サイエンスキャラバン “PICO factory”

2012年10月25日

実験、演劇を通じて「科学好き」の種を蒔く

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子どもから大人まで、多くの人が楽しめるように

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出演者と一緒に実験

「科学の面白さを、もっと多くのマラウイの人々に、子ども達に届けたい」

そんな想いから始まったサイエンスキャラバン”PICO factory”。昨年に引き続き、今年も理数科隊員の任地を中心に、マラウイを巡業しました。北部から南部まで全16公演、計3500人もの人々が科学を楽しみに足を運んでくれました(昨年:12公演、2400人)。

しかし、どのようにしたら科学の面白さを広く知ってもらえるのか…。いわゆるサイエンスキャラバン/サイエンスショーは「実験を見る」といったショーケース形式で行われることがほとんどです。またマラウイでは小学校を除いて、「芸術」教育(音楽、美術等)が行われないこともあり、日常生活において「芸術」に触れる機会がほとんどありません。そこで”PICO factory”では「演劇」の要素を取り入れ、「劇を見て楽しみ、一緒に体験して楽しめる」サイエンスショーを目指しました。

ここで越えなければならない壁が一つあります。それは「言葉」の問題です。マラウイの公用語は、現地語として広く使用されている「チェワ語」と「英語」です。小学校から英語教育は始まるものの、主なターゲットである小学校の子ども達は、英語が堪能であるとはまだ言えません。そこで公演を「劇パート」と「解説パート」の二部に分けました。「劇パート」は、「科学の面白さは言葉の壁をも越えられる」と信じ「無声劇」として、また「解説パート」は、「ただ面白かった、で終わって欲しくない。その不思議を理解し、自分の頭で考えて欲しい」という想いから「チェワ語」を用いて行われました。

「どのような実験を見たのか、親や友達に話してきかせられること」
「その実験を、もう一度家で行ってみること」

これらは”PICO factory”が掲げた大切な目標の2つです。今回の巡業で訪れた場所の中には、公共交通機関で行けないような奥地もありました。劇中で行われた20余りの実験のほとんどは、そのような村でも簡単に購入できるもので行うことができます。今年の巡業後も「こんな実験をやったんだってね、子どもから聞いたよ」「隣の子ども達が○○の実験をやっていたよ」村ではそんな声を耳にし、また幾つかのユースクラブやサイエンスクラブ(科学部)では、公演で目にした実験を皆で振り返る(再実験する)ワークショップが行われたという嬉しい報告もありました。

とは言え、一度しか見ていないものの詳細をいつまでも覚えておくことは難しいことです。そこで今年は「実験に必要なもの」「実験の手順」を記したリーフレットを作成し、来場してくれた先生達に配布しました。授業に実験を取り入れてもらうことで、より多くの子ども達が、継続的に実験に触れられる機会を増やすことが目的です。

「科学の面白さは実験にある」と言っても過言ではありません。しかし、水道も、電気も、実験室も、薬品もない学校が多いこの国では、実験は「教科書に書いてあるもの」という認識が強くあります。ここマラウイにおいても、「理数教科は苦手」という生徒が多いのが現状です。その苦手意識を払拭するために「実験、実物に多く触れる」ことが重要となってきます。

実験、実物に触れ、「科学の面白さを知ってもらいたい」「将来科学に関する職業を目指してほしい」そんな想いから”PICO factory”は設立されました。「PICO(正確にはphiko)」はチェワ語で「羽根」を意味します。まだまだ改善点は沢山ありますが、続けていくことで形を変えながらも、この”PICO factory”が、マラウイの子ども達が未来に羽ばたくための「羽根」になれたらと願ってやみません。

22年度3次隊 理数科教師 古澤輝由