働くことの楽しさを伝えたい

2014年3月14日

氏名:須田修輔
職種:薬剤師
隊次:平成23年度4次隊
配属先:ムジンバ県南部病院薬局
出身地:埼玉県

ムジンバ南部県病院は、マラウイ北部に位置し、ベッド数300以上を有する。診療科目は内科、外科、産科、小児科、眼科、歯科、皮膚科等、幅広く医療サービスを提供している。私の直接の配属先である薬局は、ファーマシーテクニシャン(薬剤師に準ずる資格)2名、ホスピタルアテンダント(薬の知識は皆無)2名という体勢である。

現地からの要請内容は、業務の効率化であった。とはいえ、基本的には整理整頓を徹底してもらうことである。病院スタッフは公務員である。仕事に対するモチベーションは高いとは言い難い。彼らには整理整頓の必要性も感じられていない。何が問題なのか、全く意識がなく、ただ、目の前にある業務をこなしているという印象である。赴任当初、ボランティア薬剤師という立場というものが用意されていたわけでもなく、彼らからしてみれば、自分たちの仕事や雑用を代わりにやってくれる駒という感覚で、リスペクトされている空気はなかった。自分としては、薬剤師として日本でやってきた経験があり、「働くことの楽しさを彼らに伝えたい」というヴィジョンもあったが、実際は薬剤師でなくてもできるような仕事が多く、しかも、現地スタッフは、サボりながら、渋々働いている感じである。そして自分が働く分、彼らは休む。正直、自分のやっていることに疑問を感じることもあった。

しかし、資格や肩書きだけでは、どこの社会でも通用しない。やるべきことをきちんとやれる人間が最後的には必要とされる。彼らと同じ仕事をして、同じ苦労を経験しなければ、この薬局の業務における問題の本質も見えてこない。そんな気持ちもあり、初めの一年は、非効率的な彼らのやり方に従い、ほこりだらけの中で、スーツを汚しながら、汗だくになりながら、ほぼマンパワーとして朝から夕方まで薬局の業務を精一杯こなしてきた。そして、自分に見えてきたこの薬局の問題の本質は、「彼らにはモチベーションがあるのだが、それが業務を実際に遂行する際、十分に発揮されていない」ということではないかと思えてきた。それは、薬や医療材料の供給不安定さ、他のスタッフによる資材や薬の流用や他の部署の薬局業務に対するモチベーションの低さ等に原因があるようで、どんなに自分たちが頑張って在庫管理しても、勝手にドネーションで必要以上の薬が大量に送られてくることさえあった。とはいえ、多くの病人がいる現実も確かであり、また、保健省からは監査されるので、サボるわけにもいかず、彼らの気持ちは複雑であろう。

そんな中で、自分のできることは、彼らの折れかけたプロフェッショナリズム、モチベーションを上げるため精一杯働くこと、薬局スタッフとしてやるべきことをきちんとやるという姿勢を見せることであった。自分の存在が少しでも彼らの気持ちを前向きにさせられるよう、自分がマンパワーの核になるつもりで働いた。その姿勢は少なからず彼らの心に響いたようであり、ハードワーカーとして現地スタッフから認められ、薬局の中だけにとどまらず、病院内でも薬局のスタッフ同様の存在となり、他の部署からも、日本からきたお客さんではなく、同僚として信頼されるようになった。そして、こちらからの要望も受け入れやすい環境をつくった上で、新しい試みを始めた。それらは日本人からすれば、とても簡単なことであるが、業務を変えることは、長年慣れ親しんだ手順を変えることになり、彼らにとっても手間が増えるという感覚が強く、乗る気ではない。そんな空気の中で、新たに加えた業務を実践してもらうには、やはり、お客さんではなく、共に苦労している同僚にならなければならなかった。

実際に行ったことの一例として、患者への服薬の説明である。特に複雑、特殊な用法の薬は、絵や図にして患者に説明するよう取り組んだ。患者への薬の説明は、日本では当然のことではあるが、マラウイではほとんど口頭で用法を簡単に伝えるだけで、詳しい説明は皆無であった。教育をきちんと受けられず、理解力も十分でない患者も多いことから、説明は医療サービスを提供する上では必須と考えてのことであった。また、薬局スタッフが、患者への効果的な治療を実践するための一助となることで、「やりがいを持ってもらいたい」という狙いもあった。患者の反応は、私の感じる限り、好印象である。現地スタッフによる口頭の説明が理解できなかったお婆さんは、日本人ボランティアによる、図を使ったたどたどしい現地語の説明で、きちんと理解してくれた。この服薬説明が現地スタッフによりきちんと毎回されるようになるまでには、まだ時間を要する。しかし、彼らも業務効率化、患者への貢献を実感し、習慣化していくことで継続されていくことを期待している。

私が彼らと共に働ける時間は2年間だけである。私がいなくなった後、残るものは細かい業務効率化のアイディアであろう。しかし、私の気持ちとしては、汗をかき、必死に共に働いた時間の体験であって欲しい。それに意義があるかないかは、私が自分の姿勢で示したように、今度は彼ら薬局の同僚が他のスタッフのモチベーションをあげるコアになっていくかどうか、働くこと自体にやりがいを見出せるかどうかにかかっている。正直なところ、狙い通りにことが運ぶかどうか、自信はない。しかし、それが自分のやりたい活動である。JICAが我々に期待していること、青年海外協力隊における成果とは何かと定義することは難しい。もちろん配属先の要請に応えることがまずは、我々の目的である。しかし、そこに至ることが2年間という短い時間の中で実現することは極めて難しい。そんな中で、自分には何ができるのか、何をやるべきなのか、悩んで、考え尽くす過程は、自分自身を見つめ直す良い機会でもあった。成果とは何か、その結論は隊員それぞれ異なるであろう。そこに青年海外協力隊の無限の可能性があるのかもしれない。

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職後の一服

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以心伝心