ボランティアレポート「途上国の臨床における栄養介入の難しさ」

2016年5月24日

氏名:須賀 智絵
隊次:平成27年度1次隊
職種:栄養士
配属先:カロンガ県病院
出身地:神奈川県

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日本の臨床栄養管理について医療職向けにプレゼンテーションをしているところ

配属先であるカロンガ県病院で栄養士としてボランティアをしています。入院・外来患者への栄養アセスメント、患者や付き添い家族に対する栄養指導などが私の主な活動です。病院内外でスタッフや患者から声を掛けてもらえることが活動のモチベーションにつながっています。しかしながら実際には、途上国の臨床における厳しさに無力感を覚えることもしばしばあります。

病棟でのエピソードを交えて、難渋した症例を紹介します。ある日の午後、配属部署であるキッチンで指導教材を作成していた時、病棟から電話が入りました。クリニシャン(医師)からNGT(Nasogastric Tubeの略で, 鼻からチューブを入れて栄養をとること)に関する相談があり、病棟に来て患者さんを見てほしいとのことでした。病棟に駆けつけてみると、10代の患者さんで主疾患は重症のマラリア、半昏睡状態でした。数日前から口から食べることが困難になり、NGTを始めたいものの、そのために必要なミルクがないので何とか用意できないかといった相談を受けました。現在、病院のキッチンにはシマ(マラウイの主食で、とうもろこし粉をお湯で練ったもの)の粉と豆、塩しかありません(病院食は1日1回、シマと豆のシチューのみ)。そのため、付き添い家族に粉ミルクを購入してもらい、その分量を調整し、投与するといった指示に落ち着きました。日本の病院で勤務していた頃、経管栄養の相談を受けると、具体的にどの経腸栄養剤を選択すればよいか(栄養士は提案することはできますが、実際には医師の指示にもとづいて決定しています)、当該患者の必要栄養量の計算等を行っていました。先進国では既成の経腸栄養剤や輸液等は病院にあって当然で、どれを選択するかを決定すれば良かったのですが、途上国ではそれらの物資がないことが前提になることがしばしばあります。ゆえに、具体的にどのように対応すればよいのか、日々同僚とともに頭を抱え、悩みは尽きません。また医療資材だけでなく、食料自体を手に入れることができないために食事を摂れない患者もいます。そのため、病院食を提供する必要性が大いにあると私は感じています。

マラウイの保健省では地域での栄養改善やHIV/AIDS対策が優先され、入院・外来患者への栄養介入が遅れています。しかしこれは本来あって然るべきものです。院内での栄養介入に携わる人が足りていないため、患者、医師や看護師に対する入院・外来での栄養アセスメントや食事指導のニーズも大きいと現場で感じています。また、低栄養の患者だけでなく、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の患者も増えています。今後、マラウイの病院における栄養管理の必要性が大いに高まり、栄養士がますます活躍していくことになると信じて、日々の活動に取り組んでいます。

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NGT(経鼻胃管チューブ)で栄養を摂る患者例