なかなか実践されない現状があります。今回は、その原因を探るべく、2カ月間の短期専門家として研修効果発現調査を担当しました。調査の目的は、生徒中心の授業の実践に障害となる原因を特定することです。なるべく多くのデータを集める必要があり、調査対象の理数科の先生と、その校長先生からインタビューで多くのことを聞きました。その結果、学校に関して12項目、先生に関して20項目、合計32項目のデータを71人、40校から集めることが出来ました。このインタビューは、カウンターパートであるナショナルトレーナーが授業観察をするための学校訪問に同行して、実施しましたので、授業観察の結果も考慮し、授業の出来に影響するデータを探しました。

統計的な手法を使って、32項目のデータと授業評価点の関係を調べたところ、10項目のデータが、授業評価点に影響することが分かりました。その10項目は、「1.学校の種別」、「2.クラスの生徒数」、「3.有資格理数科教員の割合」、「4.理数科関連図書の蔵書数」、「5.実験室の有無」、「6.実験機材の有無」、「7.教員の職位」、「8.教員経験年数」、「9.授業案作成の有無」、「10.教員の自主性」です。この10個の要因が見つかったところで、次に要因どうしの関係を調べたところ、「1.学校の種別」が、最も本質的な要因であることが分かりました。

学校の種別というのは、大別して、一般的に良いとされている正規の中等学校(公立のSecondary Schoolもしくは、教会系Secondary School)と、レベルが落ちるとされる地域(コミュニティー)で建設された中等学校(Community Day Secondary School:CDSS)です。学校の種別に影響される要因208の内容を見ると、設備・備品・教員の質に関する要因が含まれていて、調査結果からも、確かに学校の総合力が、SS(正規の中等学校)とCDSSでは差があることが分かりました。

一方、2つの要因、「9.授業案作成の有無」と「10.教員の自主性」は、学校の種別から影響を受けません。なので、この2つは全ての先生にとって、向上が望まれる努力目標といえます。また、別の見方をすると学校の種別に影響される要因は先生にとって職場である環境の良否を示すデータであるため、「環境要因」といえます。それに対して、学校に影響を受けない2つの要因は「個人要因」と言えます。環境要因は沢山あり、改善には金銭的な負担が大きいものもあり、簡単には取り組めませんが、個人要因は各自の心がけで実践できます。ところが、この心がけを変えるということが実はとても難しく、時間がかかるところです。でも、微力ながらも、地道に、この部分の向上に取り組んでゆくのが技術協力の良さだと思います。そうした意味では、統計という比較的客観的な方法で、この個人要因の重要性が示され、関係者間にハッキリと意識されたことは、これからのSMASSEプロジェクトのあり方を考える際に、良い意味での一石を投じたと言えます。

最後に、調査の目的には関係ないのですが、日頃、仕事をしながら感じていたことが、調査の結果からも読み取れたので、紹介します。学校の種別に影響される要因の中には、「6.実験機材の有無」がありますが、これを改善するために機材を供与しても、良い授業には、直接、結びつかないことです。実際、ドナーや政府から供与した実験機材が期待されたように使われないことは現場で散見されます。今回の調査結果では、実験機材の有無は学校の総合力を表す様々な要因(この調査では7つ)のうちの1つでしかないため、ここだけを取り上げて改善を図っても学校の総合力は向上しないことが予想されます。つまり、機材の供与を本当に役立つものにするには、その学校の抱える様々な問題に総合的に取り組む必要があるのです。その上、こうした環境要因ばかりではなく、個人要因の向上にも取り組まないと本当に実のある成果は期待できません。機材の供与といった分かり易い援助が求められることは多いのですが、相手から求められるものを、そのまま、与えることが良い結果を生むわけではないのが援助の一番難しいところです。

(SMASSE短期専門家 高橋 勉)