ICT学生のためのキャリアセミナー開催

2013年8月15日

テクニカルカレッジにおける就職までの問題点

私はマラウイ北部のムズズという街にあるテクニカルカレッジ(Mzuzu Technical College)のICT(情報通信技術)科で講師として2012年9月から活動しています。

約9ヵ月にわたりマラウイのICT教育に関わっている中で「エンジニアとして働くことが想像できない」「働くために何を勉強したら良いのか分からない」「何を勉強したらよいのか分からないので、勉強に対するモチベーションが上がらない」という声を聞くことが多々あります。日本では星の数ほど企業説明会、キャリアセミナーが開催され、働くことに対するイメージ、仕事で求められる知識・技術や価値観を知る機会があります。しかし、マラウイではキャリアに対する考え方、学生と企業を結ぶシステムは未熟と言わざるを得ません。私の所属する学校を含めたテクニカルカレッジの就職に関する問題点は以下の3つに分類することができると思います。

  1. 社会で必要とされる知識・技術の理解不足
  2. 就職活動やキャリアに関する情報不足
  3. 学業に対する意欲不足

マラウイでの生活は、日本で働いていたときとは比べ物にならないほど、「自由に考える時間」が増えました。そんな自由な時間を利用し、この3つの問題点を解決する最善の方法は何かと日々考えるようになりました。その答えの一つが今回紹介する「ICT学生のためのキャリアセミナー」です。企画した「ICT学生のためのキャリアセミナー」はマラウイのトップ企業からICT関係者を招き、社会で求められる知識・技術、キャリアに対する考え方、マラウイでの就職活動方法、ICT学生へのアドバイスをプレゼンテーションしてもらうというものです。いくつかの企業、学校と協議した結果、5社が発表者として、また、開催地周辺のテクニカルカレッジ2校も含めICT科の生徒150人が参加することになりました。

なんとか開催できたキャリアセミナー

なにが起こるか分からないマラウイでのイベント開催です。6月6日の午後1時30分開始、のはずでしたが、案の定、バスの遅れや会場の停電が原因となり、50分遅れの午後2時20分からの開始となりました。しかし、開始後は大きなトラブルは発生せず、合計150人以上の聴衆が発表者の言葉、完成度の高いスライドに釘付けになっていました。

セミナーはLilongwe Technical CollegeのICT科講師から始まりました。「失敗を恐れてはいけない。失敗は史上最高の講師だ」という言葉、その後に女生徒へ向けて「今後、世界的に女性の社会進出が進む。ここに集まった女生徒は大きな希望を持っている」と説明した瞬間、女生徒の何人かが笑顔になったことが非常に印象的でした。

次に元政府系電気通信会社であるMTL(Malawi Telecommunication Limited)のフィールドサービス部門マネージャーがキャリアトークを行いました。「なぜ今のキャリアを選択したか」「今のキャリアを選んで得たものは何か」を中心としたトークが行われました。マラウイの中では憧れの職業先であるMTL社のマネージャーからのキャリアトークということもあり、熱心にメモを取る生徒の姿が見られました。

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学生へのメッセージを語るFMBのICT部門エンジニア

そして、銀行のFMB(First Merchant Bank)のICT部門エンジニアが説明を行いました。彼は右腕に障がいを持っていました。そのため、銀行システムの仕事内容に加えて、障がいに打ち勝ち、どうキャリアを積んできたかの説明がありました。キャリアトーク後のアンケートでは多くの生徒から「障がいを持ちながらもキャリア形成に成功していることに非常に励まされた」との意見が数多く上がっていました。

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Reserve Bank ICT部門マネージャーのキャリアトークを聞く学生

FMBの後、Reserve Bank(マラウイの中央銀行)のICT部門女性マネージャーのトークが始まりました。彼女からは中央銀行で働くまでのキャリア、マラウイのトップ組織で活躍するために必要なスキルの説明があり、私自身としても非常に参考になる内容でした。特に、このアフリカ、その中でもマラウイという国で「Don't be lazy. Embrace hard work.」という説明が心に残っています。やはり世界中どこでも高いキャリアを維持している人はハードワーカーなのでしょうか。

開始時間は遅れたものの、最後は時刻通りにセミナーを終えることができました。セミナー終了後のアンケートで「社会で求められる知識・技術を理解したか」「学業に対する意欲は向上したか」「同様のセミナーにまた参加したいか」という問いに、ほぼ100パーセント「はい」「どちらかと言えば、はい」という回答を得ることができました。しかし、キャリアセミナーで重要なことは、セミナー後に生徒が実際に行動に移すか否かであると思います。そのため、今回のセミナーの最終的な評価結果は参加生徒の就職状況によって示されると考えています。そのためにも、今回生徒が気づいたこと、学んだことを活かせる環境作り(パソコンや教科書の充実)が各カレッジで必要になってくるのではないかと思います。私の残りの任期は残り1年ほどしかありませんが、今後も継続してキャリアセミナーを開催して新たな気づきを生徒たちに与え、かつ、学習環境の充実に力を注ぎたいと思います。

(平成24年度2次隊 ムズズテクニカルカレッジ配属 水越健介)